小池知事対東京都議会自民党の構図がクローズアップされてきた。9月28日に始まった都議会では、熱い火花が散らされるものと予想されたが、当面は冷戦状態になるようだ。都議会自民党はヤジは飛ばさず、されとて拍手はせずというスタンスのようだ。
都議会自民党の今後を考える上で、上層部だけをみていては全体像を見誤る。政治家の構造は、会派のピラミッドだけではない。最も重要なのは個々の議員の後援会組織であり、究極的には、次の選挙で当選するか、落選するかの見通しになる。
現在は、まだ都議会自民党の組織力は強く、ピラミッド構造はしっかりとしている。ドンと称される内田茂議員が健在であり、退任したものの有力者の石原伸晃衆議院議員は内閣府特命担当大臣(経済財政政策)となっている。この状態では勝手な行動を慎む必要がある。築地市場の豊洲移転に関しては、毎日のようにテレビで報道番組が取り上げている。かがやけTokyo、共産党、民進党、維新の会などの会派の都議会議員が出演している。しかし都議会自民党からはほとんど出演がない。インタビューに対応することはあってもそれ以上はない。松本文明衆議院議員が「代理」として出演している感じだ。来年の都議会議員選挙を控え、誰も知名度をアップさせたい時期だ。しかも「利権派」のイメージではなく、都民派のイメージをアピールしたいわけで、出演依頼があれば受けたい気持ちは大きいだろう。しかし勝手な出演はなく、今のところは、統制がとれているといえる。
ただ問題は後援会だ。来年の都議会選までわずか9ヶ月になった。後援会活動もこれからどんどんとやっていく必要がある。東京は人の流動が激しく、選挙区内での「昔ながらの知り合い」は多くない。知り合いの多くは自分の選挙区でない人だ。それだけに後援会活動を地道にしてネットワークを広げることは重要だ。2013年の都議会選の時は、民主党政権が終わった後で都議会自民党には大きな順風があった。知名度も組織もあまりない人も安倍自民の熱気もあり、多くの人が当選を果たした。しかし今回は、相当な逆風が予想される。後援会は最後の頼みの綱と言える状態だ。
後援会のメンバーの多くは普通の都民だ。知り合いを通じて集まった人が多い。彼らは世間の雰囲気に敏感だ。後援会から利権のイメージを払拭すること、小池知事と友好な関係を持つこと、都政を改革することといった要求があがってくるのだ。後援会は、議員の「支援」ではなく、「指導」組織になるのだ。おそらくすでに多くの議員は、都議会自民党幹部と後援会の板挟みになっている。
小池知事は、今でも自民党を離れていない。そして自民党本部とは良好な関係を築きつつある。小池知事と選挙を戦った若狭議員は、衆議院東京10区補選では自民党公認候補となる。つまり小池知事の支援側になっても反自民というわけではないのだ。
都議会自民党の若手にとっては、来年の選挙に向けて、自民党の公認とともに小池知事シンパのイメージを得ることができればそれに越したことはない。後援会からの突き上げもかわすことができる。最高のシナリオは、自民党公認で都民ファーストの会推薦という形の実現だ。これは小池知事にとっても悪い話ではない。都議会自民党の中にも小池シンパを増やすことは重要なことだ。
私は徐々にこの方向に進まざるを得なくなるのではないかと思う。小池シンパに入らない都議会自民党の議員の選挙区には、都民ファーストの会からの刺客がたてられるということになるだろう。
議員は地元の後援会の声に敏感にならざるをえない。そして次の選挙での当選の可能性を高めるための方向を見極めなければならない。政治の世界、選挙の世界は冷酷だ。それまでの「ボス」が一気に裏切られることも日常茶飯事だ。世論と後援会の声におされて、状況は大きく変化するのではないか。一つのキッカケは東京10区補選の若狭議員への選挙支援だ。少なくとも何名かは小池シンパにはいる可能性がある。年があければ、さらに増えていくだろう。来年の都議会選挙のあとは都議会自民党は小池与党になる可能性もある。「それは絶対ない」という評論家もいるが、それだけ節操のないのが政治の世界だ。自民党を除名された舛添要一氏が簡単に自民党支援の候補者として自民党系都知事になったのは数年前のこと。それに比べれば、もっとリアリティがある。
※本記事は「行動する研究者 児玉克哉の希望ストラテジー」の9月29日の記事の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。
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