2024/10/2
東京都知事選を契機に選挙におけるポスターやポスター掲示板に関する是非や不当や品位を問う声が多く上がった。国政においても公選法の改正を前提とした協議が国会閉会中にも関わらず与野党で話し合われていた。東京都知事選の当事者でポスター論議を誘引した行為を行ったのはNHKから国民を守る党の立花孝志党首のである。形式的な目的としては多く都民に都政に関心を向けてもらうためのインシデントを意図的に提起したとしている。真意的な目的はポスター掲示板が如何に不要であるかということを知らしめるためのデモンストレーションを行うことだと明かしている。
今回、上記を踏まえて以下の通り参議院法制局に下記のように相談してみた。
選挙の際のポスター掲示板の設置や撤去には多くの労力を費やすし、ポスターを貼る候補者にも負担が大きくなっています。大政党の候補者と一人で活動する候補者では労務に関しても費用に関しても大きな格差が生じるのは明らかです。当然、ポスター掲示板の制作、設置、撤去には多額の税金を必要とします。選挙の規模によっては数十億円にも上ります。最近では公選法を改正してポスターの品位保持規定と候補者氏名記載を義務付ける規定を新設する方針が主要五党で合意した報道されています。ポスターの掲載内容に関して品位保持規定を設けたとしても紙のポスターであれば強行して勝手に貼ることもできてしまいます。そこで最近多くの声が聞かれるようになったデジタルサイネージを利用したポスター掲示板の導入を可能とするための法の改正点、要旨、課題などをご教示賜れましたら幸いです。
*ポスター掲示板のデジタル化
*選挙ポスターの事前審査
*ポスター掲示板の設置場所を原則として投票所周辺に絞る
こうすることで費用、周知、モラルに関して良い効果を得られると思料します。
法制局の回答は
1. デジタルサイネージとしてどのような機器を導入することを想定しているのか。
2. デジタルサイネージを利用した選挙運動用ポスターの表示について、具体的にどのような方法で行うこととするか。例えば、一度に表示する選挙運動用ポスターの数、表示する画面のサイズ、一定の時間で表示が切り替わることとするのか、そうした場合の表示が切り替わる時間、表示の順番、複数の選挙が同時に行われる場合の表示の方法等について検討する必要があるのではないか。
3. デジタルサイネージに各候補者の選挙運動用ポスターを一定の時間ごとに順番に表示することとする場合、選挙運動用ポスターの一覧性の確保についてどのように考えるか。候補者数が多い場合においては、各候補者の選挙運動用ポスターを一覧することが特に困難になると思われるが、この点についてどのように考えるか。
4. デジタルサイネージを利用した選挙運動用ポスターの表示に必要な手続としてどのような手続を設けるか(申請の期限、申請の方法等)。
5. 「選挙ポスターの事前審査」とは、選挙公報について行われている事前審査のようなものを想定しているのか。選挙公報については、法律上“原文のまま”掲載しなければならない(公職選挙法第169条第3項)とされ、選挙管理委員会の規程等に基づき掲載文の色、文字の大きさ、印刷等の形式的な面について選挙管理委員会が事前審査を行い、必要な場合には訂正を求めることができることとされている。掲載文の内容面については、判例上「内容自体が甚だしく公序良俗に反することが客観的に明白であり、これを公表することが条理上許されないものと解すべき特段の場合は格別、選挙管理委員会としては、候補者に対し任意の訂正を勧告することはともかくとして、自らこれを訂正すべき権限も義務も有しないものといわざるをえない」とされ、逐条解説書では「掲載文の内容が法令違反の疑いのある場合においては、候補者等に注意を促すことが適当であり、その上で、これに応じないときは原文のまま公報に掲載すべきである2」とされているところである。
6. 選挙運動用ポスターを一定の時間ごとに順番に表示するデジタルサイネージを投票所内に設置することとする場合、投票を記載する際には候補者のうち一の候補者の選挙運動用ポスターのみ見ることとなると思われることから、選挙人の投票行動に影響を与え、選挙の公正性を害するおそれがあり得ることについてどのように考えるか。
7. 選挙運動用ポスターを一定の時間ごとに順番に表示するデジタルサイネージを投票所内に設置することとする場合、複数の選挙が同時に行われる際に、選挙人が他の選挙の候補者の氏名を誤って記載することを招くおそれがあり得ることについてどのように考えるか。
というものであった。質問に対する答えというより、質問に答える為の質問が返ってきてしまった。1~4はデジタルサイネージのスペックや付帯機能に関わることであることから今回の質問に直接的には沿っていないのではないかと思い一旦置いておく。6.も質問に沿っていないような気がする。投票所周辺への設置に絞ることを想定しているのであって投票所内に設置することを想定した質問ではない。デジタルサイネージの大きさやスペックを限定して質問してはいない。立候補者が多い場合はポスター代わりの各人の広報の表示サイズが小さくなるし、立候補者が少ない場合は表示サイズが大きくなる。平等に画面を分割するだけのことである。よって、公平性を問うことはない。7.について複数の選挙が同時に行われる際にも現状のポスター掲示板がデジタルサイネージに置き換わるだけのことであり、掲示板の見え方が大きく変わることはないと想定している。よって、差し当たりサイネージの画面が時間ごとに切り替わることを想定せずに検討したい。
