2025/5/3
初日。
米国笹川平和財団のデレゲーションでテキサス、ヒューストンに到着しました。テキサス州を宇宙探索と開発の最前線に位置づけることをテキサス州政府宇宙委員会は目指しています。
最初のテキサスでのテーマはポストISSについて、です。
ISSの耐用年数は30年と言われており、老朽化により2030年に運用終了の予定です。ISSの後継機が打ち上がらないと、中国が2021年に打ち上げた宇宙ステーションのみになってしまうことから、来年にはポストISSに向けてプロジェクト事業社1〜2社が選定されると言われています。安全保障の観点からも、宇宙産業の競争力を維持するためにも、日米の連携が必要です。
日本では、有人分野において宇宙実験・実証、輸送、宇宙飛行士の派遣の3軸に注力していますが、ISSが使われる2030年までは、日本実験棟「きぼう」の利用を拡大し、新型物資補給機(HTV-X)によるISSへの物資補給を実施することで、ポストISSを見据えた取り組みを強化していこうとしています。
ISS後継機となる商業宇宙ステーション開発・運営を担う事業者であるStarLab社を訪問しました。日本、アメリカ、欧州、カナダのグローバルジョイントベンチャーとなっており、三菱商事が戦略株主として資本参画しています。民間企業が解決したい課題を設定して、アカデミアから商業化企業までが集う、オハイオ州の宇宙利用サイエンスパークへの参画も検討中とのことです。大学連携や科学研究の重要性について議論をする中で、癌治療や遺伝子研究をポストISSで行う可能性も示されました。宇宙における最初のホテル建設を目指すヒルトンホテルも参画していますが、清潔に環境を保つという分野での貢献が期待されます。ISSの空気を袋に入れて持ち帰ってきて嗅ぐと、不快な匂いがするのだそうです。
ポストISSに向けて、クルーが快適に過ごせるよう作られた模型も見せていただき、民間の経験や知見が宇宙に活かされていく様子を感じました。
2日目。
フリポートLNGプロジェクトの視察。日本からは大阪ガスとJERAが関わっています。日本に安くエネルギーを提供できるように液化加工契約を結んでいます。
LNGは天然ガスを採掘・液化した後、魔法瓶のようなタンカーで運ぶことができるので、パイプライン網がない日本にとってLNGフリーポート基地は重要なものです。日本に輸送した後は、製造所でLNGを気化、付臭し都市ガスを製造、パイプラインでガスを供給、工場やオフィスの冷暖房、熱、そして各家庭の給湯・暖房に利用できるよう届けていきます。こうしたアメリカのプロジェクトに関わることで、日本の生活、経済の基礎が築かれていると言えますし、日本企業の知見や経験がアメリカのプロジェクトに大きく貢献していることも事実です。
天然ガスは原油に比べて中東比率が低く、アジア・太平洋にも比較的多く存在しているので、日本へは太平洋、オーストラリア、マレーシアからも輸入されています。日本にはアメリカ、ロシアからも輸入されていますが、アメリカからはヨーロッパへの輸出も増えています。ウクライナ侵攻の影響でロシアからヨーロッパへのパイプラインガスが止まったことで、代替としてヨーロッパへのLNG輸入が急増していることも背景にあります。
今後、タイ、ベトナム、フィリピンへの輸出にも潜在力があるようです。中国の経済発展や部品を輸入する際の関税がどのような影響をもたらすのか、またパナマ運河やスエズ運河が使えなければ希望峰を回ることになり時間やコストもかかるのでは、など議論されました。またオペレーションルームと24時間4シフト制のオペレーターの訓練には2〜3年かかると言われているトレーニングセンターも見せていただきました。
沿岸警備隊に守られたフリーポートから日本の各家庭にガスが届けられていきますが、その価格にも関わってくるからこそ、現地の視察、国際情勢の分析は必須と思います。
2日目2箇所目の視察先はNASAジョンソン宇宙センターです。有人宇宙飛行プログラムの中枢で、日本人宇宙飛行士、諏訪理さんも現在訓練滞在中です。星出彰彦宇宙飛行士とも意見交換しました。また、NASAからは大西卓哉宇宙飛行士が4月19日からISSの船長(コマンダー)を務めている、という紹介もありました。
NASAに特別ツアーを組んでいただきました。
まず振り返っておきたいのは、有人月面着陸を実現させたNASAの「アポロ計画」について。1962年ケネディ大統領は「我々は月に行くことを決めた」と演説、初めて地球の姿を宇宙から撮影したのがアポロ8号でした。「地球の出(Earth Rise)」の写真がアースデイ(地球の日)の設立に繋がった、とも言われています。
そして遂にアポロ11号が月面に着陸したのは1969年7月20日でした。コマンダーはニール・アームストロング、月着陸船のパイロットはバズ・オルドリンでした。「この時に月の物質を持ち帰るのに重量オーバーにならないよう、代わりにバズは靴を月に置いてきたので、いつか取りに行かなくちゃいけない」というエピソードも紹介されました。
