2017年の一大政治イベントとされるフランス大統領選は、二大会派と極右勢力の戦いという当初の予測から大きく外れたことで話題になっています
フランソワ・オランド現大統領を輩出した左派陣営から出馬するブノワ・アモン氏は歴史的不人気に陥り泡沫候補になり、ニコラ・サルコジ前大統領を輩出した中道右派陣営からフランソワ・フィヨン氏はやや盛り返しつつありますが、スキャンダルにより低迷するなど、苦戦しています。
移民批判を繰り返す極右政党国民戦線からマリーヌ・ルペン氏やかつてオランド大統領と同じ社会党に所属しながら今回新たに政党を作って立候補したエマニュエル・マクロン氏といった台風の目も別のスキャンダルで勢いに陰りを見せています。このように有力候補がスキャンダルなどにより失速する中有力候補として浮上したのが、左派のジャン=リュック・メランション氏です。その結果、マクロン、ルペン、フィヨン、メランションという四つ巴の戦いになっているのです。
今回のこの記事では、当初の見込みから大きくはずれたフランス大統領選の注目ポイントをお伝えします。
今回の大統領選の争点は、大きく治安と経済です。治安については、2015年にはパリで、2016年にはニースでテロが発生するなど、パリのテロ以降230人もの人が犠牲になっています。そのため、いかにして治安を改善するか、移民問題にどう対応するかというのが1つの焦点になっています
一方、経済については、フランスは2009年アメリカのリーマンブラザーズ破産による恐慌以来、不況から抜け出せていません。オランド政権が景気を回復させられなかったため、この問題は次期政権に重くのしかかることでしょう。そのため、各候補は経済政策を競っています。
フランス国内では当然、大統領選が盛り上がっていますが、今回のフランス大統領選は世界的にも盛り上がっています。というのも、フランスに極右であるルペン大統領が誕生するのではないか、という懸念があるからです。ヨーロッパでは既にイギリスがEUからの離脱の意思を示す国民投票を可決させていますが、もしルペン氏が当選した場合、「フランスもEUから離脱し、EUの存続に打撃を与えるのではないか」と考えられています。また、ルペン氏は、外国人の社会保障や公共サービスの制限を主張しており、そのことは外国人も国民と同じサービスを受けられるようにすべきと考える人たちから批判されています。
上記の通り、フランスでは相次ぐテロにより、移民や難民への不信感を増大させることになっています。ルペン氏はその不信感を煽ることで、支持を獲得しているというわけです。
ルペン氏の台頭を許しているものとしてもう1つの理由に、二大陣営の不振が挙げられます。フランスには、オランド現大統領が所属する社会党やサルコジ前大統領が所属する共和党など、いくつか政党がありますが、大統領選挙においては、社会党を中心とした左派陣営と共和党を中心とした中道右派陣営に分かれ、それぞれ予備選挙を行って候補者を決めるが通常です。
今回の選挙では、両方の陣営が揃って支持獲得に苦しんでいるのです。オランド現大統領を輩出した左派陣営は、公約としていた経済再建に失敗した他、同時多発テロへの対応に失敗したことにより、当初から苦戦を強いられています。今回左派陣営の候補はアモン氏に決まりましたが、オランド大統領による不人気を打ち消すには至らず、今では泡沫候補のような扱いとなってしまいました。
一方、サルコジ前大統領を輩出した右派陣営の候補者であるフィヨン氏は、「スタッフとして働いていない妻に議会予算から給料を支払った」という疑惑がつきまとい、支持が伸びません。
こうした理由から既成政党への支持が伸びず、第三極の存在だったマクロン氏が一躍有力候補として台頭しました。マクロン氏は銀行副社長を務めた後2012年オランド大統領の経済顧問に就任し、その後経済担当大臣に就任。昨年、大統領選への出馬が噂される中で経済担当大臣を辞任し、新党「前進!」を結党し、今回の選挙で出馬を表明しています。現在39歳で最も若い候補者です。
しかし、マクロン氏も特定の企業に対する「えこひいき」が問題になり、人気に陰りを見せています。この間、台頭したのが同じく左派のメランション氏です。台頭したのがつい最近ということもあり、現時点では大きな失点は見られません。こうしてメランション氏も加わり、「四つ巴の戦い」の構図が出来上がったのです。
現在、マクロン氏とルペン氏がほぼ同率で、フィヨン氏とメランション氏が追い上げる形となっています。とは言っても、その差は3-4ポイント程度であり、誰が勝つかは全く予想できません。加えて、今回の選挙は相次ぐスキャンダルによって政治不信が高まっているため、投票に行かない有権者が続出すると考えられています。世界は最後までフランス大統領選から目が離せなさそうです。
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