2024/7/7
こんにちは。兵庫県川西市議会議員の長田たくや(ながたく)です。
みなさんの周りにも血圧の薬を飲んでいる人は多いですよね。そして、一度飲み始めるとやめられないという方がほとんどだと思います。
年齢とともに血圧は自然に上昇するのだから、薬をやめれば血圧が再び上がるのは「自然」なのです。
今日はそんな血圧についてのお話です。

■ 人間ドック学会の善意なる発信
2014年4月、人間ドック学会が150万人のデータを分析した結果、「健康とされる血圧の基準値を147mmHg」としました。
すると、とある学会などが光の速さで反発し、以下のような画像を用いてその声明をかき消しました。

ご丁寧に×印までつけ、いかにも「危ないぞ!」という印象を与えるグラフ付きです。そして絵を見ると、おじいさん・おばあさんが対象のように見えます。
しかし、グラフをよく見てくださいね。対象年齢層:中壮年40~64歳と書かれているのです…。

■ 年齢によって高血圧リスクは違う
正直、この高血圧学会の広告はひどい。一見すると、70歳や80歳の高齢者でもグラフのような心血管病の発症リスクがあるように感じませんか。
では実際の引用元データを見てみましょう。

Ⅰ度高血圧(140/90)、Ⅱ度高血圧(160/100)について、65歳以上を見ると、ほとんどリスクは変わりません。
特に75歳以上では、血圧が160以上でもリスクは小さいのです。
■ 下げられる基準値
1978年、世界保健機関(WHO)は「160/95mmHg以上は高血圧」と定義し、日本もそれに従っていました。
しかし2000年、日本高血圧学会は「140/90mmHg以上」と基準を厳しくしました。その結果、「高血圧症」とされる人は1600万人から3700万人へと激増し、降圧剤の服用者も急増したのです。

■ 医薬品発売との関係
1993年に1日1回型の降圧剤「アムロジン®」、1998年にARBと呼ばれる「ニューロタン®」「ブロプレス®」、2000年には「ディオバン®」が販売されました。
アムロジンはカルシウム拮抗薬というカテゴリで、1974年発売の「ヘルベッサー®」が薬価の基準となっており、そこまで高額な薬ではありませんでした。
一方、新規メカニズムのARBは当初かなり高額な薬価がつきました。それを狙ったように2000年には高血圧のガイドラインが改訂され、高血圧症とされる人数が大幅に増えたのです。
厚労省データを見てわかるように、2000年を機に高いARBの販売が急増し、カルシウム拮抗薬を抜いて主流となりました。

■ ディオバン事件
薬価(薬1単位の価格)は年々下がっていますが(左図)、市場規模は増加しています(右図)。
つまり1錠の値段が下がっても、それ以上に多くの人が服用しているということです。

なお図中の「JIKEI Heart Study」は俗に言う「ディオバン事件」の元論文です。
ディオバンは血圧を下げるだけでなく、心筋梗塞などのリスクも大幅に減らすと報告され、売上が急増しました。しかし2013年、そのデータが捏造であったことが判明しました。
参照:ディオバン事件 -研究者と企業の倫理
■ ガラパゴスジャパン
お金のニオイがプンプンしますね。実はアメリカも同じような問題を抱えていました。
2014年にアメリカ政府合同委員会が製薬企業との関係を断ち切り、「JNC8(高血圧ガイドライン)」を発表しました。そこでは60歳以上で150mmHgから薬物治療を開始、140mmHg以下に下げるのは有効でないとされました。
イギリスのNICEガイドラインでも、80歳以上では160mmHg以上で降圧剤を使用としています。
昔ながらの「年齢+90」に近い基準です。しかし日本はWHO基準に従ったままです。携帯や家電だけでなく、医療でも「ガラパゴス化」しているのです。
■ 本当に効果があるのか
血圧を下げる目的は、脳出血や心筋梗塞を防ぐためと言われますが、ご覧ください。心不全は減るどころか増えていますね。心筋梗塞がやや減っているのは、おそらくですが、抗血栓療法の進化によるものと思われます。これだけお金かけて血圧を下げている割にはおかしいですね。
血圧を下げる目的は脳出血や心筋梗塞の予防ですが、心不全はむしろ増えています。心筋梗塞が減っているのは抗血栓療法の進歩の影響と考えられます。
脳卒中についても、昔は栄養不足で血管が弱く脳出血が多かったのですが、現在は減少。一方で脳梗塞は増加しています。

「いやいや高血圧を放置しているからですよ」と言われそうですが、実際のデータをご覧ください。
すべての年代において平均血圧は年々下がっているのに、現実では心不全が増えているのです。

■ 脳卒中の推移
脳卒中についても、昔は栄養不足で血管が弱く脳出血が多かったのですが、現在は栄養状態も良くなり減少しています。
脳出血の減少は、降圧剤による成果とも受け取れるかもしれませんが、では一方で脳梗塞はなぜ増加しているのでしょうか。

■ 降圧剤の添付文書
降圧剤の添付文書には以下の点が明記されています。
しかし実際の医療現場では、ガイドラインも相まって過度に下げられるケースも多いのです。私見ですが、高齢者施設で夏場に脳梗塞で入院する方はほぼ全員降圧剤を服用しています。添付文書に記載されている以上、一定の根拠はあるはずです。
■ JATOS試験
塩野義製薬のJATOS試験では、高齢の高血圧患者(65~85歳)4418例を、厳格管理群(<140)と緩和管理群(140~160)に分けて調査しました。結果、両群に脳卒中や心疾患の差はありませんでした。
特に75歳以上では厳格群の方が脳卒中が多く、逆に75歳未満では緩和群が多い結果でした。
人の体は理論通りにいかないのです。
■ 高血圧ガイドライン内の矛盾
日本のガイドラインでも「75歳未満で140/90以下にしても予後改善のエビデンスはない」と明記されています。にもかかわらず「したがって、130/80以下を目標とするが…」とあり、整合性の取れない表現になっています。医療経済的な視点も乏しすぎます…

血圧を気にする方は多いです。テレビで「サイレントキラー」と恐怖を煽られましたし当然でしょう。確かに腎臓病などの既往歴や基礎疾患がある場合は別ですが、そうでなければ高齢者は過敏になる必要はありません。減塩についても再考の余地があります。
海外では既に見直しが進んでいる一方、日本だけ置いてけぼりなのです…
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
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