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厚生年金負担が零細企業を潰して、景気が更に悪化するんじゃないの。

2016/9/5

清谷 信一

清谷 信一

パート時給、秋に急上昇へ 1000円時代が到来
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO06785260S6A900C1EA1000/

> パート・アルバイト賃金が今秋、大幅に上昇しそうだ。年末の繁忙期に向けた人手確保が始まるなか、10月に社会保険の適用拡大と過去最大の最低賃金の引き上げが重なるためだ。時給相場は1000円以上が定着する見通し。非正規の待遇改善が着実に進む一方、負担の増える採用企業の間では「10月危機」との声も上がる。
> 年収130万円未満の短時間労働者は、社会保険(健康保険や厚生年金)の対象外で保険料を払う必要がなかった。一部はこの「130万円の壁」に合わせ労働時間を調整してきた。10月からは従業員501人以上の企業で週20時間以上働き、年収106万円以上などの条件を満たす人が社会保険の対象に加わる。

厚生年金負担が零細企業を潰して、景気が更に悪化するんじゃないの。

実際問題として、アルバイト以前に社員の厚生年金も零細企業には難しいです。
例えば、実質家族経営の5名の会社で、役員が親族、社員が二人だった場合、会社の負担は極めて大きいです。
厚生年金は社員が半分、会社が半分ですが、自営業の会社の役員は実質的に社員の2倍の保険料を払うことになります。
換言すれば社員の半分しか年金が貰えない。であればその分を現金でもらったほうが宜しいわけです。先の例であれば、社員ひとりの厚生年金負担を20万円とすれば2人で40万円ですが、会社全体では200万円になります。役員にしてみれば、200万円は丸損になると見えます。
実はこの手の家族経営的な零細企業が多いわけです。
厚生年金全加入を強要されれば、多くの理髪店や美容院、アパレルメーカーが潰れるか、解散せざるをえないという報道もありました。

ちゃんとカネが払えない会社は潰れろと、内閣参与の大田弘子さんあたりは嘯いていますが、本当にいいですかね。
実際問題は中小零細企業、特に零細企業は合理化しようにもなかなかできないのが、現実です。
実は合理化できるというのは多少なりとも余裕がある企業です。自分の経験からもギリギリで回していた時代は、目先の仕事をこなして、目先の売上をあげることで精一杯でした

戦略的に物事を考えて、ある程度の予算を組めないと、合理化はなかなかできません。更に申せばその合理化案が失敗することもあるわけで、それもなんとかなるだけの余裕がないと無理です。商売したこともない学者のセンセイが、畳の上の水練で御託並べるようには行きません。
無論ゾンビみたいな企業も多くありますが、それと中小零細企業が一般に抱える問題はわけて考えるべきでしょう。ある程度の危機を脱すれば業績が良くなる企業も少なくありません。
特に起業したばかりの会社は、計画通りに行かずにつまずくこともあります。それは経験不足や社会環境のなどの変化などによりますが、安易に儲からない会社は潰せと、潰して後から続々会社が増えますか。

日本での起業はかなりハードルが高いですし、起業自体が減っております。それに倒産や廃業になれば失業者に失業手当を払わないといけません。これは国の負担です。役員は失業手当がでません。当然ながらこれらの人たちの消費は激減することになります。
更に厚生年金の重い負担が、新しい企業にとっては大きな負担になって事業が軌道に乗る前に潰れてしまうことになるでしょう。そうなればただでさえ低い新企業の生存率は更に低くなるでしょう。何しろ設立3年で9割の企業が潰れるという話もあります。

安倍首相は倒産が減ったと胸を張っておりますが、実は倒産するにもカネがかかります。そして自主廃業やら、夜逃げやらは「倒産」の統計に入っておりません。実質的な倒産は安倍政権になってから増えていると見たほうが正しいでしょう。厚生年金負担が零細企業を潰して、景気が更に悪化するんじゃないの。

厚生年金は大企業を基準にしたシステムといえます。
ほとんど自営業である零細企業に対して厚生年金は極めて大きな負担です。同じ法人といっても大企業と、実質家族経営やそれに近い零細企業は全く別の存在です。

例えば、小企業は企業と社員の負担の3割を国が持ち、零細企業は5割国が持つとか、厚生年金に加盟を条件に法人税を20パーセントに減額するとか、何らかの優遇措置が必要でしょう。減税に関していれば、大企業は各種控除で殆ど払っていない企業もあります。逆に過剰な大企業向けの控除は減らし、その分を中小企業向けに減税財源にすべきです。

現在の大企業を想定した厚生年金のシステムのまま、これを中小零細に押し付けるのでれば、倒産激増で、雇用も大きく減るでしょう。建前論よりも現実をみるべきです。
また政府の統計は社員数が10名以上、低くても5名以上の企業からしか取りません。ですが本当は10名以下、5名以下の企業が数の上ではマジョリティです。統計もとらず、それがあたかも存在しない、あるいは小数点以下として切り捨てるような考えでまともな産業振興、経済対策が可能でしょうか。零細企業に対する調査や実態把握に力をいれるべきです。

※本記事は「清谷信一公式ブログ 清谷防衛経済研究所」の9月3日の記事の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。

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清谷 信一

清谷 信一

軍事ジャーナリスト、作家。 1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003~08年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。 著書:『国防の死角』(PHP)、『専守防衛』(祥伝社新書)『防衛破綻──「ガラパゴス化」する自衛隊装備』(中公新書ラクレ)、『自衛隊、そして日本の非常識』(河出書房新社)、『弱者のための喧嘩術』(幻冬舎アウトロー文庫)、『こんな自衛隊に誰がした!--戦えない「軍隊」を徹底解剖』(廣済堂)、『不思議の国の自衛隊--─誰がための自衛隊なのか!?』KKベストセラーズ)、『ル・オタク--フランスおたく物語』(講談社文庫)、『軍事を知らずして平和を語るな 』(石破 茂氏との共著 KKベストセラーズ)、『アメリカの落日──「戦争と正義』の正体』(日下公人氏との共著 廣済堂)などがある。 朝日新聞のWEBRONZA+、日経BPの日経ビジネスオンラインなどネットメディアにも寄稿。

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