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最大のサプライズとなった自民党参院幹事長の交代は「参院のドン」史上にも残る一大事!その背景を朝日・林記者&毎日・田中記者が解説

2026/9/17

選挙ドットコム編集部

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2026年9月16日公開の「選挙ドットコムちゃんねる」では、自由民主党役員人事を大特集!今回の党役員人事で最大のサプライズとなった参議院自民党幹事長の交代、その背景にあった高市総理と参議院自民党の距離感、それぞれの関係性について朝日新聞DEEP POLITICS編集長の林尚行記者とMCの毎日新聞政治部の田中裕之記者が解説します。

MC田中記者:なんと言っても、サプライズが今回は参議院だったというのは、一般の視聴者や読者には解説しないと深みがわからない、マニアックなところにサプライズが起きました。参議院幹事長が石井準一さんから青木一彦さんに変わったということで、どのようなことが起きたのかという話ですね。

石井さんは高市早苗総理と距離があるということで、その人事が焦点でした。距離がなぜ生じたかというと、石井さんが少数与党の参議院予算審議で野党に配慮した結果、高市総理が目指していた当初予算の年度内成立が断念に追い込まれたと高市総理が見ていて周囲に「一度あることは二度ある」と言って不信感を募らせていたとされています。さらに石井さんは、予算成立後の4月に参議院自民党内で新たなグループを結成したことも官邸側の警戒感に拍車をかけており、この動きが反高市の兆しとなることを警戒していたとされています。

さらに解説が必要になりますが、党則で参議院自民党の人事権は総裁にはないんですよね。松山政司参議院議員会長が人事権を持っていて、果たして幹事長を変えるのかどうかが焦点になっておりました。結果として変わったわけですが、林さん、最初一報を聞いて驚きましたよね。

林記者:やるんじゃないかという話はありましたよね。でも本当にやるのかなと、正直なところ私は半々かそれ以下で「ないんじゃないか」と思っていたので驚きました。取材先の皆さんと何人も連絡を取り合いましたが、皆さん驚いていましたね。「本当にやったか」ということですね。(中略)

私は今回、石井さんの事実上の「更迭」と言っていいと思っているのですが、やはり「参議院のドン」の歴史に残る一つの大事件ですよね。高市政権がどうしたという人事もそうなのですが、それ以上に参議院自民党が作ってきたこの「ドン史」における最大の事件の一つになったなと。

MC田中記者:これまでドンを更迭したという歴史はありましたか?

林記者:そこは微妙でして、石井準一さんが本当にドンになっていたかというと、ここはぜひ議論したいのですが、私は「ドンにリーチをかけた状態」だったんと思います。逆に言えば、石井さんがここから本当の意味でのドンになるかならないかというのは、まだまだいろいろな意味であるんじゃないかと思っています。

参議院は総理総裁に人事を直接指名する権利がない、そこが参議院自民党の強いところで、それが参議院のドンを生む土壌になってきたのですが、それは何かと言ったら「ポスト」なんですね。ドンと言われた皆さんは全員ポストに就いていたでしょう。村上正邦さんも参院会長、青木幹雄さんは参院幹事長から参院会長、吉田博美さんも参院幹事長をやられましたよね。ポストをもとに非常に強くなって「参院のドン」になっていくという状況だったのが、今回はまさにドンにリーチをかけた石井準一さんがそのポストを奪われたんです。

でも、石井さんはやっぱり人脈は広いですし、スキルも極めて高い。その中で、彼自身が今度は「参院のドン史上初めて更迭されたけれど支配したドン」になれるかどうかという、実は潮目でもあるかもしれません。参院のドン史を見てきた林としてはたまらない状況です。

MC田中記者:「政局は参議院から起こる」という言葉もあるじゃないですか。だから参議院内の権力闘争が自民党全体の中に波紋を広げていくという側面はあると思うのですが、本当に注目だと思います。

石井さんといえば、参議院会館の地下にあるタリーズコーヒーで記者懇談会をやっていますよね。参議院会館の地下にあるタリーズは、衆議院側と違ってオープンスペースなんです。その前を国会議員や記者など皆が通る、見えるところで石井さんは記者懇談会をやるんですよ。そこで「俺は記者に囲まれて、こんな風に話を聞かれているぞ」というのを、与野党問わずみんなが認識するんですよね。

林記者:国会議員の皆さんの通り道でやっているんですね。

MC田中記者:石井さん独特だと思うのですが、記者対応も良く、私は千葉支局にいたこともあるのですが、千葉県政の担当記者でも「石井通い」をする記者は相手をしていた。

林記者:石井さんは参議院千葉県選出の政治家ですからね。

MC田中記者:そうやってある種、記者を通じて自分の権力を見せていくようなこともやっていらっしゃって、そんな政治家は他にいませんよね。つい先日もやっていらっしゃいましたから。

林記者:この石井準一さんを総理が直接「あなた辞めなさい」と言うのは、建付け上言えないことになっていますし、言ったら大変なことになります。事実上、松山政司参院会長が判断したわけですが、なぜ判断したと思いますか?

