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下半期も選挙が続々。今年はヨーロッパが変わる!各国の情勢をサクッと理解!

2017/9/11

齋藤 貴

齋藤 貴

2017年はヨーロッパで選挙が盛りだくさんの年です。元々、オランダ総選挙、フランス大統領選挙・議会選挙、ドイツ連邦議会選挙が開かれることが決まっており、それだけでも十分に選挙イヤーでした。しかし、それだけでなく、イギリスやオーストリアでも解散(選挙の前倒し)が行われ、祭りの様相を呈しています。今回のこの記事では、2017年のこれまでの選挙とこれからの選挙を簡単にまとめたいと思います。

3月 オランダ下院選挙

2017年最初に世界から注目を集めたのは、3月のオランダ下院選挙でした。

「反イスラム」を掲げる極右政党「自由党」がルッテ氏率いる与党「自由民主党」に勝利し、ヨーロッパにおいて極右政党が躍進するきっかけになるのではないかという懸念から、注目が集まっていました。オランダでは連立政権による既存政治への不満が一定程度高まっていたのに加え、イスラム圏移民の流入によるオランダ文化が脅かされるのではないかという不安が高まっていたため、極右政党「自由党」の躍進が現実味を増していました。

結果は、与党「自由民主党」の勝利で終わり、心配は杞憂に終わりました

ルッテ首相は「イギリスのEU離脱の後、そしてアメリカ大統領選後、オランダがポピュリズムという誤った流れを食い止める夜になった」と勝利宣言しました。一方で、「反イスラム」を掲げる「自由党」も議席を伸ばし、別の反EUを掲げる政党も2議席を獲得するなど、依然として反既成政治の世論は残っており、油断はできません。

5月 フランス大統領選挙

5月には2017年最大の政治イベントとも言われるフランス大統領選挙が行われました。

フランスでは、2015年にはパリで、2016年にはニースで移民によるテロが発生するなど治安が問題になっている他、2009年アメリカのリーマンブラザーズ破産による恐慌以来の不況が問題になっていました。そのため、反移民の機運が高まり、反EU反移民を掲げる極右政党「国民戦線」のルペン氏に支持が集まるのではないかという懸念がありました。

もし仮にフランスで極右政権が誕生すれば、その影響はオランダの比ではありません。特にイギリスは、昨年の国民投票以来EUを離脱する路線を堅持しているので、さらにもしフランスがEUを離脱すれば、EUはその存在意義を大きく損なうことになると言われていました。 

結果として、新興政党「前進!」党首で、オランド政権で経済担当大臣を務めた親EUのマクロン氏とルペン氏が決選投票に進み、マクロン氏が60%超得票して圧勝しました。

さらに続く国民議会選挙でも、マクロン氏率いる「共和国前進」は577議席中306議席を占める大勝利を果しました。その結果、共和国前進は大統領ポストも議会多数派も握ったことになり、マクロン大統領は立法から外交まで影響力を行使することのできる強い大統領となりました。

現在マクロン大統領はアメリカのトランプ大統領に強く物を言う姿勢など外交で注目されていますが、これからは内政において不調の経済を立て直すかが問われることになります。

6月 イギリス下院選挙

6月にはイギリスで下院選挙が行われました。メイ首相は、野党がEU離脱に反対しており、そのことが対EUの交渉力を損なっているとして批判し解散理由としましたが、実際には労働党の支持率が低いうちに解散総選挙を行うことで、EU離脱以外の政策においても自身の影響力を強めることが目的であるという見方が最も説得的です。

当初は、労働党は「ジェレミー・コ―ビンのイギリスを改革する10の誓い」と称するマニフェストを発表したものの支持には結びつかず、メイ首相率いる与党保守党が大幅に議席を増やす見込みでした。しかし、テロの後、メイ首相自身が内務大臣時代に警察予算を減らしたことなどについて批判され、さらにはメイ首相を「嘘つき」であるとひたすら糾弾する歌がイギリスの音楽チャートで1位につけるなど、保守党への批判が高まっていきました。

その結果、メイ首相率いる保守党は、当初の330議席から単独過半数を下回る317議席(全650議席)まで減らしてしまいました。統率力を強化するどころが逆に統率力を落とす結果となり、EU離脱も、国内の様子を伺いながら進めることになりそうです。現在、メイ首相は過半数確保に向け連立交渉を進めています。

9月 ドイツ連邦議会選挙

9月下旬にはドイツでも連邦議会選挙が行われます。メルケル首相率いるCPD(キリスト教民主同盟)は苦戦すると、当初は見られていました。というのも、メルケル首相が、武力紛争が続くシリアやアフガニスタンからの難民の受け入れに積極的で、それにより難民との間でトラブルが増えることへの不安・不満が国民の間で高まっていたからです。そのことにより、ドイツでも移民・難民排斥を訴える極右政党AfD(ドイツのための選択肢)が台頭することが懸念されていたのです。

しかし、今年に入って極右台頭の懸念は大きく沈静化しました。それどころか、与党CPDは最大野党SPD(ドイツ社会民主党)に対しても優位を保っています。特に、連邦議会選前哨戦に位置づけられたノルトライン・ウェストファーレン州議会選挙では、与党CDUが勝利し、連邦議会選挙に向けて弾みをつけました。また、極右政党AfDは議席を得たものの、当初の想定以上に低迷しました。

そのため現在は、9月下旬の選挙でも与党CDUが勝利するだろうという楽観的な見方が広がっています。

政治不満は高まりつつある

2016年はイギリスのEU離脱を問う国民投票、アメリカの大統領選挙と、主要国で予想外の結果が続きました。

2017年に入ってもこのような動きは続くかと思われましたが、結局、オランダ、フランスと「極右」あるいは「ポピュリズム」といった動きはそれほど大きな動きを見せませんでした。一方で、政治への不満は一段と高まっており、イギリスにおける労働党やフランスにおける共和国前進など、より穏健な選択肢が選ばれているように見えます。

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齋藤 貴

齋藤 貴

ペンネーム。23歳大学生。大学では政治学を専攻。テレビドラマ『相棒』が大好きです。

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