2026/8/16
こんにちは、古田ひろきです。
第2回では、「日本版ライドシェア」と「公共ライドシェア」の制度的な違いを整理し、大津市のように観光需要の多い中心部と、生活の足に困る郊外・山間部が同居する自治体にとっては、市町村やNPOが主体となって設計できる「公共ライドシェア」の方が検討しやすい選択肢だとお伝えしました。
とはいえ、「公共ライドシェア」と一口に言っても、実際の運用は自治体ごとにかなり違います。
今回は、規模も課題も異なる3つの自治体の事例を見ながら、大津市に当てはめる際のヒントを探ります。
富山県南砺市では、令和6年(2024年)4月1日から、利賀地域で自治体版公共ライドシェア「なんモビ」の実証運行が始まりました。
市営バス「村内線」の運行エリア内を対象に、住民だけでなく観光客も利用できる仕組みです。
この事例の特徴は、タクシー会社との共同運行にあります。
予約が入るとまずタクシーが優先的に配車され、タクシーの台数が足りない場合に、登録している一般ドライバーが自家用車で有償送迎するという仕組みです。
田中幹夫市長は出発式で、駅を中心としたまちづくりの中で高齢者・観光客・ビジネス客のいずれにも利用してほしいと述べています。
タクシー事業者を「置き換える」のではなく、タクシー事業者を優先しながら不足分を地域住民が補うという設計は、県内の甲賀市の事業者協力型とも共通する考え方であり、タクシー業界との関係を築きながら進める際の一つのモデルになります。
大分県別府市は、日本有数の温泉地としてインバウンド(訪日外国人)が急増する一方で、高齢化率が全国平均を上回る35.5%に達し、路線バスも2年間で136便減少するという課題を抱えています。
別府市はまず令和6年(2024年)12月、市タクシー協会が主体となって「日本版ライドシェア」を地域・日時限定で導入しました。
しかし確保できたドライバーは8つのタクシー会社合わせてわずか10人にとどまったといいます。
そこで市は、コミュニティバス方式の「公共ライドシェア」を2地域で並行して導入し、さらに令和7年(2025年)4月からは、インバウンド需要に的を絞った「湯けむりライドシェアGLOBAL」を開始しました。
迎車料をタクシーより高めに設定することで採算性を確保しつつ、出発式では長野恭紘市長自らハンドルを握り、市民第1号の利用者を乗せて運転したことも話題になりました。
別府市の事例からは、日本版ライドシェアだけでは担い手を十分に確保できない場合があり、地域の実情に合わせて公共ライドシェアを組み合わせる方が現実的な選択になり得ること、そして観光地特有の需要(インバウンド対応)にも公共ライドシェアの枠組みで対応できることが分かります。
大津市も琵琶湖という観光資源を抱える都市であり、参考にしやすい事例だと言えます。
群馬県桐生市では、新型コロナウイルスの影響でタクシー事業が縮小したことを受け、令和6年(2024年)11月に「日本版ライドシェア」を導入しました。
市とタクシー事業者が連携し、不足する時間帯を特定したうえで運行するという形です。
配車予約にはLINEを活用し、住民にとって使い慣れたツールで予約できるようにしている点も特徴です。
導入から1カ月で約200回運行され、延べ350人が利用したとされています。
桐生市が活用したのは日本版ライドシェアの制度ですが、「自治体からの申し出によって供給車両数や運行時間帯を柔軟に設定できる」という特性を生かし、短期間で一定の利用実績を積み上げた点は、公共ライドシェアの設計を考えるうえでも参考になります。
特に、予約手段を住民にとって身近なアプリに寄せるという工夫は、大津市でそのまま応用できる部分です。
3つの事例を通じて見えてくるのは、次の3点です。
大津市はすでに「公共ライドシェア」についての検討を2年ほど続けています。
規模や地域特性が異なるとはいえ、これらの先行事例から得られる工夫は、大津市での具体的な制度設計を考えるうえで十分に活用できるはずです。
次回はいよいよ最終回として、公共ライドシェアのメリットと懸念点を整理し、大津市が実現に向けて今取り組むべきことを提案します。
出典:北國新聞「『なんモビ』運行開始」、南砺市ホームページ、産経新聞(Yahoo!ニュース配信)「『日本版』ライドシェアから公共ライドシェアに 大分・別府の挑戦」、別府市ホームページ、ジチタイワークスWEB「日本版ライドシェアとは?自治体事例や公共ライドシェアとの違い・制度を解説」
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