MC田中記者:複数あると思うのですが、三つお話しします。一つは、青木一彦さんを選んだという点です。同じ参院平成研(参院平成研究会)から選んだというところがあると思います。

林記者:石井準一さんは参院平成研出身で、青木一彦さんはまさに青木幹雄さんの息子さんで参院平成研です。

MC田中記者: 参議院の人事は三つの派閥で回してきた歴史があります。一つは清和政策研究会(旧安倍派)、そして平成研(旧茂木派)、もう一つは宏池会(旧岸田派)です。代々、参議院議長を含めた参院会長、参院幹事長、参院政策審議会長、参院国会対策委員長の人事を回してきました。今回の参院自民党の役員人事も、松山さんが宏池会、青木さんが平成研、末松(信介)さんが清和会、磯崎(仁彦)さんは宏池会といったように、この3派閥のバランスは維持しているんですよね。

その上で、同じ平成研の中から青木さんを選んだ。しかも青木さんと石井さんは少し距離が生じていたんです。石井さんが新しいグループを作ったじゃないですか。青木さん自身は参議院は一つのハウスであるべきだとお考えの方なので、価値観が違った。平成研の中でも青木さんと石井さんという2人の実力者の間に距離が生じていたため、松山さんはその距離に目をつけて青木さんを引き抜いてきたわけです。けれど、これって参院平成研からしたら手を突っ込まれている状態なんですよ。今日、参院平成研の議員さんに聞いたら、「これで平成研はなくなったんだ」という言い方をしていましたね。

林記者:平成研は「参院平成研」という言い方をしますよね。かつて竹下派や橋本派の時代から、衆議院と参議院にはなんとなく緊張関係がありましたよね。衆議院側が小さくなっていく中で、参議院は二つに分かれて、確かに「参院平成研の終焉」と言えるのかもしれませんね。

MC田中記者:昔は「平成研は参議院の方が強い」と言われていて、昔は額賀派でした。「額賀降ろし」の時も、吉田博美さん率いる参院平成研側から仕掛けていく動きがありました。

林記者:青木幹雄さんの時も同じでした。野中広務さん対青木幹雄さんのバトルがありましたよね。小泉純一郎内閣総理大臣が総裁選で再選する時の事件です。衆参で緊張感があっても、その中で私の知っている参議院平成研は一枚岩でした。まさに一枚岩だからこそ強かった参議院平成研の鉄の結束を終わらせたのが、青木幹雄さんの息子である青木一彦さんだったというのは、なかなか歴史は味わい深いです。

(中略)

MC田中記者:それと、青木さんを起用するもう一つのメリットとして、青木さんは石破内閣で官房副長官を務められていましたよね。現在、反・高市の動きを隠さないのは石破さんですが、来年の総裁選を見据えた時に、石破さんたちの動きを(牽制する意味で)青木さんを取り込む。

林記者:いわゆる「人質人事」のような側面もあります。

MC田中記者:また、ご本人は出馬を否定されていますが小渕優子さんも税調のインナーを離脱して消費減税に反対するなど政権と違う政策の立ち位置を鮮明にしており、「総裁選に小渕さんが出るべきだ」と期待する人もいる中で、「青木家」と「小渕家」です。

林記者:(「青木家」と「小渕家」は)切っても切れない中です。私は青木幹雄さんが引退された後も何度もお会いしていますが、口癖のように「小渕優子を総理大臣にしたい」「小渕優子を支えたい」と言っていました。継いでいる息子の一彦さんも当然その気持ちはあるわけです。

MC田中記者:小渕さんも身動きが取りにくくなる、という解説を聞いて、確かにこれはなかなかの人事だなと思います。

林記者:なるほど。ただ、いわゆる政局的な人事が行われたという見方がある一方で、少し引いた目線で見ると「二院制とは何なのか」という話にもなってくると思うんですよね。今回、結果的には高市総理総裁の意向を受けていますよね。

そうなると、松山政司さんという参議院自民党を代表する、つまり参議院という「院」も代表するような実力者のポストにいる人が、党の最高責任者である総理総裁をとったということになります。参議院自民党をめぐる状況の中で二律背反的に言われるのは「参議院を取るか、党の一体性を取るのか」というバランスの中で、参議院の存在感を最大化してきたのが「参院のドン」だったわけですが、そういう意味では松山さんは「参議院を売った人」と言えるのかどうか。そこは議論をしたいと思っています。

MC田中記者:確かにその側面はありますね。参議院で結束できるからこそ総裁がどんなに強くても参議院に配慮せざるを得ない状況を生んでいましたが、今回意向を汲んでしまったことで参院への介入を許してしまったという見方はできますよね。

林記者:もうみんなそう思っている訳です。政治の場合は事実関係も大事ですが、全体として政治のパワーバランスがどう見られているかということはもっと大事ですからね。今回のメッセージは明らかに、高市総理総裁が変えてほしいと思っていた石井参院幹事長をその意を汲んで(松山さん自身も石井さんと微妙だったことは間違いないのですが)変えてしまったことが今後の参議院の存在、参議院を代表する参議院自民党の存在を変質させる可能性があると思いませんか。

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