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第1227号 阿部前監督辞任から見る

2026/5/29

 今月25日夜、読売ジャイアンツの阿部慎之助監督が18歳の長女への暴行容疑で現行犯逮捕され、翌26日に辞任を発表しました。長年にわたり球界をけん引してきた名選手・名監督の転落は、多くの人に衝撃を与えました。暴力行為は断じて許されません。しかし私は、この事件の顛末に、政治家として見過ごせない二つの問題が浮かび上がっていると感じています。

◆AIリテラシー教育 長女はChatGPTに相談した結果、「匿名で相談できる児童相談所がある」との案内を信じて電話しました。助けを求めた一つの行動が、警察の介入と父親の現行犯逮捕という、本人が予期しなかった展開を招きました。娘は泣き崩れたと手紙に記しています。
「相談する」と「通報が行われる」は、制度上まったく異なる行為です。児相への通報は、児童虐待防止法および刑訴法に基づく公務員の法的義務であり、今回の児相の対応は手続きとして誤りではありません。問題はそこではありません。AIが公的機関を案内する際に、その機関がどのような役割を担い、どのような手続きが発動されるかを、利用者が理解できる形で示
す仕組みが、いまだ整備されていないことです。AIツールが日常生活に深く浸透した今日、「AIを使って行動した先に何が起きるか」を学ぶ機会を社会として提供できていないことが、今回の事態の背景にあります。 これは個人の知識の問題ではありません。教育制度と情報環境の整備が、テクノロジーの普及速度に追いついていない、社会全体の構造的な課題です。若者だけでなく、多くの大人もAIを「正しい答えをくれる存在」として頼る時代だからこそ、この整備は急を要します。

◆現行犯逮捕の「必要性」と意向確認の手続き
 もう一点は、警察の初動対応の問題です。刑事訴訟法213条は現行犯逮捕を認めていますが、逮捕には犯罪の明白性に加え、逃亡や証拠隠滅のおそれという実質的な必要性が求められます。逮捕はあくまで例外的な強制手段であり、その要件は厳格に解されなければなりません。
 今回は家庭内のトラブルであり、加害者は自宅にいる状況でした。警察としては、逮捕に先立ち、通報者である長女が成年年齢に達していることを踏まえ、その意向と状況を慎重に確認する手続きが求められたので
はないでしょうか。もちろん、阿部監督が任意同行を拒否した可能性など、現時点では明らかでない事実もあります。断定はできません。しかし、家庭内事案において警察権力が行使される際、当事者の意向確認がどのように行われるべきかという基準は、現行法上必ずしも明確ではありません。逮捕に至る判断プロセスの透明性を高めることを、国会として正面から検証する必要があります。

◆二つの政策提言
 二点を訴えます。第一に、AIツールの特性と公的制度の仕組みを組み合わせたリテラシー教育を、学校教育および社会教育の課程に制度として位置づけること。AIを使って行動する前に、その先にある制度の作動を理解できる環境を、社会として整える責任があります。
 第二に、家庭内事案における警察の現行犯逮捕の必要性判断基準を明確化し、当事者意向の確認プロセスを含めてその運用を国会として検証する仕組みを整えること。テクノロジーと制度の間にある溝が、一人の若者の人生に深く影を落とした、その溝を埋めることが、立法府の責任です。今回の事件を、単なるスポーツ界の不祥事として終わらせてはなりません。

~スタッフ日記「いざいざ熊野」

 天川村を出発し、大峰山寺のある山上ヶ岳を目指しました。山頂付近は標高1700メートルを超えますが、そこには宿坊が並び、大峰山寺を中心に独特の空気が広がっています。大峰山寺は修験道の中心的な寺院の一つで、毎年5月には「戸開式」が行われます。
 宿坊へ向かう途中、「西の覗き」と呼ばれる断崖絶壁の行場に立ち寄りました。夕暮れの景色を眺めながら写真を撮っていると、突然地面が揺れ始めます。直後にスマホの緊急地震速報が鳴り、こんな山奥でもしっかり届くのだと妙なところで感心しました。
 宿坊に着くと、女人結界の入口で道を教えてくださった方と再会しました。その方は「阪堺役講」という講の一員で、毎年戸開式に参加されているとのことでした。
 夕食後、その方の紹介で講の皆さんの集まりに参加させていただき、修験道や大峰山
の歴史について色々と話を聞かせてもらいました。
 そして午前3時。戸開式に向かう皆さんと再び合流し、法被まで貸していただいて、一緒に参加することになりました。
 戸開式は冬の間閉ざされていた行場を開く行事です。講の皆さんが受け継いできた役割の一端にも触れさせていただき、一般ではなかなか見ることのできない場面も見学することができました。
 境内では騎馬を組んだ山伏の「わっしょい、わっしょい」と威勢の良い掛け声が響いていましたが、お堂の中に入ると一転して静かな空気が流れていました。その対照的な雰囲気が特に印象に残っています。
 山の上で思いがけない出会いに恵まれながら、山を下っていき、次は三重の海岸へ進んでいきます。つづく。
   (チャーリーブラウン)

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