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小池新党は東京ローカルパーティとして立ち上げか~小池知事の都議会自民党包囲網戦略

2016/9/26

児玉 克哉

児玉 克哉

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小池知事は今、都民からの支援とメディアからの高評価で進んでいる。築地市場の豊洲移転は予想以上の大問題に発展しつつある。しかし今までのところはこの問題も小池知事への追い風だ。都議会自民党は豊洲市場への移転を積極的に推進してきた。小池知事が8月31日に豊洲移転延期を発表したときは、都議会自民党は今後生まれるであろう多額の補償金やスケジュールの遅れなどを都議会で追求し、徹底抗戦の構えであった。しかしその後、次々と豊洲市場の問題点が明らかになり、安全への十分な配慮がないままに進められてきた豊洲移転の計画そのものが見直される事態になっている。責任者追求にも発展しつつある。「利権」問題も絡んでいる可能性があり、都議会自民党は完全に守勢に回ることになった。豊洲移転延期で小池知事を責めるのはほとんどできない状況だ。

しかし、小池知事は「展望」を作らない限りは豊洲移転が泥沼に入り込むと自らの問題にもなる。確かに豊洲市場問題は前任者たちの責任ではあるが、問題があまりに大きく、新知事も新たな展望を描き、成果をださなければならない。泥沼にはまり込むと、小池知事への追い風は徐々に向かい風になる可能性がある。泥沼にはまらないためにも、都議会のコントロールを得ることは重要な課題となる。都議会の127議席中小池知事の与党はかがやけTokyoの3議席のみだ。中立会派の東京みんなの改革や東京維新の会なども小会派だ。自民党は圧倒的で60議席ある。自民党と完全な敵対関係になれば、議会はデッドロックに陥る可能性がある。

すでに都議会自民党を中心とした自民党都連は小池知事への挑戦状を叩きつけた。小池氏の応援をした区議へ離党勧告を送ったのだ。最も注目された若狭衆議院議員は自民党本部からの処分として、二階氏からの口頭で厳重注意で終わり、衆議院東京10区補選にも自民党公認となる予定だ。それに比べ、東京都連の区議へ離党勧告は非常に重い。東京都連としては小池知事を容認するわけには行かないというところだろう。

しかし自民党都連は厳しい状況に追いやられている。そもそも小池氏は自民党ベテラン衆院議員であったわけで、なぜあえて別候補を擁立したのか。都知事選の後、自民党都連の従来型の手法に批判が起きている。東京五輪や築地市場の豊洲移転に関しては内田都議の疑惑も報道された。特に都議会自民党が推進してきた豊洲市場移転では問題が噴出している。都議会定例会がまもなく始まるが、小池知事対都議会自民党の戦いでは圧倒的に知事有利の状態だ。小池氏の応援をした区議への離党勧告は小池新党を作る口実を与えたようなものとなった。彼らが自民党に留まると小池新党を作るのも憚られるが堂々と小池新党の準備ができる形になった。

すでに二つの動きが注目されている。小池塾「希望の塾」が始まり、政治団体「都民ファーストの会」が作られた。「希望の塾」の命名はパンドラの箱に由来しているのだと推察している。小池知事はパンドラの箱を開けてしまった。ただ残ったのは「希望」だ、というのだ。来春の新党結成の秒読みとなった。小池知事は都議会自民党に対して二つの戦略で向かう。つまり来年の都議選で、自民党の議席を減らすことと都議会自民党内に小池シンパを作ることだ。特に前者のためにはローカルパーティとしての小池新党が必要だ。

ただ小池新党だけでは議会過半数をとることはほぼ無理だろう。民進党や公明党、共産党、生活者ネットワークなどとの連携も必要になる。共産党だけでなく、民進党や公明党も豊洲市場の問題究明に積極的になっている。蓮舫民進党代表は小池知事にエールを送っている。つまり都議会での自民党包囲網は着々と進んでいる。

自民党本部とは東京オリンピックの準備などでも良好な関係を保つことが必要だ。小池知事も自民党籍のままでいる方が支援者への対応も含めていいはずだ。若狭議員も自民党籍のままだ。国政においては自民党の枠にいて、自民党本部と良好な関係を保ち、都議会内では都議会自民党を包囲していきながら、できるだけ小池シンパを作る作戦といえる。

小池知事の都議会でのポジションが不安視された。ほとんどオール野党に近い状況だけに議会は空転するのではないかと危惧された。しかしこの包囲網のもとでは、徐々に小池知事のリーダーシップが確立されそうだ。その意味では豊洲市場問題は、小池知事へのカミカゼであった。

カミカゼはずっと吹き続けることはない。カミカゼの去った後に、荒れた「都」を治めることができるかどうか。来年、小池知事の真価が問われることになりそうだ。

※本記事は「児玉克哉のYahoo!ニュース個人」の9月24日の記事の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。

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児玉 克哉

児玉 克哉

三重大学副学長・人文学部教授を経て現職。トルコ・サカリヤ大学客員教授、愛知大学国際問題研究所客員研究員。専門は地域社会学、市民社会論、国際社会論、マーケティング調査など。公開討論会を勧めるリンカーン・フォーラム事務局長を務め、開かれた政治文化の形成に努力している。「ヒロシマ・ナガサキプロセス」や「志産志消」などを提案し、行動する研究者として活動をしている。2012年にインドの非暴力国際平和協会より非暴力国際平和賞を受賞。連絡先:kodama2015@hi3.enjoy.ne.jp

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