2026/9/10
越谷市立病院の経営不振は「患者が来ないから」と説明するだけでは不十分です。病院が公表した中期経営計画を読むと、医師は多くの外来患者を診ているのに、それが入院や手術を伴う診療へ十分につながっていない構造が見えてきます。
令和5年度の分析では、医師1人当たりの外来患者数は、黒字の同規模病院の142%でした。医師が暇なわけではありません。しかし、医師1人当たりの外来収益は比較対象の97%、入院収益は98%。外来単価は比較対象の83%、入院単価も87%でした。
つまり、外来患者を大勢診ることで、低い単価を仕事量で補っている状態です。
外来では、診療単価1500円未満の患者が全体の28%を占めます。病院は、処方箋のみの再診患者が多いことを要因の一つに挙げています。本来は地域の診療所で継続診療できる患者を大病院が抱えると、医師の時間と診察室は埋まります。その一方で、紹介患者、救急患者、入院が必要な患者へ振り向けられる余力は小さくなります。
令和6年度には入院単価が5万9714円まで改善しましたが、草加市立病院の6万9890円には届きません。外来単価も越谷1万5351円、草加1万9296円です。単価が高ければ医療の質も高いと単純には言えませんが、草加では全身麻酔手術1817件、救急搬送4462件、救急搬送からの入院1732件という、高密度な診療につながる流れができています。
越谷市立病院自身も、入院単価が低い理由として、HCUなどの特定入院料を十分に取れていなかったこと、専門医の退職が手術やがん・心血管診療に影響したこと、リハビリ職員が比較対象より少ないことを挙げています。HCUは令和6年度に設置されましたが、救急については、現在も「断りが多い」として改善対象になっています。
未収金の回収や材料費の削減も必要です。しかし、億単位の収支差を生んでいる中心は、外来患者を何人診たかではなく、救急から何人を入院させ、どのような手術や治療を行い、適切な時期に地域へ戻せたかです。
改善の方向は、外来を無理に増やすことではありません。安定した再診患者は地域の診療所へ逆紹介し、市立病院は紹介、救急、入院、手術へ人員と設備を集中する。忙しさを減らしながら収益を増やすという、一見逆向きの改革が必要です。
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>山田 信一 (ヤマダ シンイチ)>【越谷市立病院】 忙しいのに稼げない 越谷市立病院の構造問題