2026/7/21
令和8年7月16日、下関市は「密集市街地環境整備事業に係るアスベスト含有分析調査業務」の条件付き一般競争入札を公告しました。
入札の仕様書を確認すると、調査対象はかなり具体的でした。山手町・関西本町・丸山町・竹崎町にまたがる5棟、計84検体の試料採取・分析が予定されています。そして全物件に共通して記されていた一文が目に留まりました。
「建築物の老朽化が著しいため、安全管理に十分留意し、2名以上で作業を行うこと」
つまり市も認識しています。これらの建物は、すでに著しく劣化した状態にある、と。
石綿(アスベスト)は、1970〜80年代の建設ラッシュ期に断熱材・防火材として広く使われた素材です。2006年に原則禁止となりましたが、問題はここからです。
アスベストが危険な理由は、その繊維が非常に細かく、空気中に飛散すると肺の奥深くまで吸い込まれてしまう点にあります。吸い込まれた繊維は体外に排出されず、長年かけて肺や胸膜を傷つけ続けます。引き起こされる主な疾患は、肺がん・中皮腫・石綿肺の三つです。特に中皮腫は、ほぼアスベスト曝露が原因とされる悪性腫瘍で、治療が非常に困難です。
もう一つ見落とせないのが潜伏期間の長さです。吸い込んでから発症まで20〜40年かかることも珍しくありません。「今は何ともない」ことが、安全の証明にはならないのです。だからこそ、飛散を防ぐ事前調査が決定的に重要になります。
国土交通省の試算では、アスベスト建材が使用された建物は全国に約280万棟にのぼり、解体工事が集中する「ピーク」は2028年度ごろと予測されています。さらに、2024年度の環境省調査では、能登半島地震の被災地における石綿除去工事のうち4割超で外部への漏えいが確認されています(アジアプレス・ネットワーク調べ)。
災害時の混乱下では、通常以上に飛散リスクが高まることを示すデータです。
密集市街地でこれが起きれば、周辺住民への影響は避けられません。
今回調査される山手町・関西本町・丸山町・竹崎町は、下関の旧市街地を構成するエリアです。大丸下関店の閉店に象徴されるように、この地域では長年にわたり人口減少・廃業・空き家化が進んでいます。
空き家や老朽住宅の増加は、経済的な問題にとどまりません。管理されない建物は、アスベスト含有建材が劣化・露出するリスクを高めます。解体工事が始まる前から、すでに石綿が周囲に飛散している可能性も否定できません。
仕様書が「老朽化が著しい」と記した建物が、住宅が密集するエリアに存在する——これは、隣の家に住む方々にとっても無関係ではない話です。
今回の入札は「アスベストが含まれているかどうかを調べる」フェーズです。調査結果によって今後の方針が決まります——いわば密集市街地整備に向けた第一歩です。
だからこそ、優先順位・財源・情報公開の三点を問いたいと思います。
まず優先順位について。今回の調査は5棟84検体ですが、下関市内の密集市街地にある老朽住宅はこれだけではありません。なぜこの5棟が選ばれたのか、整備計画全体における位置づけを市は明示すべきです。
次に財源。調査の結果を受けて除去・改修が必要となった場合、その費用を誰がどう負担するのか。市の補助制度(危険家屋解体補助)の枠は限られており、密集地帯の本格整備には国の補助制度を積極活用した財政戦略が必要です。
そして最も大切なのが情報公開です。アスベストはその性質上、「知らないまま曝露していた」ことが後から判明する恐ろしさがあります。調査結果・対象エリア・今後のスケジュールを、わかりやすい形で地域住民に開示することを強く求めていく必要がありますね。

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シライシ ソウ/51歳/男
ホーム>政党・政治家>白石 そう (シライシ ソウ)>下関市のアスベスト調査——密集市街地の住環境リスクを問う