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きかわだ ひとし ブログ

熊本地震の被災現場の視察

2026/9/5

 今週、熊本地震で被災した現場を、こども政策と男女共同参画を担当する大臣として視察しました。
 今回、熊本の被災現場を実際に訪れ、現場の皆さんのお話を伺う中で、資料や報告だけでは分からない多くのことを教えていただきました。

 日頃の備えが、いざというときに命を守ること。
 行政、地域、民間がそれぞれの強みを生かして支え合うこと。
 そして、こどもたちや被災者を支えている方々自身も被災者であり、その方々を支える視点が欠かせないことです。

 今回の視察で見たこと、聞いたこと、そして今後の政策につなげていきたいと感じたことを、現場ごとにご報告します。
 

【保育園編】

 はじめに訪問したのは、宇城市の「まがの保育園」です。
 発災後、園舎の安全確認や断水のため休園を余儀なくされましたが、8月12日から保育を再開し、9月からは朝7時から夕方6時まで、こどもたちを受け入れてくださっています。
 沖村園長、上野主任保育士から、発災時の状況や、その後の園の運営についてお話を伺いました。

まがの保育園の皆さんと。こどもたちは、辛い中でも元気に迎えてくれました。みんな一緒に「まけんばい!」
※写真の掲載については、保育園と保護者の皆さんの許可をいただいております。

 地震が発生したとき、園舎では壁が落ち、大きな棚やピアノも倒れました。
 その中で、保育士の皆さんは、とっさに自らの体で園児に覆いかぶさり、こどもたちを守ってくださいました。園児の皆さんに一人のけが人も出なかったと伺い、胸を打たれました。
 自らも恐怖を感じる中で、何よりも先にこどもたちの命を守ろうと行動された保育士、職員の皆さんに、心から敬意と感謝を申し上げます。

 沖村園長からは、10年前の熊本地震の被災経験を、その後の園の防災対策に生かし、毎月、園児とともに避難訓練を続けてきたとのお話もありました。今回の発災時も、大きな恐怖の中にありながら、職員の皆さんも、こどもたちも、日頃の訓練どおりに避難することができたそうです。
 熊本県内の保育園では、今回、園児にけが人が出なかったとも伺いました。これは決して偶然ではありません。
 日頃から、こどもたちの命を預かるという強い使命感と責任感を持ち、繰り返し備えてきた保育現場の皆さんの努力の積み重ねがあってこそだと感じました。

 一方で、保育士や園のスタッフの皆さん自身も、被災者です。
 自宅が被害を受けたり、家族のことを心配したり、避難所に避難しながら、それでも園を再開し、こどもたちと保護者を支えるため、懸命に現場に立ち続けています。
 沖村園長からは、こうした職員の皆さんを支えるため、他地域から保育士を応援派遣する仕組みなどについて、支援を求める声をいただきました。

 また、被災した建物の修繕や改修についても、単に元の状態に戻すだけではなく、今回の経験を踏まえて防災機能を強化し、これまで以上に安全な施設にしていくための支援が必要とのご意見を伺いました。

園内は多くの壁に亀裂が入り、ドアやパーテーションは外れ、倒れている状況でした。修繕にも大変な費用が必要です。

 発災時の保護者への連絡についても課題があります。現在のICTシステムでは、一斉連絡をするために一度事務室へ戻らなければならず、避難中であってもスマートフォンなどから迅速に保護者へ連絡できる仕組みが必要との声がありました。

 さらに、被災の影響は園舎だけにとどまりません。
 給食の食材を納入していた地域の事業者が被災し、廃業や休業を余儀なくされたことで、食材の確保にも支障が生じています。他の保育園と協力しながら対応することも検討しているとのことでした。

 そして、特に心に残ったのが、
 「2回目の地震だからといって、慣れているわけではありません」というお話です。

 むしろ、再び被災したことによる経営面、精神面のショックは非常に大きく、「2倍以上につらい」とのお言葉もありました。
 一度災害を経験しているから大丈夫だろう、ということではありません。

 それぞれの現場、それぞれの被災者が置かれている状況を丁寧に見て、必要な支援を考えなければならないと改めて感じました。
 視察と意見交換に同席いただいた熊本県保育協会、全国保育士会の皆様からも、他地域から保育士を応援派遣する際、派遣する側の保育園もぎりぎりの人員で運営していることから、派遣期間中の定員管理やパート保育士の活用など、柔軟な特例措置を検討してほしいとの要望をいただきました。