ちなみに、1970年の大阪万博で示された「月の石」はアポロ12号が持って帰ってきたもので、現在開催されている大阪・関西万博の米国館で展示されている「月の石」はアポロ17号のものです。「ヒューストン、問題が発生した」というセリフで有名なアポロ13号の映画に出てくる管制塔も見せていただきました。
アポロ計画は20号まで計画されていましたが、結局18、19、20は飛ばず、17号で打ち切りとなりました。
そして今進められているのが、アメリカの有人月面探査を目指す「アルテミス計画」です。日本は主体的に参画し、米国人以外で初となる月面着陸として2020年代後半までに日本人宇宙飛行士の月面着陸を目指しています。2024年には日米で署名が交わされ、日本人宇宙飛行士の2回の月面着陸と日本が有人与圧ローバーを提供することが規定されています。月周回有人拠点「ゲートウェイ」でも、日本は有人滞在技術、バッテリーなどで、月面での持続的な活動の実現に貢献できます。月面での与圧ローバー運用を想定して、アリゾナの砂漠での実験も行われているそうですが、「砂漠という過酷な環境で課題をこなしていくことでチームビルディングを養う意義もある」というお話もうかがいました。
アメリカ主導のアルテミス計画に加えて、中国やインドなど新興国による月面探索も進展していることを意識しておく必要がありますが、アメリカが先頭を走っていることには変わらないだろう、と力強い言葉がNASA側からありました。アルテミス計画に関心を示している国は50カ国にのぼっているそうですが、各国がその強みを活かしながら宇宙というフロンティアに平和的に向き合っていきたいと思います。インスピレーションを次世代に持ってもらうためには、挑戦する姿を見せ続けなければならない、と感じたNASA、JAXAでの意見交換でした。
3日目。
DeepStarとの面談から。1991年に創設された国際的な海洋技術開発コンソーシアムで、シェブロンの他日本からはJC石油開発など世界の大手エネルギー企業や研究機関が産官学連携を進めています。深海域の探鉱、開発は石油、ガス業界について重要であり、2024年5月に日本財団とDeepStarが連携協定を結びました。エネルギー供給問題には世界的な協力が不可欠です。日本の革新的な企業とのコラボレーションへの期待が関係者からも伝えられました。シェブロンでは日本の大企業との連携は従来から行われてきましたが、コンソーシアムを通じて日本の中小企業やスタートアップとの関係構築も始められている事も前向きに伝えられました。
石油メジャーのシェブロンは本社をカルフォルニアからヒューストンへ移していますが、エネルギー産業の人脈はテキサスに集まって来ていることを感じます。低価格なエネルギーを追求すること、環境への負荷を下げていくこと、研究開発の原動力についても意見交換ができました。
そして、日本の「ものづくり精神」とエニジニアリングの融合と呼ばれるHibotのロボットのデモンストレーションを見せていただきました。高所や狭い場所での作業にはロボットを活用して検査する必要があります。横には7メートル、縦には5メートル伸びる、蛇型の動きをするロボットです。有毒ガスの検知にも使うことができます。
さて、今回初めて訪問したテキサス州ですが、人口は3050万人となり、カリフォルニア州に次ぐ全米第2位の州であり、大統領選挙人数も538人中40人です。既に2023年の推計値で白人よりヒスパニック系が大きな割合となりました。GDP成長率は7.4%で、アメリカ平均の2.9%をはるかに超えています。経済規模2.6兆円ですから、GDPで世界第8位のイタリアを上回っていることになります。企業拠点数ではニューヨークより多く、約50万社です。
テキサスにおける日系企業の貢献も目覚ましいものがあります。東京エレクトロンは本社をオースティン市内の新社屋に移転したことでアボット知事から感謝状が送られました。トヨタ自動車はカリフォルニア州からプレイノ市に本社を移転し、数千名の従業員・家族が移転し、新たな街が誕生しました。三菱重工の移転からヒューストン市長が「米国三菱重工の日」と定める宣言書を発出した他、高齢者にエアコンを提供する事業を協力したことから「ダイキン・エアコン感謝デー」も定めらているそうです。ちなみに「ヒューストン・アストロズ」のホームスタジアムは「ダイキン・パーク」となりました。テキサスには石油ガス開発税があるので、法人税、所得税がなく、電気代も安いことから企業立地条件が整っていると言えます。
日本経済新聞と英フィナンシャル・タイムズによる格付けで、ヒューストンが外国企業が投資しやすい都市1位に選ばれており、3位にプレイノ、4位にアービング、5位にダラス、6位にオースティンと、テキサス州の都市が並んでいます。
