2026/7/19
令和8年度の下関市職員採用試験(一次試験:9月20日)に、注目すべき新しい区分が加わりました。その名も「アルムナイ採用」。
「アルムナイ(alumni)」とは英語で「卒業生・同窓生」を意味する言葉で、企業の人事用語としては元従業員を指します。つまりアルムナイ採用とは、かつて下関市で働いていた職員を再び迎え入れる「出戻り採用」制度のことです。大手民間企業では2010年代後半から広がり始めていましたが、今回それが下関市の公務員採用にも導入されました。
対象は、育児や介護といった自己都合で退職した元職員。希望があれば、また市役所の扉を叩ける制度です。
背景にあるのは、深刻な職員不足と離職の増加です。全国的に見ても、30歳未満の地方公務員の自己都合退職者数は2013年度から2022年度の10年間で約2.7倍に増加しています。下関市も例外ではありません。人口が減り続けるなかでも行政サービスの種類は減らず、職員一人ひとりの業務負担は増えています。
特に、育児や介護を理由に辞めざるを得なかった職員は少なくありません。「育休は取れても、復帰後の環境が変わらない」「保育所の送迎と残業が両立できない」——そういった声は、私の周囲でも聞こえてきます。
私自身、行政書士として活動する知人に、かつて市役所を離れた方が何人かいます。彼らは行政の知識と経験を持ちながら、今は市と向き合う「民間の専門家」として地域で活躍しています。
一度外に出た人材が戻ってくることには、単なる人員補充以上の意味があります。民間や専門職として積んだ経験を持ち帰ることで、行政の内側に「現場感覚」と「外の視点」が入ってくるからです。
市役所を知り、かつ民間を知る職員は、市民の側に立った行政サービスの改善に力を発揮できるはずです。
その意味で、アルムナイ採用は単なる人手不足対策を超えた、下関市の組織刷新の糸口になり得ます。
一方で、忘れてはならない視点があります。
出戻りを歓迎するのはいい。しかし「なぜ辞めざるを得なかったか」が変わらなければ、今度戻ってきた職員もまた同じ理由で辞めることになります。出口に網を張るだけでは、根本の解決にはなりません。
「辞めたい職場」を「辞めなくて済む職場」に変える取り組みが、この制度と並行して進んでいるのか。 議会の場でしっかり問いたいと思っています。
アルムナイ採用の新設は、下関市が人材を「使い捨てにしない」方向へ舵を切った一歩として評価できます。同時に、育児・介護との両立支援、業務量の適正化、職場環境の改善——これらが伴ってはじめて、制度が本当の意味で機能すると考えます。
採用試験(一次試験9月20日)の詳細は下関市職員採用サイトでご確認ください。ご意見・ご感想はお気軽にどうぞ。
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シライシ ソウ/51歳/男
ホーム>政党・政治家>白石 そう (シライシ ソウ)>下関市職員採用に「アルムナイ採用」新設——一度辞めた職員を呼び戻す新制度の意義と課題