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長く曲がりくねった道―ビートルズ来日60年に思う

2026/7/23

今年は、ビートルズが初めて日本を訪れてから60年になります。
ビートルズの4人が羽田空港に到着したのは、1966年6月29日未明のことでした。そして、6月30日から7月2日までの3日間、東京の日本武道館で計5回の公演を行いました。日本中が熱狂した、まさに歴史的な出来事でした。
私は、いわゆる「ビートルズ世代」ではありません。
ビートルズが来日した1966年には、まだこの世に生まれていませんでした。それでも、以前このブログにも書いたように、中高生の頃にはレンタルレコード店に通い詰め、さまざまな音楽を聴きました。その中には、もちろんビートルズのLPも何枚もありました。
現在のように、聴きたい曲をインターネットですぐに再生できる時代ではありません。
店の棚に並んだレコードを一枚ずつ眺め、聴いてみたいアルバムを選び、家に持ち帰ってレコードプレーヤーに針を落とす。そして気に入った曲をカセットテープに録音する。いま振り返ると、音楽を聴くまでにも、ひと手間もふた手間もかかっていました。
しかし、その手間も含めて音楽だったように思います。
ビートルズには、好きな曲が数多くあります。
明るく軽快な曲もあれば、美しい旋律の曲、実験的な曲、孤独や人生について考えさせられる曲もあります。同じ4人がつくり出したとは思えないほど、その音楽の世界は幅広く、いま聴いても少しも古さを感じさせません。
その中でも、私が特に好きなのは「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」です。https://www.youtube.com/watch?v=yDP3dwpoVTo&list=RDyDP3dwpoVTo&start_radio=1
この曲はポール・マッカートニーが書き、アルバム『レット・イット・ビー』に収録されました。1970年5月、アメリカで「フォー・ユー・ブルー」との組み合わせでシングルとして発売され、ビートルズにとって20曲目にして最後の全米第1位となりました。当時、アメリカで発売されたビートルズの最後のシングルでもあります。
「長く曲がりくねった道」。
私は、この題名を聞くだけで、自分の歩んできた人生と重なるような気持ちになります。
人生は、決してまっすぐな道ではありません。
順調に歩いていると思っていても、突然、目の前に曲がり角が現れます。思うように進めず、立ち止まることもあります。遠回りをしたり、時には来た道を引き返したりすることもあります。
私自身も、若い頃に思い描いていた通りの人生を歩んできたわけではありません。いろいろな仕事を経験し、さまざまな人と出会い、迷いながら今日まで歩いてきました。
しかし、振り返ってみると、遠回りに思えた道にも意味がありました。
曲がりくねった道だったからこそ見えた景色があり、その道を歩いたからこそ出会えた人がいます。まっすぐではなかった人生の一つ一つが、現在の自分につながっているのだと思います。
以前、桑田佳祐さんがラジオで、私の記憶では、
「ビートルズを通ってこなかった人はいない。ビートルズのどの曲が好きかを聞けば、その人がどんな人なのか分かる」
というような趣旨のことを、面白おかしく話していました。
正確な言葉は覚えていませんが、なるほどと思ったものです。
「イエスタデイ」が好きな人、「レット・イット・ビー」が好きな人、「イン・マイ・ライフ」が好きな人、「ヘイ・ジュード」が好きな人。それぞれが、それぞれの思い出や人生を、ビートルズの曲に重ねているのでしょう。
そう考えると、私が「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」を好きなのも、いかにも自分らしい選択なのかもしれません。(ちなみにシングルレコードを持っています!)
その桑田佳祐さんにも、ビートルズへの敬意と、自らの人生を重ね合わせた曲があります。
「月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)」です。2011年2月に発売された桑田さんのアルバム『MUSICMAN』の最後に収録されています。https://www.youtube.com/watch?v=53LvByqJ3t0&list=RD53LvByqJ3t0&start_radio=1
この曲には、ビートルズが来日した頃の日本の風景や、ラジオから流れてきたビートルズの音楽に心を揺さぶられた少年時代、そして大人になる中で失ってしまった夢や過ぎ去った時代への思いが描かれています。
さらに後半には、ビルの屋上で演奏するビートルズを、一つの大きな時代が燃え尽きていくように見つめる場面が登場します。
これは、1969年1月30日、ロンドンのアップル社屋上で行われた、いわゆる「ルーフトップ・コンサート」を思わせます。この演奏は、ビートルズが4人そろって観客の前で行った最後のライブ・パフォーマンスとなりました。https://www.youtube.com/watch?v=VoXkBT20-08&list=RDVoXkBT20-08&start_radio=1
ただし、「月光の聖者達」は、屋上コンサートだけを描いた曲ではありません。
ビートルズとの出会いによって人生を動かされた少年が大人になり、変わってしまった日本や、二度と戻ることのできない青春の日々を振り返る曲です。それでも最後には、現在がどれほどつらくても、明日への希望を失わないという思いが込められています。
私がこの曲を好きなのも、単なるビートルズへのオマージュだからではありません。
音楽を通して過ぎ去った時代を振り返りながら、それでも前を向いて生きようとする桑田さんの思いに共感するからです。
音楽には、不思議な力があります。
一曲を耳にしただけで、何十年も前の自分に戻ることができます。
レンタルレコード店の棚、LPの大きなジャケット、レコードに針を落とす瞬間の小さな雑音、カセットテープに曲を録音していた夜。音楽とともに、その時代の空気や、自分が抱いていた夢までがよみがえってきます。
ビートルズの初来日から60年。
わずか数年間の活動でありながら、ビートルズの音楽は、いまも世界中で聴き継がれています。それは、その曲の中に、恋や喜びだけでなく、孤独、別れ、迷い、希望といった、人間が生きる上で避けることのできない感情が込められているからでしょう。
若い頃に聴いた「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」と、人生のさまざまな経験を重ねたいま聴く同じ曲とでは、心への響き方が違います。
これまで歩いてきた道は、決してまっすぐではありませんでした。
これから先にも、まだいくつもの曲がり角が待っていることでしょう。
それでも、一歩ずつ歩き続けていけば、その長く曲がりくねった道も、いつか自分にしか歩くことのできなかった大切な人生の道になるのだと思います。

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種田 昌克

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