 災害時にも、こどもたちの命と日常を守るため、現場では多くの方々が懸命に力を尽くしてくださっています。
 今回、まがの保育園で伺ったお話からも、日頃からの備えの大切さとともに、保育の現場を支える皆さんの高い使命感と責任感を、改めて強く感じました。自らも被災する中で、こどもたちを守り、保育を再開し、地域を支えてくださっている皆様に、改めて、心から敬意を申し上げます。

 

【学童編】

 熊本地震の被災現場視察、続いて訪問したのは、宇城市の河江学童保育所です。
 現地では、宇城市の末松直洋市長、放課後児童支援員で宇城市統括責任者の坂本真寿美さん、運営を担うシダックス大新東ヒューマンサービス株式会社九州沖縄支店の宮崎智仁副支店長から、発災時の状況や、その後の学童保育の運営、こどもたちの様子についてお話を伺いました。

河江学童保育所では、こどもたちを代表して3名のこどもたちと意見交換しました。プレゼントをいただき、ありがとうございました。
※写真掲載については、学童保育所と保護者の皆さんの許可をいただいております。

 河江学童保育所は、発災後、断水のため一時閉所を余儀なくされましたが、8月19日から再開しました。現在は、こどもたちの日常を少しずつ取り戻すため、現場の皆さんが力を尽くしてくださっています。

 河江学童保育所は、もともと保護者会によって運営されていましたが、現在はシダックスが運営を担っています。
 今回、特に印象に残ったのは、日頃からこどもたちを見守っている現地スタッフの皆さんと、運営企業であるシダックスが、それぞれの強みを生かしながら連携して対応していたことです。

 発災直後、地域では飲料水の確保が大きな課題となりました。
 シダックスでは、会社のネットワークを活用して、水をはじめとする必要な物資を緊急に手配し、現場を支えたそうです。災害時には、行政だけで全てに対応することはできません。

 日頃からこどもたちを知る現場スタッフの皆さんと、全国的なネットワークを持つ民間企業が、それぞれの強みを持ち寄って支える。
 今回の対応は、災害時の学童保育を支える上で、とても大切な実例だと感じました。

 一方、現場の皆さんや末松市長から繰り返し伺ったのが、生活用水の確保の難しさです。
 飲料水ももちろん重要ですが、実際の避難生活や施設運営では、トイレなどに使う生活用水をどう確保するかが大きな課題になります。
 今回、その大きな助けとなったのが、10年前の熊本地震を教訓に整備していた防災井戸でした。さらに、全国各地からトイレカーの支援もあり、大変助かったとのお話を伺いました。

 災害への備えというと、食料や飲料水に目が向きがちですが、実際に被災した現場の声を聞くと、「トイレをどうするのか」「生活用水をどう確保するのか」という問題が、生活を維持する上で極めて重要であることがよく分かります。

 10年前の経験を教訓として準備したものが、今回、実際に人々の暮らしを支えた。防災は、過去の経験を次の備えにつなげていくことが何より大切だと、改めて感じました。

 保護者との連絡については、発災時にLINEを活用したそうです。一方で、なかなか連絡がつかない保護者もいたとのことで、緊急時に確実に保護者と連絡を取る方法については、今後さらに工夫が必要とのご意見もいただきました。

 そして、何より心に残ったのは、こどもたちの様子です。
 地震が起きたとき、この学童にいたこどもの中には、「ここに来ると地震のことを思い出す」と、その後、学童に来られなくなった子もいるそうです。
 一方で、地震が起きたときに一人で自宅にいたこどもは、「一人でいるのがとても怖かった。寂しかった」という経験から、地震の後は学童に来るようになったとのお話も伺いました。

 同じ災害を経験しても、こども一人ひとりが感じた怖さや、その後の心の動きは違います。学童に来ることで安心できる子もいれば、学童に来ること自体がつらくなってしまう子もいます。こどもたちの心が元の状態を取り戻すまでには、時間が必要です。

 だからこそ、周囲の大人が急がせることなく、一人ひとりの気持ちに寄り添いながら、温かく見守っていくことが大切だと感じました。

 学童保育でも当然ですが、現場のスタッフの皆さん自身も被災されています。そのような厳しい状況の中で、こどもたちの居場所を守り、日常を少しずつ取り戻そうと努力されている皆さんに、心から敬意を申し上げます。

