
数々の大統領を生んだ共和党、社会党の候補は決選投票に進めず、極右の国民戦線のルペン氏と新興政党「前進!」のマクロン氏によって決選投票が争われたフランス大統領選挙は、結局マクロン氏が66%の得票を集めて終わりました。
マクロン氏は1977年生まれの39歳。今回、史上最年少でのフランス大統領就任となりました。父親は神経学者、母親は医師という家庭に育ち、パリ政治学院や「フランス随一のエリート官僚養成学校」と言われる国立行政学院など名だたる名門学校を卒業しています。
その後、フランス財務省に勤務し、2008年にはロスチャイルド銀行に転職。副社長格にまで昇進しています。銀行を辞めた後に政界に入り、社会党のオランド大統領の下で側近をつとめ、2014年に経済相に就任しています。在任中には、年間5回に制限されていた商業施設の日曜営業の拡大、長距離バス路線の自由化など、規制緩和を進める「マクロン法」と呼ばれる法律を可決させています。
プライベートでは、25歳年上の妻ブリジット氏の存在が注目を集めています。高校時代の教師であったブリジット氏は既婚で3人の子どもがいましたが、当時17歳のマクロン氏が猛アタック。10年後に見事ゴールインを果たしています。
政治経験はわずか4年で、議員としての経験が全くないマクロン氏。今後の手腕が注目されていますが、おそらく世界各国の、特にヨーロッパの首脳はマクロン氏当選の結果を受けて、安堵したことでしょう。それは、フランスがEUから離脱する可能性がほぼ無くなり、従来通り穏健な外交を展開すると考えられるからです。
しかし、フランス国内を見てみるとまだ選挙は終わった訳ではありません。今年の6月には国民議会(下院)選挙があるからです。
今回、マクロン氏は「大統領」として選出されました。「大統領」は強大な権限を持ちます。しかし、フランスではそれと並んで「首相」が存在し、内政について広範な権限を持っているのが特徴です。
形式上は大統領が首相を任命しますが、実際には、下院多数派の支持を得なければなりません。そのため、大統領と対立する政党が過半数を占めている状況で、マクロン氏に敵対的な首相を任命せざるを得ない場合には大きな問題となります。これを、「コアビタシオン」と言い、大統領であるマクロン氏の活動が制限されることになるのです。
日本で言えば「ねじれ国会」のようなものです。その場合、マクロン氏は下院多数派に大きく妥協しなければならなくなるでしょう。
マクロン氏に立ちふさがる壁はまさにここにあります。マクロン氏を支持するのは今のところ新興政党「前進!」のみです。
現在、下院の577議席のうち、オランド大統領を輩出した与党社会党が292議席、サルコジ前大統領を輩出した野党社会党が199議席を占めます。2016年にマクロン氏によって設立された「前進!」の議席は0です。そのため、マクロン氏は6月の下院選で0から過半数の議席を獲得しなければならないことになります。
しかし、マクロン氏は国民的人気を誇っている訳ではありません。というのも、大統領選の最初の投票では24%を得ているに過ぎず、国民戦線のルペン氏は21%、共和党のフィヨン氏も20%弱獲得しています。さらには、決選投票では、マクロン氏にもルペン氏にも投票しない「棄権投票率」が調査会社によると25%にも上っています。一選挙区につき一人を選出する小選挙区制を採っているため、実際の議席がこの割合で配分される訳ではありませんが、混戦は必至でしょう。
こうした理由から、6月の下院選挙で反マクロン派が過半数を占め、マクロン氏と敵対する首相が任命される可能性が十分あり得るのです。フランスの選挙はまだ終わっていません。6月の下院選挙に要注目です。
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