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韓国でストライキの波~労働争議の負のスパイラルに入り込んだ韓国の苦悩

2016/9/28

児玉 克哉

児玉 克哉

韓国は今、幾つかのストライキで部分的ながらも機能不全に陥っている。韓国経済は厳しさを増しているが、ストライキ実行などによる労働争議の激化は負のスパイラルを引き起こしている。韓国経済は一時的な景気の低迷だけでなく、構造的な問題にぶち当たっているといえる。

まずは韓国最大の自動車メーカーの現代自動車の労組によるストライキだ。現代自動車グループは急速に売上台数を増やし、2015年度の販売台数では世界の5位にランクインしている。韓国第2位の起亜自動車も現代自動車の傘下にある。さらに世界の頂きにも挑戦しようかというところまできたが、最近の状況は悪化している。日経新聞(2016年1月26日)によれば、「韓国の現代自動車が26日発表した2015年12月期連結決算は純利益が6兆5090億ウォン(約6360億円)と前の年に比べ15%減った。3年連続の減益」となっている。現代自動車は北米で売上をのばし、最近は中国での販売増が大きかった。しかし、中国での販売が急速に落ち込み、利益は縮小している。この状態でストライキが長期化し、賃金アップということになれば、現代自動車グループは厳しい状況に追いやられる。こうした問題から逃れるために工場の海外移転も進められている。現代自動車グループのストライキは、下請け企業の経営も悪化させている。部品などの納品が延期される状況が続けば、倒産もありえる状態になっている。

さらに鉄道、地下鉄、国民健康保険公団などの労働組合は、9月27日午前9時から成果年俸制反対などを掲げ無期限一斉ストライキに入ったこともハンギョレ(9月28日付)などが報じている。特に交通網・輸送網の停止は経済に与える影響は大きい。

ユ・ハラ(8月23日付)は「二大労総の金融・公共部門労組が政府の成果年俸制強制導入に反対する連鎖ゼネストが9月22日に始まり、 韓国労総金融労組は9月23日、7万規模のゼネスト集会を開いた」ことを報じている。

驚かされるのは、造船業界もストライキを計画していることだ。現代重工業グループ造船3社労組は8月末にストライキを計画していたが、中止されている。なくなったわけではなく、今も準備されている。2016年のストライキ賛否投票結果では、3社すべて投票者の90%以上の圧倒的賛成で可決している。

韓国は、労働運動が厳しく規制されていたが、1980年代後半から民主化を実現し、労働運動が活力を増した。現在の民主労働運動は、その当時から非合法運動を闘い抜いてきた人たちを幹部として出来上がったものだ。まさに労働闘士だ。製造業の正規労働者を中心にして成長を遂げた。90年代以降は韓国は民主化とともに、経済発展を続ける。労働組合がストライキをすれば、賃金が上がるという構図ができ、それが一般化されてきた。時代に適応しにくい硬化体質があることは否めない。日本ではストライキは非常に少なくなっているが、韓国では今でも「戦う労組文化」が健在だ。そうは言っても、労働組合の組織率は落ちており、以前ほどの影響力は消えつつある。労組としては、ここで妥協的態度を取ると労組の生き残りができないという危機感もあるのではないか。経済が低迷する今も、強きの戦略を打ち出している。

韓国経済が急発展しているときはこの強きの戦略はプラスの部分も大きかったが、現在の景気低迷期においては、負のスパイラルに入ってしまった。正規社員の権利を守るために、若年層が正規社員になれず、若年層の失業率や非正規社員率が高くなっている。また企業は韓国の労使関係文化を嫌って、海外に工場移転などを行いつつある。

日本の労働組合は、戦後に活動の中心だった人が労働組合を先導し、60年代、70年代と労使対立路線を突っ走った。それから世代交代も始まり、90年代には「和合する労組」となった。韓国もおそらく最後の戦いの時期になっているのかもしれない。しかしこの「最後の戦い」が長期化すると、韓国経済は厳しい停滞の時期に入るかもしれない。政治の混迷、社会の混迷、経済の混迷が一気に到来しつつある。

※本記事は「行動する研究者 児玉克哉の希望ストラテジー」の9月28日の記事の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。

 

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児玉 克哉

児玉 克哉

三重大学副学長・人文学部教授を経て現職。トルコ・サカリヤ大学客員教授、愛知大学国際問題研究所客員研究員。専門は地域社会学、市民社会論、国際社会論、マーケティング調査など。公開討論会を勧めるリンカーン・フォーラム事務局長を務め、開かれた政治文化の形成に努力している。「ヒロシマ・ナガサキプロセス」や「志産志消」などを提案し、行動する研究者として活動をしている。2012年にインドの非暴力国際平和協会より非暴力国際平和賞を受賞。連絡先:kodama2015@hi3.enjoy.ne.jp

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