今回、行政、地域の現場、民間企業がそれぞれの力を持ち寄ることで、災害時にもこどもたちを支えることができるという、大切な実例を見せていただきました。

 

【避難所編及び女性相談体制編】

 熊本地震の被災現場視察。続いて、宇土市の「ecowin宇土アリーナ」に設けられた避難所を訪問しました。
 現地では、光井正吾宇土市長から、発災後の避難所運営や、これまでの災害の経験を生かした取組について、詳しくお話を伺いました。
 

日中はご自宅の片付けやお仕事に行っている方も多く、大変静かな状況でした。

 宇土アリーナは、市内各所に設けられていた避難所を集約して運営されている避難所です。中に入ってまず感じたのは、避難されている方々のプライバシーへの配慮が、随所になされていることでした。

 避難者には原則として2人に1つのテントが用意され、その中には段ボールベッドとマットレスが配置されています。
 このテントは、石川県で発生した地震の際に実際に使用されたものが、今回、支援物資として熊本に届けられたとのことでした。

 宇土市では、10年前の熊本地震を経験して以降、災害対応の強化を続けてきました。石川県で地震が発生した際には現地に職員を派遣し、避難所運営や被災者支援について実際に学び、その経験を宇土市の災害対応にも取り入れてきたそうです。

 石川県で使われた資機材が熊本に届けられ、そこで得られた経験や知恵も、今回の避難所運営に生かされている。災害が発生した場合、それぞれの地域が経験したことを全国で共有し、次の災害への備えにつなげていくことの大切さを強く感じました。

利用者の方たちの個人の荷物は自宅においたまま避難されている方が多いとのことでした。仕切りがあることは、プライバシーの点から、やはり安心感があると感じましたが、仕切り過ぎると、周りの様子かわからないので、それはそれで不安になることも実感できました。

 人的な支援についても同じです。熊本県と四国各県との支援協定や、国による全国の自治体からの応援職員派遣の仕組みなどを活用し、宇土アリーナの避難所にも香川県などから応援職員が入り、宇土市の職員とともに、被災された方々の生活を支えていました。

 災害対応では、被災した自治体の職員自身も被災者です。一つの自治体だけですべてを抱えるのではなく、全国の自治体が助け合い、それぞれの経験や人材を持ち寄る。こうした仕組みが、いざというときに確実に機能するよう、政治としてもしっかり支えていかなければならないと感じました。

 今回、私は男女共同参画担当大臣として、特に「女性の視点」が避難所の中でどのように生かされているのかも確認しました。

 避難所では、女性スタッフを積極的に配置するとともに、女性専用の更衣スペースを設けるなど、安心して生活するための工夫がなされていました。トイレについても、女性が安心して利用できる環境への配慮がきめ細やかに行われています。
 また、災害時には、普段とは異なる生活環境の中で、性犯罪・性暴力などのリスクが高まることがあります。そのため、避難所内には注意を呼びかけるポスターを掲示したり、相談先が明記されたカードを設置するなど、被害を未然に防ぐための取組も行われていました。

避難所のホールでは、女性の利用者さんが健康維持のための体操教室に参加されていました。

 内閣府男女共同参画局では、避難所の安全やプライバシー、女性用トイレ、更衣室、性犯罪・性暴力の防止など、避難所運営で確認すべき事項を「避難所・備蓄チェックシート」としてまとめています。今回の避難所でも、このチェックシートが活用されていました。

 光井市長からは、避難所を設置した当初から、内閣府男女共同参画局の職員がリエゾンとして現地に入り、このチェックシートを使いながら避難所を確認し、具体的な助言を行ったことが大変役立ったとのお話をいただきました。男女共同参画局では、阪神・淡路大震災以降、全国各地の被災地で、女性の視点から見た避難所の課題や改善点を日誌として記録してきました。その経験が、現在のガイドラインやチェックシートに反映されています。

 今回、実際の被災現場で、その蓄積が役に立っているとの声を直接伺い、こうした取組をこれからも着実に続けていくことの大切さを改めて感じました。
 さらに今回、性暴力被害者のためのサポートセンター「ゆあさいどくまもと」の皆さんの活動についても伺いました。