アメリカの主要都市における賃金を比較すると、全職種ではサンフランシスコで約8300ドル、ニューヨークは約7000ドル、ロサンゼルスで約6300ドル、ヒューストンで約5500ドルとなっています。なお、東京は約2000ドル、ソウルは約2400ドル(ジェトロの2023年調査)となっています。OECD加盟国で見ると、1991年から2022年まで加盟国平均で33%賃金上昇しているものの、日本の平均賃金は3%しか増えていませんので、OECD加盟国平均より日本の平均賃金は下回っていますし、38カ国中25位というのが現実です。各国、各都市の持つ国際的な競争力、潜在力についても考えさせられるデータです。
4日目。米国笹川平和財団の「2025年統合安全保障訪米団」としてワシントンD.C.に到着しました。
個人的に長年の友人であるマーク・ケネディ元下院議員との朝食ミーティングからスタートしました。
続いてビル・ハガティ上院議員(共和党・テネシー州)との面談。2017年から2019年まで駐日アメリカ大使を務め、日米関係の強化、経済協力、安保連携に尽力された第一人者です。
フランク・パローン下院議員(民主党・ニュージャージー州)はご子息が日本人と結婚されている、というご縁もあり、アメリカの先住民の記念品の中にアイヌの民族衣装も飾ってありました。
ジル・トクダ下院議員(民主党・ハワイ州)は北朝鮮拉致問題解決に向けてトランプ大統領へ書簡を送った中心人物で、人権問題として超党派で取り組み、トランプ大統領が北朝鮮と接する際には拉致問題を議題とするよう働きかけて下さった方です。
つづくダリン・ラフッド下院議員(共和党・イリノイ州)はサイバー小委員会委員長でもあり、安全保障の議論も行いました。
アミ・ベラ下院議員(民主党・カリフォルニア州)とはUSAIDの将来像についても話すことができ、私が抱いている懸念も共有いただけたと思います。
また、ブライアン・バビン下院議員(共和党・テキサス州)からは一般的な予算の効果について考えを述べられながらも、宇宙予算の重要性については安全保障の観点から維持するという意思が感じられました。
どなたが何を発言されたのか言及するのは避けますが、ちょうどトランプ大統領が100日目を迎えたところであり、そのアピールを分析する声、同時に批評する声も聞かれました。トランプ大統領は大統領のエグゼクティブオーダー(執行命令)でどこまでできるのか議会への挑戦を始めているのではないか、という分析や、「関税の影響を考慮した買い物の駆け込みが始まりスーパーの棚が空になりつつある」と民主党議員が声をあげる様子も伝えられました。経済の減退が地元の声として議員を動かす可能性はあります。
関税については、総じて「日本は他の国と同等に扱われるべきではない。日本はアメリカと価値を共有する同盟国なのだから」というコメントが多く聞かれたところです。
「これを買って、あれを売ってという取引ではなく、シナジー効果、相乗効果を考えるべき、物品の動きだけでなく日本人留学生がアメリカで暮らす、または日本企業が投資をするなどの経済効果も併せて考えるべき」といった具体的な議論もありました。貿易収支やデジタル赤字についても日本の考え方を打ち込めたと思います。
5日目。
朝のミーティングはレオナルド・コシンスキー退役空軍中将と。2020年から2022年までは在日米軍第5空軍副司令官として横田基地に勤務、2022年に統合参謀本部兵站部長を務められました。
AIを活用した次世代軍事ロジスティックス技術にも明るく、ルール作りについても意見交換できました。
続いて、ジュリア・ネシェワット元国土安全保障担当大統領補佐官との面談。2020年トランプ政権下で大統領補佐官(国土安全保障担当)に就任された方です。LNG輸出の将来像について情報交換の時間となりました。
リサ・マコウスキー上院議員(共和党・アラスカ州)は、日米友好委員会の議長でもあり日本との関わりが深い議員です。アラスカからは木材が日本に輸入されていますが、ヤマハのピアノの素材になっているという紹介もありました。また拉致問題について議会決議にも協力してくださっています。議員オフィスのスタッフの半数はアラスカ出身ということで、初のアラスカ生まれの上院議員としての誇りとエネルギーなどアラスカの土地柄を活かした政策や北極海の可能性への強い思いも感じました。
アジア・グループを訪問し、アジア太平洋地域における外交・安全保障問題の専門家であるカート・キャンベル前国務副長官やバイデン政権で東アジア担当ディレクター、オバマ政権で日本・オセアニア担当ディレクターをされたクリス・ジョンストン・マネージング・プリンシパル、レクソン・リュー社長と面談しました。
本日の議論もどなたが何を話されたかは伏せますが、日米関係の深化に長年にわたって貢献されてきたリチャード・アーミテージ元国務副長官の功績についても話題となり、日本の国会議員はじめ関係者がワシントンD.C.で強力な人脈を築いていくことの重要性が伝えられました。トランプ政権の特徴もワシントンに来て多くの関係者と意見交換したことで見えてきました。外交、安全保障政策へ活かしていきます。

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