5.の事前審査に関しては事情がこれまでと少し違う。法制局への質問の最後にモラルという言葉を明記にしたのは事前審査を意識してもことである。東京都知事選でモラルに反するのではないかと世間からバッシングを受けたポスターの掲示が複数あったことから与野党で法規制を協議検討していることが報道されている。下記にその骨子案を示す。
公職選挙法改正案 骨子案
1 ポスター掲示場に掲示するポスターの記載に関する義務の新設
(1) ポスター掲示場に掲示する選挙運動用ポスターには、その表面に当該 ポスターを使用する公職の候補者の氏名を記載しなければならないこと。
(2) (1)の公職の候補者の氏名を記載するに当たっては、選挙人に見やすいように表示しなければならないこと。
(3) 公職の候補者は、その責任を自覚し、ポスター掲示場に掲示する個人演説会告知用ポスター及び選挙運動用ポスターには、他人若しくは他の政党その他の政治団体の名誉を傷つけ若しくは善良な風俗を害し又は 特定の商品の広告その他営に関する宣伝をする等いやしくもポスター掲示場に掲示されるポスターとしての品位を損なう内容を記載しては ならないこと
(4) (1)の氏名記載義務に違反して掲示したポスターに関する撤去命合の規定及び所要の罰則を設けること。
2 ポスター掲示場に掲示するポスターにおける営業宣伝に係る罰則の新設
ポスター掲示場に指示したポスターにおいて特定の商品の広告その他営業に関する宣伝をした者は、100万円以下の罰金に処すること。
現行法ではポスターのサイズなど外形的なことしか規定されていない。改正案の1.の(1)~(3)にはポスターの内容について規定する項目となっている。候補者の名前の記載や名誉棄損、公序良俗、商業利用などを制限する内容となっている。私の言葉足らずで事前審査とモラルの関係性と公選法改正法案骨子を前提としていることを依頼時に法制局に伝えていなかったことから戸惑わせてしまったようだ。その点はお詫びしたい。
デジタルサイネージでのポスター掲示の場合はポスターのサイズの規定は必要のないことだと考える。デジタルである限りサイズの調整はどうにでもなる。ただし、データのサイズに関しては上限下限を設ける必要がありそうだ。
私が最も知りたいのは法令との関り。そこに至る前の法制局の回答であるから触れられていないもの仕方のないことである。取り合えず、私なりに関わってくるのであろう条文を下記に上げておく。公選法施行令第百十条、第百十一条、第百四十三条、第百四十四条あたりが直接的に関わると思う。下記矢印部分は内容に応じた私見である。
公職選挙法施行令(ポスターおよびポスター掲示板に関して)
第百十条の四
2.特定ポスターの一枚当たりの作成単価に当該特定ポスターの作成枚数を乗じて得た金額については~当該ポスターの作成を業とする者からの請求に基づき、当該ポスターの作成を業とする者に対し支払う。
→枚数は関係なくなる。
第百十一条
ポスター掲示場の総数は、当該市町村の各投票区について、次の表の上欄に掲げる投票区ごとの選挙人名簿登録者数及び同表の中欄に掲げる投票区ごとの面積に応じ、それぞれ当該下欄に定める数を合計した数とする。
3法第百四十四条の二第三項(同条第十項において準用する場合を含む。)に規定する政令で定める基準は、次のとおりとする。
一各投票区に設置するポスター掲示場の数は、それぞれの投票区の選挙人名簿登録者数及び面積に応じ、おおむね第一項の表の下欄に掲げる数に準ずること。
二各投票区に設置するポスター掲示場の配置は、当該投票区における人口密度、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこと。
→投票区の面積や密度に関係なく各投票所を基準としてその周辺に設置する。
百四十三条五
3 衆議院(小選挙区選出)議員、参議院(選挙区選出)議員又は都道府県知事の選挙については、第一項第四号の三の個人演説会告知用ポスター及び同項第五号の規定により選挙運動のために使用するポスター(衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党が使用するものを除く。)は、第百四十四条の二第一項の規定により設置されたポスターの掲示場ごとに公職の候補者一人につきそれぞれ一枚を限り掲示するほかは、掲示することができない。
→ポスターの枚数の限りは無く候補者ごとの1種類の広報を表示できるとする。
4 第百四十四条の二第八項の規定によりポスターの掲示場を設けることとした都道府県の議会の議員並びに市町村の議会の議員及び長の選挙については、第一項第五号の規定により選挙運動のために使用するポスターは、同条第八項の規定により設置されたポスターの掲示場ごとに公職の候補者一人につきそれぞれ一枚を限り掲示するほかは、掲示することができない。
→ポスターの枚数の限りは無く候補者ごとの1種類の広報を表示できるとする。
百四十四条
第百四十三条第一項第五号のポスターは、次の区分による数を超えて掲示することができない。ただし、第一号のポスターについては、その届け出た候補者に係る選挙区ごとに千枚以内で掲示するほかは、掲示することができない。
→デジタル化して表示される広報は枚数を制限されることはなく投票所周辺に設置されたデジタルサイネージの設置数に応じて表示される。
以上、続報を書くことができれば後日公開する。
参考
公職選挙法施行令
https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000089#Mp-Ch_11-At_110_4
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