 「ゆあさいどくまもと」は、性暴力被害にあった方やそのご家族からの相談を受け、必要に応じて医療、心理、法律などの専門的な支援につなぐ相談機関です。熊本県が、公益社団法人くまもと被害者支援センターに運営を委託しています。
 今回の地震では、相談者が落ち着いて相談しやすくなる、ライフラインが整い始めた段階から避難所の巡回を開始し、特に女性を中心に声をかけながら、困りごとや悩みの相談を受け付けています。合わせて、防犯ブザーの配付など、被害を未然に防ぐための取組も行っています。すでに具体的な相談も寄せられているとのことでした。
 また、内閣府男女共同参画局の支援制度を活用し、24時間体制の電話相談を継続しています。災害時には、「困っていても自分から相談できない」「誰に相談すればよいか分からない」という方もいます。
 だからこそ、相談窓口を設けて待つだけではなく、支援する側から避難所に足を運び、声をかけ、必要な支援につなげていくことが大切です。

 そして、性犯罪・性暴力への対策は、被害が起きてから対応するだけでは十分ではありません。避難所を設置する段階から、防犯やプライバシーへの配慮、相談体制を組み込んでおくことが、安心して過ごせる避難所につながります。災害対応は、発災してから一から考えるのでは間に合いません。

 過去の災害から学び、全国で経験を共有し、平時から備えておく。
 そして、女性、こども、高齢者、障がいのある方など、避難する方一人ひとりが置かれている状況に目を向ける。
 そうした積み重ねが、災害時の命と尊厳を守ることにつながるのだと、今回の視察を通じて改めて感じました。

 

【木村知事との意見交換】

最後に熊本県庁を訪れ、木村敬知事と意見交換しました。

木村熊本県知事からは率直なご意見をいただきました。

 木村知事からは、これまでの大きな地震や豪雨災害に加え、今回も被災した地域や被災者がある中で、度重なる災害に見舞われてきた熊本の実情についてお話がありました。

 繰り返し被災している地域や被災者の負担は、単純に一度の災害と同じように考えることはできません。
 こうした状況を踏まえ、国としても実情に応じた支援を検討してほしいとの要望をいただきました。

 また、こども政策や女性政策をはじめ、地域の福祉を現場で支えている社会福祉法人についてもお話がありました。厳しい経営状況にある法人も少なくない一方で、保育や福祉など、地域にとって欠かすことのできない社会インフラを担っています。こうした施設や法人をどう支えていくかについても、国としてしっかり考えてほしいとのご意見をいただきました。

 あわせて、私が担当する地域未来戦略についても意見交換しました。
 地域の復旧・復興を進めることは、単に元の状態に戻すことではありません。地域の暮らしや産業を守り、将来に向けて再び前に進める環境をつくることが重要です。

 木村知事のリーダーシップの下、熊本県庁の皆様には、被災者の声や地域の実情を丁寧に把握していただいています。国としても、熊本県や市町村と力を合わせ、被災された方々の暮らしと地域の復旧・復興をしっかり支えていきたいと思います。

 

【結び】

 今回、保育園、放課後児童クラブ、避難所を訪問し、最後に木村知事と意見交換する中で、改めて感じたことがあります。
 災害の現場では、制度どおりにいかないことが数多く起こります。
 だからこそ、実際に現場に足を運び、困っていること、必要としていることを直接伺うことが大切です。

 そして、現場でこどもたちを守り、被災された方々の暮らしを支えている皆さんの努力に、政治や行政がきちんと応えていかなければなりません。
 今もなお大変な状況の中で、こどもたちのため、被災された方々のため、そして地域のために力を尽くしてくださっているすべての皆様に、改めて心から敬意と感謝を申し上げます。

熊本県庁の中には、国の各省庁から現地に派遣されている職員の本部があります。現場の声を国に届ける大切な役割です。

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著者

きかわだ ひとし

きかわだ ひとし

選挙 第51回衆議院議員選挙 2026年 (2026/02/08)
選挙区

埼玉3区 96,335 票 [当選] 比例 北関東ブロック 自由民主党

肩書 内閣府特命担当大臣・衆議院議員・元党国防部会長・元衆議院外務委員長・元内閣府副大臣・元外務大臣政務官
党派・会派 自由民主党
その他

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