2026/1/16
| 小森さだゆき|参政党所属/高槻市議会議員
このシリーズでは、日本で賃金が伸びにくい構造を、労働分配の弱さや内部留保の積み上がり、交渉の優先順位の変化から整理してきました。そして、その上で避けて通れないのが、労働組合が本来の役割から離れ、組合員の生活よりも特定の政治・思想テーマを前面に出しやすくなった問題です。
私はここを、単なる好き嫌いの話ではなく、組合が現場の賃上げ交渉を強くできなくなる「仕組みの問題」として捉えています。賃金を上げる力を弱めるズレが生まれていれば、最終的に困るのは労働者本人だからです。
景気が悪い局面では、「賃上げ」より「雇用を守る」が優先されるのは自然な判断です。ただ問題は、それが長期化し、交渉の基本姿勢そのものが固定化しやすかったことです。
雇用維持が悪いのではありません。ただ、雇用維持が常に最優先になり続けると、企業側は「人件費を増やす」よりも「現状維持の雇用を守る」方向に合意を作りやすくなります。その結果として、利益が出ても賃金に反映されにくい空気ができてしまいます。
ここが一番の核心です。労働組合が、労働条件の改善や賃上げという生活課題よりも、特定の政治的テーマや価値観の訴えを優先して見えると、組合員はこう感じやすくなります。
ここで大事なのは、個々の政策テーマの是非そのものではありません。問題は、職場の賃上げ交渉という本丸が薄くなる構造が生まれることです。組合が社会運動のような顔を強めるほど、現場では「賃上げの交渉力」より「政治的な整合性」が優先されやすくなります。
組合が大きくなるほど、意思決定は複雑になります。そうすると、組合員の多様な声を束ねるはずが、いつの間にか「組織としての方針」を守ることが優先になりやすい。
さらに、政治との距離が近くなると、組合内での議論が「労働者の生活」ではなく「政治的な整合性」を軸に回りやすくなります。これは右か左かの話ではなく、組織の力学として起きやすい現象です。
だから私は、組合が再び労働者のために機能するためには、思想の中身を論じる前に、意思決定とお金の流れを組合員側に取り戻すことが必要だと考えています。
ここからが提案です。理想論ではなく、実務として動かせる形に落とします。
まず基本は透明性です。組合費が何に使われているのか、組合員が毎年理解できる形にする。特に政治活動に関わる支出は、会計上も説明上も分けることが必要です。
組合員の価値観は一枚岩ではありません。だから政治的提言をするなら、全員を自動的に代表する形ではなく、賛同者が参加する方式に寄せる。賛否が割れるテーマほど、この設計が重要です。
会議の議題、広報、声明、優先順位を「賃上げ」「働き方」「安全衛生」「教育訓練」へ戻す。政治や思想の話を完全にゼロにしろという話ではなく、本丸を薄めない順番にするということです。
幹部会合で決まってしまう構造だと、現場が置いていかれます。重要テーマは組合員投票、方針の改定は定期的な検証と再承認。組合員が主語に戻る仕組みが必要です。
結局、組合が機能しているかどうかは、組合員の生活に結果が出ているかです。交渉のプロセスも大事ですが、評価軸は「賃金」「手当」「働き方」「福利厚生」に置く。成果が出ないなら説明責任を求められる設計にすべきです。
私は、労働組合そのものを否定したいわけではありません。むしろ、賃金が上がりにくい日本でこそ、労働者が交渉力を持つための仕組みは必要です。
ただ現状は、組合が労働者の生活よりも、特定の思想・政治テーマを優先して見える場面が増え、結果として現場の信頼と交渉力が落ちているように見えます。だからこそ、透明性と意思決定の改革で、組合を「労働者の道具」に戻す。その方が、労働者にとっても、企業にとっても、社会にとっても健全です。
このシリーズはここで一区切りですが、労働組合のあり方についてはもっと考えていきたいと思います
| 小森さだゆき|参政党所属/高槻市議会議員
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