2026/4/28
埼玉県立高校の男女別学をめぐる議論が、改めて注目されています。

この問題は、単に「別学がよいのか」「共学がよいのか」という二択で片づけられるものではありません。
そこには、現在その学校で学んでいる生徒の思いがあります。
これから受験を迎える中学生の進路選択があります。
子どもの将来を考える保護者の不安があります。
母校に誇りを持つ卒業生の思いがあります。
そして、長年にわたり地域の教育資源として学校を支えてきた歴史があります。
一方で、男女共同参画社会の実現という視点から、県立高校の共学化を求める声があることも事実です。

性別によって学びの機会や将来の選択肢が狭められることがあってはならない。多様な価値観の中で、男女が互いに理解し合い、協力しながら学ぶ環境を整えるべきだ。
この考え方自体は、私も大切な視点であると受け止めています。しかし、その一方で、別学という教育環境だからこそ、自分らしく学べる生徒がいることも忘れてはならないと考えます。
男子校、女子校には、それぞれの学校が長い年月をかけて築いてきた校風、教育文化、進路指導、生徒同士の関係性があります。
別学であることにより、落ち着いて学べる、伸び伸びと挑戦できる、自分の力を発揮しやすいと感じる生徒もいます。

つまり、この問題は、共学か別学かという制度の話であると同時に、生徒一人ひとりにとって、どのような学びの場が必要なのかという教育の本質に関わる問題です。
埼玉県男女共同参画苦情処理委員は、令和5年8月30日、埼玉県教育委員会に対し、県立高校における男女共学化が早期に実現されるべきであるとの趣旨の勧告を行いました。ただし、この勧告は、男女別学の存在そのものが直ちに女子差別撤廃条約違反であると断定したものではありません。
この点は、非常に重要です。
勧告が出されたから、直ちにすべての別学校を廃止しなければならないという単純な話ではありません。むしろ、勧告を踏まえたうえで、教育の現場、当事者の声、地域社会の実情を丁寧に確認しながら、慎重に議論を進めることが求められているのだと考えます。
県教育委員会は、その後、中学生、高校生及びその保護者を対象としたアンケートを実施しました。その結果、共学化した方がよいと回答した割合は、中学生で18.7%、高校生で7.8%とされています。一方で、共学化しない方がよいと回答した割合は、高校生で57.2%とされています。
この数字をどう見るか。
もちろん、アンケート結果だけで結論を出すべきではありません。しかし、少なくとも、現在の高校生の多くが、共学化を積極的に望んでいるとは言い切れない状況が見えてきます。ここで大切なのは、行政側がどのような理念を掲げるかだけではありません。
実際に通っている生徒たちが、どのように感じているのか。
これから進学先を選ぼうとしている中学生が、何を大切にしているのか。
保護者が、子どもの学びの環境に何を求めているのか。
こうした声を、方針決定の中心に置く必要があります。
一方、県教育委員会は、令和6年8月22日に提出した措置報告書において、男女共同参画社会の中で、高校の3年間を男女が互いに協力して学校生活を送ることには意義があり、県教育委員会は主体的に共学化を推進していくこととする旨を示しています。
また、報道によれば、石川薫教育長も、県立高校の共学化について「主体的に推進したい」と述べ、引き続き取り組んでいく考えを示したとされています。
この発言を受け、県教育委員会として、すでに共学化の方向性を前提にしているのではないか、あるいは、別学廃止に向かっているのではないかと受け止める方もいると思います。私自身、この点には慎重な確認が必要であると考えています。
教育委員会が、将来の教育環境を考えること自体は当然必要です。男女共同参画の視点から、現在の制度を検証することも否定されるものではありません。
しかし、もし結論が先にあり、その結論に向けて意見聴取や説明が行われるのであれば、それは本来あるべき教育行政の姿とは言えません。
当事者の声を聞くとは、単にアンケートを実施することではありません。
聞いた声をどう分析したのか。
反対意見や慎重意見をどう受け止めたのか。
生徒や保護者の不安にどう向き合うのか。
学校ごとの歴史や特色をどう評価するのか。
最終的な方針に、どのように反映させるのか。
そこまで示されて初めて、丁寧な議論と言えるのではないでしょうか。私は、共学化を求める方々の問題意識も理解できます。
時代の変化に合わせて、学校の在り方を見直すことは必要です。性別による固定的な役割意識をなくし、多様な生き方を尊重する教育環境を整えることも重要です。
一方で、別学を大切に考える方々の声にも、十分に耳を傾けるべきです。
別学は、単なる古い制度ではありません。生徒によっては、自分の個性を発揮しやすい学びの場であり、進路実現に向けて集中できる環境でもあります。
また、長い歴史の中で培われた校風や卒業生のつながりも、地域にとって大切な財産です。この問題で避けなければならないのは、どちらか一方を時代遅れ、あるいは正しいと決めつけることです。本来、教育に必要なのは、多様な選択肢だと考えます。
共学で学びたい生徒がいる。
別学で学びたい生徒もいる。
それぞれの環境で力を伸ばせる生徒がいる。

