2026/8/21
行政事業を評価するとき、「この事業はいくらか」という総額だけでは、十分な判断ができません。同じ1億円の事業でも、市税などの一般財源で負担する割合、国・県の支出金、地方債、使用料や寄附などの特定財源の構成によって、市の現在と将来の負担は異なります。事業費の源流までたどることが、財政を正確に見る第一歩です。
越谷市の事務事業評価表には、常勤職員と会計年度任用職員の「人工」と人件費、事業費、両者を合計した総事業費が記載されています。事業費の財源も、国・県支出金、市債、その他の財源、一般財源に分けて示されています。予算書の金額だけでは見えにくい職員投入量と財源構成を、一枚の評価表で確認できる点は重要です。
たとえば、窓口や相談、審査を中心とする事業では、委託料や補助金が少なくても、多くの職員時間を使っている場合があります。予算書上の事業費だけを見れば小さな事業でも、人件費を加えると総コストが大きくなることがあります。反対に、機器導入や外部委託で一時的な支出が増えても、翌年度以降の職員負担や維持費が下がるなら、長期的には合理的な場合があります。
国や県の補助金がある事業も、「市の負担が少ないから得」とは限りません。補助対象になるために市の持ち出しが必要な場合があり、補助期間が終了した後も運営費や更新費が残ることがあります。補助金の財源も、もとをたどれば税金です。市にとって有利な制度を活用することは必要ですが、補助があることと、事業自体に必要性や効果があることは別に検証しなければなりません。
市債は、施設整備などの費用を将来世代と分担し、年度間の負担を平準化する手段です。一律に悪いものではありません。しかし、借りた年度の負担が軽く見えても、元利償還は将来の義務的経費になります。建設費だけでなく、維持管理、修繕、更新、廃止までを含む長期費用を示さなければ、事業の全体像は見えません。
一般財源は、市税や地方交付税など、使途が特定されていない財源です。ここから多額を充てる事業は、他の行政サービスに回せる財源との競合が大きくなります。一方、特定財源が多い事業でも、職員人件費や対象外経費が一般財源で賄われている場合があります。評価では、総事業費だけでなく、「市が自由に使える財源をいくら投入したか」を併記する必要があります。
さらに必要なのが単位当たりコストです。給付一件当たり、相談一件当たり、施設利用者一人当たり、道路一メートル当たりなど、事業に合った単位で費用を示せば、年度間や類似自治体との比較が可能になります。ただし、単価が低ければ必ず良いわけではありません。相談の質や安全性を落として件数だけを増やしても、目的を達成したことにはならないため、成果指標と組み合わせて読む必要があります。
越谷市の評価表は、人件費と財源内訳まで示している点で、改善の土台をすでに備えています。次の段階は、減価償却費なども含む公会計上のフルコストや、将来負担、単位当たりコストを事業に応じて補うことです。八王子市は、人件費などを含むフルコストを明らかにし、複式簿記・発生主義の財務情報を事務事業評価に活用しています。越谷市でも参考になる考え方です。
公表方法も重要です。数百事業の評価表が部局別PDFだけで掲載されていると、市民が特定の事業を探し、過去年度と比較するのは容易ではありません。事業名、担当課、総コスト、一般財源、国県支出金、市債、成果指標、評価を表形式やCSVで公開し、年度をまたいで検索できれば、説明責任は大きく高まります。
事業評価は、安い事業を残し、高い事業を切る作業ではありません。誰が負担し、どれだけの職員時間を使い、将来に何を残し、どの成果を得たのかを確認する作業です。総額から一歩進み、資金とコストの出どころまで見える評価にすることで、拡充すべき事業、方法を改める事業、役割を終えた事業を、より公平に判断できます。
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