2026/8/22
兵庫県 川西市議会議員(薬剤師)の #長田たくや です。
抗アレルギー薬の「ビラノア®(ビラスチン)」。花粉症によく使われるお薬ですね。
2016年、長らく新薬が出なかったこの分野の薬に、ビラノア®とデザレックス®という新薬が同時期に登場。
どちらも1日1回服用という、簡便さと効果の高さから、よく処方されていました。

これがとうとうスイッチOTC(処方箋なしでドラッグストアで購入できる薬)になるというのです。
「ビラノアN」。
ビラスチンのジェネリックが2026年6月に発売されましたし、そのタイミングで、先発ブランドはOTCで稼ぐという戦略でしょうか。
参照:アレルギー薬ビラノア市販へ 医療用は「OTC類似薬」対象の公算

おそらく、こちらも「OTC類似薬」に加えられそうです。
となると、デザレックスの処方が増えそうですね…。
■ ビラスチン
ビラノア®錠の成分名は、ビラスチン。
ビラスチン+ノンアレルギー → ビラノア らしいですね。
商品名の「ビラノアN」のNが気になりますが、OTCの効能がアレルギー性鼻炎なので、”Nasal”なのかなぁ。

食事の影響を受けやすく、食後に服用すると、空腹時と比べて最高血中濃度が約60%も低下します。
そのため、用法は「1日1回、空腹時」となっています。これがOTCとなった時に、販売時に説明を要する部分ですね。
臨床試験では、アレグラ®(フェキソフェナジン)との比較も行われましたが、ビラノアとの間に差はありませんでした。
臨床効果はおおむね近いと思われますが、個人的にはビラノアの方が良く効きます。
医療用のビラノア錠20mgは、現在の薬価で1錠43.90円です。
OTC版の価格はまだ発表されていませんが、おそらく「ぇええ……」な価格になるでしょう。
■ 第2世代抗ヒスタミン薬
アレルギーに関わる体内の成分が、「ヒスタミン」です。
腫れや痒み、いわゆる炎症やアレルギーに関与しています。
抗アレルギー薬、花粉症の薬やかゆみ止めは、このヒスタミンをブロックするというのが主な薬理作用です。
しかし、従来の古い抗ヒスタミン薬では、眠気や口の渇きなどの副作用が問題になっていました。
そこで、脳への移行や抗コリン作用などを抑え、眠気や口渇を軽減する方向で開発されたのが、第2世代抗ヒスタミン薬です。
アレグラ®やビラノア®も、同じく第2世代に含まれます。

日本では、クラリチン®の後にザイザル®とディレグラ®が登場しています。ただし、ザイザルはセチリジンの改良版、ディレグラはフェキソフェナジンを含んだ配合剤です。
そのため、まったく新しい有効成分の抗ヒスタミン薬という意味では、ビラノアとデザレックスが登場するまで、10年以上の空白がありました。
■ ベンズイミダゾール骨格
ビラスチンの構造上の特徴は、ベンズイミダゾール骨格とピペリジン環を持っていることです。

最古参の医薬品レミカット®(エメダスチン)にも同じベンズイミダゾール骨格がありました(飲み薬は販売終了)。

以降は、その構造が使われていません。
ベンズイミダゾール系の抗ヒスタミン薬としては、ほかにアステミゾールがあります。
1970年代に開発され、日本でも「ヒスマナール®」として販売されていました。
しかし、薬物相互作用などによって血中濃度が上昇すると、QT間隔を延長し、重篤な不整脈を起こす危険性が問題となりました。
1998~2000年ごろに日本を含む各国で市場から撤退しています。

この医薬品の改造版ともいえるのが、ミゾラスチンです。
欧州で1997年ごろ承認され、「Mizollen(ミゾレン)」として現在も使用されているようです。
ビラスチンとミゾラスチン、名称も非常に似ていますね。日本では販売されていません。

ミゾラスチンも第2世代抗ヒスタミン薬として使用されていますが、やはりQT延長などの副作用が認められたそうです。
ビラスチンは、カルボキシル基が追加され、心臓系への副作用は軽減はされたとされています。
インタビューフォームでも、1錠20㎎×5の100mgを服用してもOT延長がなかったことが確認されていました。
だからこそ、スイッチOTCでもOK!となったのかな。
■ 安全なイメージ
第2世代の抗ヒスタミン薬は、アレジオン®、アレグラ®、クラリチン®など、すでにスイッチOTCとなっているものが多く、比較的安全な薬というイメージがあります。
事実、そこまでの問題を感じたこともありませんが、歴史をたどれば、心臓系への影響は何かと課題となったということを知りました。
例えば、アレグラ(フェキソフェナジン)です。

フェキソフェナジンもビラスチンも、構造式の雰囲気が少し似ていますよね。
フェキソフェナジンは食後に服用しても良いのですが、空腹時の方がやや体に入りやすいです(ビラノアほどの差はないですが)。
このあたりの構造が、少しキャラクターが似てくるのでしょうか。
このフェキソフェナジンの先輩にあたる医薬品が存在していました(現在は販売中止)。
その名もテルジェナジン(トリルダン®)です。

テルフェナジンは、代謝が阻害されて未変化体の血中濃度が上昇すると、QT延長や心室性不整脈を起こすことが問題となり、販売中止になりました。
フェキソフェナジンは、テルフェナジンをあらかじめ代謝させた医薬品です。そのため心臓系への影響を回避したという経緯があります。
やはりカルボキシル基が影響しているのかなぁ。
ビラノアがスイッチOTCになった!という簡単な記事を書くつもりが、色々調べていたらこうなってしまった^^;
薬の構造をたどっていくと、その薬がなぜ現在の形になったのか、過去の薬で何が問題になったのかを知ることができます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な一日でありますように。
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