
2017年の一大政治イベントとされるフランス大統領選は、二大会派と極右勢力の戦いという当初の予測から大きく外れたことで話題になっています
今回決選投票に進んだのは新興政党「前進!」のエマニュエル・マクロン氏と移民批判を繰り返す極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン氏です。これまでの大統領選では主に二大政党を中心に左派と右派の戦いが繰り広げられていましたが、今回初めてどちらにも属さない2名の候補による決選投票が5月7日に行われることとなりました。
今回の大統領選の争点は、大きく治安と経済です。治安については、2015年にはパリで、2016年にはニースでテロが発生するなど、パリのテロ以降230人もの人が犠牲になっています。そのため、いかにして治安を改善するか、移民問題にどう対応するかというのが1つの焦点になっています。
経済については、フランスは2009年アメリカのリーマンブラザーズ破産による恐慌以来、不況から抜け出せていません。オランド政権が景気を回復させられなかったため、この問題は次期政権に重くのしかかることでしょう。
マクロン氏とルペン氏の政策は大きく違います。それぞれ簡単に見ていきましょう。
マクロン氏の政策の特徴を一言でまとめれば「経済政策」です。現オランド政権でかつて経済担当大臣を務めた経験もあります。政策の詳細を見ていくと、週の労働時間を35時間に制限する労働規制を「短すぎる」として批判したり、経済担当大臣時代に小売店の日曜日の営業を年5日に制限していた規制を12日に緩和する通称マクロン法を提出して可決させたりと、政策的には規制緩和を中心としたものです。また、EUの価値に重きを置く「グローバル主義者」であり、EU拡大の推進や移民の拡大を訴えています。
ルペン氏の政策の特徴を一言でまとめれば「反移民」です。移民の受け入れがフランス国内の雇用や治安を破壊するなどと訴え、EU離脱を問う国民投票の実施を公約として掲げるほか、国境管理の徹底や移民の受け入れを大幅に制限することを主張しています。一方経済政策については、労働時間は現状維持、中小企業への貸付の金利をゼロにするなど、マクロン氏と一線を画したものになっています。
1回目の投票では、マクロン氏が24%、ルペン氏が21%を獲得しています。今回の選挙の特徴は、フィヨン氏やメランション氏といった敗退した候補も約19%を獲得したということであり、接戦だったというところにあります。そのため、マクロン氏もルペン氏も、他の候補者の支持者をしっかり取り込めなければ決選投票では勝てません。
敗退した中道右派で元首相のフィヨン氏や与党社会党のアモン氏など多くの候補は既にマクロン氏支持を表明しています。しかし、だからといってそれらの候補者の支持者が全てマクロン氏の支持に回るかというと、そういう訳ではありません。特に、経済政策のうち雇用創出についてマクロン氏とルペン氏のいずれに対しても期待していない有権者が45%にのぼっています。。そうした浮動層が最終的にどちらに投票するかが問題になってきます。
また、各種メディアの世論調査によれば、5月1日前後の支持率では、マクロン氏が60%あまり、ルペン氏が40%あまりという結果が出ています。このまま推移すればマクロン氏が勝つことになりそうです。
しかし、マクロン氏が安泰かといえばそうではありません。マクロン氏の最も大きな弱点は、有権者へのアピールに苦戦しているという点です。そして、その点を徹底的に意識できているのがルペン氏です。
具体的に見ていきましょう。まずマクロン氏がルペン氏らに勝利した日の夜、マクロン氏は多数の文化人らを呼んで「祝賀パーティー」を開きました。こうしたパーティーは「もう選挙が終わったかのような態度だ」と批判を受けています。各メディアもパーティーに参加するマクロン氏の写真を取り上げるなどしています。
一方で、ルペン氏はその翌日にフランス北部の市場に出かけて「庶民派」であることをアピールし、徹底的にマクロン氏を批判しました。
また、4月26日にはマクロン氏は「庶民派」アピールや、停滞する産業への配慮の一環として、フランス北部のアミアンの工場を訪れようとしましたが、ルペン氏はマクロン氏が来る直前に同じ工場を突然訪問しました。その時マクロン氏は商工会議所で経営者たちと会談している最中だったということもあり、ルペン氏は「マクロン氏は経営者側の人間。私は労働者の味方だ」と訴え、一層の「庶民派」アピールに成功し、マクロン氏のアピールを打ち消しました。
フランスの選挙まで残りわずかですが、こうした細やかなアピール戦略も大きく影響を及ぼしそうで、ギリギリまで結果が予想できない状況となっています。
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