2026/8/7
| 小森さだゆき | 参政党 / 高槻市議会議員
「指示した通りに部下が動いてくれない」「よかれと思ってやった行動が、組織の中で裏目に出てしまう」……経営者や組織のリーダーであれば、こうした壁に一度はぶつかったことがあるのではないでしょうか。これらはメンバーの能力不足や、相性の問題として片付けられがちですが、実は本質的な原因はそこにありません。
すべての原因は、人間の脳が自然と起こしてしまう「認識のバグ(錯覚)」にあります。今回は、人間が情報を入力してから行動し、評価に至るまでの脳のメカニズムを解き明かした「意識構造学」の視点から、組織の生産性を最大化するためのヒントを紐解いていきます。
意識構造学とは、人間の意識が働くプロセスを5つの階層(ブロック)に分解し、それぞれの段階でどのようなエラーが起きるのかを構造化した理論です。
私たちは目の前の事実を客観的に見ているつもりでも、実際には「自分に都合の良い主観」というフィルターを通して物事を認識してしまいます。この脳の性質を前提とし、フィルターによる歪みを徹底的に排除していくことで、誰が動いても迷いなく成果が出る状態を作ることができます。
意識構造学では、人間の意識は必ず上流から下流へと順番に流れていくと考えます。この5つのステップのどこかで認識がズレると、ドミノ倒しのようにすべてが崩れてしまいます。
すべての思考の出発点となるのが、組織内における上司と部下という階層や、それぞれの役割の差を正しく認識する段階です。ここで起きるバグは、「上司と自分は対等だ」「自分の意見の方が正しい」という勘違いです。自分の立ち位置を間違えている人間は、これ以降のすべてのステップが歪んでしまいます。
入ってきた指示や目の前の状況を、主観を挟まずに正しく把握する段階です。ここで起きるバグは、「なるべく早く提出して」という指示に対して、上司は「今日中」と思っているのに、部下は勝手に「今週中」と解釈してしまうようなズレです。言葉のニュアンスに甘え、自分に都合よく事実を書き換えてしまうことで発生します。
何が正しくて何が間違っているか、行動の判断基準を決める段階です。ここで起きるバグは、会社の明確な基準ではなく、個人の価値観やマイルールで善悪を判断してしまうことです。「お客様のためを思ってルールを破りました」といったスタンドプレーがこれに該当します。
目標達成に向けて、実際に努力や行動を起こす(エネルギーを消費する)段階です。前段階までの基準が曖昧であると、人間は無意識に「モチベーションが上がらないからできない」と言い訳を作り、この負荷から逃げようとしてしまいます。
行動によってもたらされた客観的なパフォーマンスを確認する段階です。ここで起きるバグは、「結果は出なかったけれど、遅くまで残業して頑張ったプロセスを見てほしい」という自己評価の歪みです。出力された事実のみを冷徹に突きつけられることで、人間は再び最初の「位置」を正しく認識し直すサイクルへ戻ります。
多くの組織では、ステップ4の「負荷(モチベーション)」を高めようと躍起になり、褒めたり励ましたりするアプローチを取りがちです。しかし、1から3の土台(位置・認識・正誤)がズレている状態では、いくら負荷をかけても、そのエネルギーはすべて間違った方向へ出力されてしまいます。
まず「位置」を明確にし、「認識」のズレをなくし、「正誤」のルールを徹底すること。この上流のブロックがカチッと固まれば、人間は言い訳をするスペースがなくなり、自然と正しい「負荷」をかけて「結果」に向かって動き出す仕組みになっています。
意識構造学は、人間の弱さを責めるものではありません。人間は誰しも錯覚を起こす生き物だからこそ、組織のメンバーを「迷わせないための構造」を作ろうという、きわめて合理的で機能的な優しさの理論です。
まずは社内のコミュニケーションにおいて、役割の認識がズレていないか、指示が曖昧になっていないかなど、上流のブロックから見直してみてはいかがでしょうか。
| 小森さだゆき | 参政党 / 高槻市議会議員
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