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小池百合子知事の言葉の深読み

2016/9/28

児玉 克哉

児玉 克哉

(都庁HPより)

(都庁HPより)

小池百合子都知事はマスコミ受けするキャッチフレーズを連発し、「小池劇場」と言われている。小泉純一郎元首相が、郵政民営化解散総選挙で人々をあっと驚かせた刺客戦略は「小泉劇場」と呼ばれた。都知事選でも確かにパフォーマンスはあったが、小型の「小泉劇場」が「小池劇場」かと思われた。しかし、都知事選からわずかに2ヶ月で、築地市場の豊洲移転問題での驚きの展開や東京オリンピックの会場の幾つかは根本から見直す可能性も示唆するなど、「小池劇場」は「小泉劇場」に勝るとも劣らないインパクトで開演している。

小池知事の放った言葉やキャッチフレーズは考えると、なかなか意味深だ。小池知事がそこまで考えているのか、深読みすぎているのかわからないが、なかなかの言葉使いだ。まとめてみよう。

 

*崖から飛び降りる覚悟

これは「清水の舞台から飛び降りる」覚悟からの言葉だ。清水寺は京都にある有名な寺だ。ここには高い崖に張り出して作られた舞台がある。江戸時代には実際に飛び降りる人がかなりいたようだ。観音様を信じてその崖から飛び降りると所願成就のときに怪我をせずに済むとされた。結構高い崖だが、その当時には木も茂っており、それらに引っかかって生存する人の方が多かったようだ。これには失敗した時用の意味がある。つまりうまくいかず死んでしまっても、成仏できるといわれたのだ。思い切って飛び降りれば、仏の加護があれば生きて、成功する。失敗して死んでしまっても、成仏するのだから、とにかく思い切りいこう、ということだ。

確かに、小池氏が知事選に立候補を表明したときは、誰も手を挙げておらず、その後の展開はわからなかった。自民党にも相談なくの立候補だから、討ち死にする可能性も高かった。結果は所願成就で知事選に勝ったが、敗れて政治生命が終わる可能性はかなりあった。敗れても「成仏」という気持ちだったのかもしれない。

 

 

*希望の塾

小池氏は知事に就任してから、築地市場の豊洲移転を延期した。すると様々な問題が吹き出してきた。まさにパンドラの箱を開けてしまったのだ。パンドラの箱はギリシャ神話の話だ。ゼウスは「この箱は大切なものだから絶対に開けてはいけない」と意味深なことを言ってパンドラに箱を渡した。そう言われて開けない人はほぼいないわけで、パンドラは開けてしまう。すると、悲しみ・恨み・病気・死・盗み・裏切り・不安・争い・後悔 ・・・・などなどいった悪の要素が吹き出してきたという。しかし、箱に最後に残ったのは「希望」であったという話だ。東京都の開けてはならない箱を開けてしまい、大変な問題が吹き出してしまったが、最後には「希望」が残っている、ということから、希望の塾を作ったのではないかと推察する。パンドラの箱を開けてしまったて問題が噴出しているが、収拾がつかないわけではない。残った希望とともに新たな未来を創る、という意欲を示したものだろう。

 

*7人の侍

小池氏は知事選で、自民党公認が取れない状態での出馬となったので、自民党は党所属の議員が小池氏を応援することを厳しく禁じた。家族、親戚までも応援してはならないというお達しを出した。これはあまりにやりすぎだと自民党の評価を下げたが、この厳しいお達しに反して、小池氏を応援した議員がいる。衆議院議員では若狭氏であり、区議では7人の議員であった。若狭氏には自民党本部から口頭での厳重注意という極めて軽い処分があった。しかし7人の区議には離党勧告という厳しい処分が送られている。

小池氏はこの7人の区議を「7人の侍」と呼び、彼らの支援を称えている。「7人の侍」は言うまでもなく、黒澤明監督の日本が世界に誇る映画作品だ。たまたま7人であったということだろうが、映画のストーリーから様々な意味が汲み取れる。確かに7人の侍が主人公ではあるが、彼らの手法は、村民を組織し、鍛え上げ、村民が中心となって野武士集団をやっつけるというものだった。

小池知事は、都民が中心となって野武士集団ならぬ利権集団を叩きのめすために、7人の侍が力を貸すということをイメージしたのではないか。あくまで中心は都民だ、ということを区議を7人の侍に例えることで示したのではないだろうか。もしそうならなかなかよく考えられたネーミングだ。

 

*リットン調査団

都政改革本部初会合の冒頭挨拶で小池都知事は、「リットン調査団でここに入っているわけではない。戦後のGHQとして都庁に乗り込んでいるわけではない。」とリットン調査団の名前をいきなり出している。なぜ?と聞きたくなるほど意外な名前だ。リットン調査団とは、戦前、満州事変の際に、満州に入った調査団のことだ。リットン卿というイギリスの人が調査団長で、リットン調査団と呼ばれている。リットン調査団は、満州における関東軍の暴走を厳しく批判し、日本の主権を認めないという報告書を提出している。関東軍は、陸軍参謀本部と連携して、日本政府の意思に反して満州支配の戦略などを実行していく。

驚かされたのは、豊洲移転に関わる技術者グループが存在し、関東軍と呼ばれていたという報道だ。まだよくわからないが、おそらくその名前と存在を小池知事は聞いていたのだろう。リットン調査団の名前は、都庁内の「関東軍」と呼ばれる技術集団に対して使われたものだろう。相当に意味深だ。

 

*都民ファースト

都民が一番ということだが、レディファーストからつけられた言葉だろう。アメリカ大統領選の共和党候補のトランプ氏がアメリカファーストと言っている。トランプ氏はアメリカ第一主義だが、自分は都民第一主義だと主張するのだろう。

舛添前知事のトップリーダーはファーストクラスに乗るのは当然、という言葉にもかけているようにも思える。小池知事はリオオリンピックにはファーストクラスを使わずに、ビジネスクラスで行っている。政治家はファーストではない。あくまでも都民がファーストだ、というイメージを重ね合わせているように思える。都民が第一ということと、都民にはファーストクラスのおもてなしの発想がある、ということを印象づけたいのではないか。

ちょっと深読みしすぎているようにも思えるが、幾つかはあたっているようにも思う。なかなかすごい言葉使いだ。

※本記事は「行動する研究者 児玉克哉の希望ストラテジー」の9月28日の記事の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。

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児玉 克哉

児玉 克哉

三重大学副学長・人文学部教授を経て現職。トルコ・サカリヤ大学客員教授、愛知大学国際問題研究所客員研究員。専門は地域社会学、市民社会論、国際社会論、マーケティング調査など。公開討論会を勧めるリンカーン・フォーラム事務局長を務め、開かれた政治文化の形成に努力している。「ヒロシマ・ナガサキプロセス」や「志産志消」などを提案し、行動する研究者として活動をしている。2012年にインドの非暴力国際平和協会より非暴力国際平和賞を受賞。連絡先:kodama2015@hi3.enjoy.ne.jp

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