そうであるならば、行政がまず考えるべきことは、制度を一律にそろえることではなく、生徒にとってよりよい選択肢をどう確保するかではないでしょうか。
この視点は、伊奈町にとっても無関係ではありません。
伊奈町の子どもたちも、将来、県立高校を進学先として選択します。埼玉県立高校の在り方は、県全体の問題であると同時に、伊奈町の子どもたちの進路選択にも関わる身近な問題です。だからこそ、私はひとりの地方議員として、この議論を見過ごすことはできません。
すでに県内では、上尾市議会、富士見市議会、吉川市議会などにおいて、男女別学の埼玉県立高校に関し、生徒の意見を尊重した方針決定を求める意見書が提出されています。これらの意見書は、共学化そのものを一方的に否定するものではありません。
むしろ、当事者である生徒や、これから進学を考える中学生、保護者の声を十分に尊重し、拙速な方針決定を避けるべきだという趣旨です。私は、この考え方に強く共感しています。
学校の主役は、行政ではありません。
制度でもありません。
大人の理念でもありません。
学校の主役は、そこで学ぶ生徒たちです。
もちろん、教育行政には、将来を見据えた制度設計が求められます。しかし、その制度設計は、生徒の声を置き去りにして進められるべきではありません。
共学化を進めるにしても、別学を維持するにしても、必要なのは納得できる説明と丁寧な合意形成です。
なぜ今、共学化が必要なのか。
どの学校を、どのような基準で判断するのか。
在校生への影響をどう考えるのか。
受験生への周知期間をどう確保するのか。
別学を希望する生徒の選択肢をどう守るのか。
反対や慎重な意見をどのように扱うのか。
これらを曖昧にしたまま進めることは、教育行政への信頼を損なうことにもつながりかねません。
私は、埼玉県及び埼玉県教育委員会に対し、県立高校の男女別学をめぐる方針決定にあたっては、在校生、受験を控える中学生、保護者、卒業生、地域社会の声を十分に聴き、その内容を丁寧に公表し、方針決定に反映することを求める方向性の考えを示すことを検討していきたいと考えています。
この問題は、賛成か反対かだけで語るには、あまりにも大切な問題です。
高校別学は、誰のための議論なのか。
その答えは、常に生徒たちの側に置かれるべきです。
子どもたちが、自分に合った学びの場を選べること。
保護者が、安心して進路選択を支えられること。
学校が、長年築いてきた特色を正当に評価されること。
そして、行政が、県民に対して十分な説明責任を果たすこと。
この視点を大切にしながら、今後も調査、研究を重ね、必要な対応を進めてまいります。
参考資料
〇上尾市議会
男女別学の埼玉県立高校において生徒の意見を尊重した方針決定を求める意見書
https://www.city.ageo.lg.jp/site/shigikai/398150.html
〇富士見市議会
男女別学の埼玉県立高校において生徒の意見を尊重した方針決定を求める意見書
https://www.city.fujimi.saitama.jp/shigikai/shingi/ichiran/gikai2025gian.files/2025gi20.pdf
〇吉川市議会
意見書関係資料
https://www.city.yoshikawa.saitama.jp/index.cfm/34,262,c,html/262/20260323-103850.pdf
〇埼玉県
埼玉県男女共同参画苦情処理委員による勧告関係資料
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/240982/news2024050904.pdf
〇埼玉県教育委員会関係資料
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/274384/071016_h1-2.pdf
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