2026/6/23
大垣市議会3月議会の一般質問で、私は職員の兼業について取り上げました。
職員の兼業というと、少し前までは「公務員が副業をしてよいのか」という受け止め方をされることも多かったと思います。もちろん、公務員である以上、本来の職務に支障が出ないこと、公務の公平性や信用を損なわないことは大前提です。兼業届を提出し、きちんと許可を得たうえで行われるべきものです。
しかし一方で、地域社会の現実を見ると、職員の兼業は単なる「副収入」の話にとどまらない、大きな可能性を持っていると感じます。
大垣市でも、これまで部活動の指導や大学講師など、職員の専門性や経験を生かした兼業事例があります。市役所職員が、勤務時間外に自分の知識や技術を地域や教育の場で生かす。これは、本人の成長にもなりますし、地域にとっても貴重な人材の活用になります。
さらに今年、印象的な事例がありました。
大垣市の消防署職員が、水門川舟下りの船頭を兼業で務めてくれたのです。
水門川舟下りは、大垣らしさを感じられる大切な観光資源であり、まちの魅力を伝える取り組みです。しかし、船頭の皆さんの平均年齢は高く、後継者の確保は大きな課題となっています。そうした中で、消防署職員が船頭として加わってくれたことに対し、他の船頭さんたちは大変喜ばれたそうです。
「良い後継者ができた」
そう受け止められたという話を聞き、私はとても嬉しく思いました。
消防署職員が船頭を務めるというと、一見すると意外に思われるかもしれません。しかし、よく考えてみれば、水に関する安全意識、体力、規律、いざという時の対応力など、消防職員として培ってきた力が生かされる場面は多いはずです。
もちろん、船頭としての技術やお客様への案内は、別に学ばなければなりません。しかし、地域の観光を支える現場に、そうした公務で培った力を持つ人が関わってくれることは、大垣市にとっても大きな意味があります。
私はこの話を聞いて、職員の兼業には三つの意味があると思いました。
一つ目は、地域の担い手不足を補うことです。
部活動の指導者、地域行事の担い手、伝統文化や観光を支える人材など、地域には人手を必要としている分野がたくさんあります。少子高齢化が進む中で、これまで地域の善意だけで支えられてきた活動を、これからも同じ形で続けることは難しくなっています。
二つ目は、職員自身の経験の幅を広げることです。
市役所の中だけでは見えない地域の現場があります。船頭をすれば、観光客の声を直接聞くことができます。部活動を指導すれば、子どもたちや保護者の思いに触れることができます。大学で教えれば、若い世代の考え方や学びの姿勢に接することができます。
そうした経験は、必ず本来の仕事にも生きてくるはずです。
三つ目は、市役所職員が「地域の一員」であることを再確認することです。
職員は行政サービスを提供する側であると同時に、このまちに暮らし、このまちを支える一人の市民でもあります。勤務時間外に、自分の得意なことや関心のある分野で地域に関わることは、決して悪いことではありません。むしろ、一定のルールのもとであれば、積極的に評価されてもよいのではないかと思います。
もちろん、何でも認めればよいという話ではありません。
利害関係のある事業者との関係、本来業務への影響、健康管理、勤務時間との区分、報酬のあり方、市民から見た公平性。こうした点については、きちんと整理する必要があります。
大切なのは、兼業を「こっそり認める」のではなく、どのような場合に認められるのか、どのような手続きが必要なのかを明確にし、透明性を持って運用することです。
先日、岐阜県内のある市に勤める職員の方で、プロの声優として活動している方にも出会いました。その方も、当然ながら兼業届を出し、許可を得て活動されているとのことでした。
プロの声優として活動する市職員。
部活動を指導する市職員。
大学で講師を務める市職員。
そして、水門川舟下りの船頭を務める消防署職員。
こうして見ると、職員の兼業には本当にさまざまな形があります。そしてその多くは、地域にとっても、市役所にとっても、本人にとっても、前向きな可能性を持っています。
これからの自治体は、人口減少や担い手不足の中で、限られた人材をどう生かすかが問われます。その中で、職員の兼業は、単なる働き方の問題ではなく、地域を支える人材をどう育て、どう生かしていくかというテーマでもあります。
大垣市においても、職員の兼業を必要以上に狭く考えるのではなく、公務員としての信頼を守りながら、地域貢献や人材育成につながるものとして、前向きに、そして丁寧に考えていくべきだと思います。
水門川舟下りの船頭として活躍してくれた消防署職員の事例は、そのことを実感させてくれる、とても良い例だと感じました。
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