2024/8/15
こんにちは。兵庫県川西市議会議員の長田たくや(ながたく)です。
「コレステロール大戦争」の続きです。今回は第2部「覆すもの vs 護るもの」です。
①卵は1日1個制限、爆誕
②定説を覆すものvs守るもの(ここ)
■ 殴り込みガイドラインの発表
2010年9月、日本脂質栄養学会が「長寿のためのコレステロール ガイドライン」を発表しました。
序文にある通り、「総死亡率を見ると、コレステロールが高いよりも低い方が死亡率が高い」という従来の常識を覆す内容でした。

■ 光の速さで反撃
日本動脈硬化学会は「長寿のためのコレステロール ガイドライン2010年版」に対する声明を翌月に公表しました(早っ!)。
声明の要点は次の3点です。
参照:日本動脈硬化学会の声明文
この断言は後々苦しい立場に追い込まれます。なお、日本医師会や医療系メディア「m3」も日本動脈硬化学会の声明を支持しました。そりゃ…背景にはスタチン系の製薬会社がありますからねぇ。
■ さらなる応酬
さらにその翌月、日本脂質栄養学会は再度声明を発表します。主張の要点は次の通りです。
参照:日本脂質栄養学会の声明文
これは痛い!寄付金の件については動脈硬化学会も華麗にスルーを決め込んでいます。
後にアメリカのガイドラインを紹介しますが、どちらの意見に近しいものとなっているでしょうか。
■ the lower, the better
以前では「コレステロール値は低ければ低いほどよい」との考えが主流でした。スタチン(薬)でLDLコレステロールを大きく下げることこそ大正義!
心筋梗塞や心不全予防につながると信じられ、現在もそう主張する医師が主流です。
参照:日本人の一次予防患者でも積極的LDL-C低下療法の優位性を実証
しかし、日本で行われたJ-LIT試験(1992〜99年、約5万人対象)では、意外な結果が出ました。
■ J-LIT試験
1992~99年、日本全国約5万例の高コレステロール血症患者を対象に、一般診療の場で6年間調査しました。
下図のように、総コレステロールが低すぎると…死亡率が上昇します。
LDLコレステロール値だけでみた場合、男性で180mg/dL以上だと虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)が増加していますが、女性においてはほぼ変化がないことがわかります。➡だから女性のコレステロールを下げる必要性が小さい。
この結果に対して護りたい人々は、「バイアスがかかっている」、「がん患者が紛れていた」などと主張し、この解釈は間違っていると大方の見解がそんな感じです。
相対危険度という尺度を用いて以下のような図を試験の結果として用いています。同じ試験でもずいぶんと結果が違って見えますね。

このように、素直なデータvs色々計算したデータという印象を受けました。
J-LIT試験にしろ、NIPPON DATA80にしろ、素直な総死亡率のデータはほぼ引用されず、こちらの相対危険度というデータばかりが用いられています。
■ 一方、海外では…
韓国での大規模調査(2001~04年、1280万人対象、2013年まで追跡)でも、J-LIT試験と同じく「総コレステロールが低いほど死亡率が高い」という曲線が確認されました。
男女・年齢を問わずほぼ同じ傾向で、こちらは素直に結論を認めています。
参照:Total cholesterol and all-cause mortality by sex and age: a prospective cohort study among 12.8 million adults

■ アメリカの大転換
米国では2003年ガイドラインでコレステロールの数値目標を掲げ、食事制限(卵は1日1個など)も推奨されていました(日本も模倣)。
しかし治療や食事制限をしても最大の目標である狭心症や心筋梗塞などは減らせなかったのです(再発は別)。
2013年の新ガイドラインでは、明確な数値目標が撤廃され、食事中コレステロール制限も消え※、スタチン(薬)の長期使用も推奨されなくなりました。
参照:2013ACC/AHAコレステロール治療ガイドライン
※2015年、厚労省はこの箇所だけ踏襲(コレステロール大戦争①より)
■ 護るものたちの反応
日本動脈硬化学会は2014年に反論声明を出しました。
「日本での実臨床では、治療しやすいからコレステロールの管理目標値を残します」
➡話しちゃうやん。1次予防効果がある、とかのエビデンスはどうでもよくなった?

■ アメリカより新たなガイドライン
2018年、米国心臓協会の脂質異常症の治療ガイドラインが発表されます。
スタチン治療の開始基準は以下の場合に限定。病気がなければ基本はコレステロールを下げなくてよいという方針です。

■ 日本のガイドライン
2022年に発表された日本の動脈硬化学会のガイドラインでは、なんとLDL140mg/dl以上でも薬物治療の対象に…。
一応即座に薬物治療の対象ではありませんが、下図に照らせば即病気です。そして問題は「リスク評価」です。

【リスク評価】
今回より「久山町スコア」でリスク計算をします。下図をみてください。
男性というだけでスコアが一気に跳ね上がります。そして年齢も考慮されますが、70~79歳ともなればスコアがゼロの健康体でも「中リスク」。
すなわちLDLコレステロール140mg/dlに下げられるルートになるのです。
こんなん病気だらけになるやん…

■ 高齢者には不要(アメリカ)
米国予防医療専門委員会では、76歳以上はコレステロール降下薬(スタチン)は効果的ではないとしています。
日本ではそのような記載が一切ありません。だから80歳を超えても、女性でも男性でもガンガン服用させるのです。

■ スタチンとがんの関係
スタチン長期服用と発がんリスクの関連を調べた試験では、治療が難しい膵臓がんが増加する傾向が見られました。
一方で肝がんは減少とされ、そこから「安全」「むしろ良い」との解釈もされています。しかし結論は一定していません。

いかがでしたでしょうか。
日本の基準だと「病気」は増え続け、ガイドラインに従うという正当性をもって、海外では不要とされた薬の投与も行われるのです。
「護るもの」たちは、一体何を護りたいのでしょうか。
日本の医療…これで本当に良いのでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
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【参考資料・文献】
https://www.jacd.info/library/jjcdp/review/53-3_02_sata.pdf
https://www.pamedicine.jp/blog/2019/03/post-5-670544.html
https://blog.goo.ne.jp/hatakenotayori-goo/e/fe06f17470d4ba30ab8385bb1545d046
https://resort.boy.jp/wordpress/funasan/cholesterol-conflict-of-interest/4/ →一般的にすごくまとまっている(これだけでもいいかも)
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/di/digital/201506/542414.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jln/20/1/20_1_47/_pdf
https://www.mag2.com/p/news/578229
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jln/21/1/21_1_77/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jln/20/1/20_1_47/_pdf
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