2026/8/3
この度の令和8年熊本地震により、お亡くなりになられた方々に謹んで深甚なる哀悼の意を表しますとともに、被災されたすべての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。今なお不自由な避難生活を余儀なくされている方々の安全と、一刻も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。
熊本をはじめとする被災地では、避難生活の長期化に伴い、被災された方々の命と健康に直結する「生活習慣病(高血圧・糖尿病等)治療薬の中断」への懸念が高まっています。
慢性疾患の薬が数日間途絶えることで、脳卒中や心筋梗塞、糖尿病性ケトアシドーシスといった二次的な健康被害に繋がるリスクが指摘されています。
そうした中で注目されるのが「災害時処方箋」ですが、この仕組みがどのように機能し、現場でどのような課題に直面しているのかについて改めてお伝えしたいと思います。
「災害時処方箋」とは、大規模災害により災害救助法が適用された地域において、避難所や救護所、拠点病院などで医師(DMATやJMAT、地域の巡回医師等)が発行する特殊な処方箋です。
通常の処方箋と異なり、以下のような特例が認められています。
保険証や現金の所持が不要:住所・氏名・生年月日等の情報確認で対応。
窓口での自己負担金が無料:全額が公費負担(災害救助法)となる。
柔軟な調剤場所:開いている保険薬局に加え、避難所の調剤所やモバイルファーマシー(移動式薬局)でも受け取り可能。
また、発災直後など医師の処方箋発行すら難しい超急性期においては、厚生労働省の特例(薬機法第49条第1項の例外規定)に基づき、お薬手帳や問診による服用履歴の確認をもって、薬剤師の判断による「処方箋なしでの緊急調剤・授与」も補完的に認められています。
この「災害時処方箋」や特例運用は、被災者を守る極めて重要な仕組みですが、現場で円滑に機能するためにはいくつかのハードルが存在します。
「医師の巡回」におけるタイムラグ:数多くの避難所に医師が常駐することは不可能なため、処方箋の発行までに時間を要する場合がある。
現場の法的・心理的懸念:平常時の法規制(医師の診察原則や処方箋調剤の原則)を意識するあまり、現場の医療者や薬局が「後からの責任追及」を恐れて判断に迷ってしまうケースが生じやすい。
供給ルートの偏り:公的な配分ルートが拠点病院(点)に集中し、各避難所や支援団体(面)まで行き渡りにくくなる懸念。
制度としての枠組みが存在しても、それが現場の医療者、薬局、支援団体にまで滞りなく浸透し、活用されなければ意味をなしません。
【編集後記】
今回の災害においても、厚生労働省から発災2日後という早い段階で「災害時処方箋」や特例調剤に関する通達が発出されました。こうした迅速な行政対応に対し、深く敬意を表いたします。
制度としての枠組みが示された今、最も重要なのは、この特例運用が現場の末端まで浸透し、避難所で不安を抱える一人ひとりの患者様へ確実に薬が行き届くかどうかです。通達が出されたことで現場の躊躇や混乱が和らぎ、必要な処方薬がスムーズに行き渡ることを切に祈っております。
現時点では私自身は直接現場に赴くことはできませんが、だからこそ現地で奮闘する方々の「現場の声」にしっかりと耳を傾け、遠くからでも自分にできる最善の対応とサポートを愚直に続けていきたいと考えております。
また、医療提供の新たな選択肢として、熊本県からの要請を受け内閣府等により防衛省PFI船舶「はくおうⅡ」を活用した医療提供が熊本県八代港等で実施されることとなりました。本件は、令和3年に成立した法律(令和6年施行)に基づく初めての要請・出航となります。阪神・淡路大震災での着想から31年という歳月が過ぎましたが、今回の令和8年熊本地震においてその真価を発揮し、被災地の大きな力となることを心から祈っています。
そして将来的には、既存船の活用にとどまらず、法律にも明記されているような「災害時に主として医療の用に供するための専用医療船」の造船・保有が推進されることが必要であると考えます。私自身、超党派・災害時医療等船舶利活用推進議員連盟の事務局次長としての役割を果たし、今後の医療体制整備に全力で取り組んでまいります。
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