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高市政権が正念場!二つの誤算と「減税ショック」のリスクとは【林尚行記者×水内茂幸記者解説】

2026/7/30

選挙ドットコム編集部

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7月29日公開の「選挙ドットコムちゃんねる」では、2026年衆院選の争点ともなった食料品消費減税について大特集!特別国会閉会後も続く政党間そして自民党内の議論状況について、MCの産経新聞・水内茂幸編集長と朝日新聞DEEP POLITICS編集長の林尚行記者が徹底解説します。ベテラン政治記者2人が指摘する高市政権の二つの誤算とは?

MC水内記者:国会は閉じたとはいえ、今の焦点になっているのが「消費税」ですね。2年間限定の消費税減税をどうするか。昨今の流れを見ていると、どうも高市総理は来年4月から2年間、食料品の消費税率を1%に下げる方針を最終的に固め、自民党幹部らと話したと報道されています。僕からすれば「最初から決まっていたんだろう」と思っています。

林記者:政治取材をしていると、「既定路線」ですよね。消費減税はやらざるを得ないのだと思います。元々、選挙に勝った時の公約であり、総理が「公約は一つひとつ全部やるんです」と言っていた時から、既定路線だったとは思います。ただ、この間に色々と誤算がありましたよね。

なので、やることはやるんでしょうが、地合いはどんどん悪くなる中で突っ込んでいくことになりました。以前「選挙ドットコム」で、水内さんと「政治的エネルギーをどう使うのか問題」を議論しましたよね。

【関連記事】”全部盛り”高市政権の政治的エネルギーは残り80%?憲法改正、皇室典範、イラン情勢など今後の焦点を政治記者が解説

MC水内記者:一度の国会で一つ通すのも大変な政治案件が三つも四つもあるという話をしましたね!

林記者:当時は「年度内予算にこだわりすぎると政治的エネルギーを結構食っちゃうよね」という話をしましたが、この間かなり政治的エネルギーを食ってきている。その中での消費減税は高市政権発足以来最大の正念場とも言えると思います。政治的エネルギーをめちゃくちゃ食いますよね。

MC水内記者:本当にそうですね。

林記者:だから、その時のHP(体力)がかなり減っている中で、どう取り回しができるのかが注目です。でも、誤算があったと思いませんか?

MC水内記者:確かに、誤算はすごくあります。

林記者:そもそも「中間取りまとめ」はこのタイミングじゃなかったじゃないですか。夏前までにまとめるはずが、もう連日「酷暑」の真夏になっていますからね。1カ月遅れたわけです。

MC水内記者:これまでの国会情勢も含めて、賛成してくれそうな野党がほとんどいなくなってしまいました。誤算はいくつかあって、一つは国会の中盤から終盤ですごく荒れて、皇室典範の議論をする直前に、衆議院の定数削減や副首都の案件をめぐって与党だけでやるとなって国会が空転したあたりから国民民主党をはじめ他の野党との距離が開いてしまいました

だから「社会保障国民会議」に出ている政党も、例えば中道改革連合は「2年間の消費減税を固定的に行う」と主張していたのでもっと順調に進むはずだったのが一斉に(慎重な姿勢を示している)。国民民主党も「5%への引き下げ」を求めていましたが、現実的にはインフレを加速させる懸念もありますし、下げて上げることの負担もあるので、それなら2年間は給付金で対応すべきだと言い出してきました。要は仲間がいないという点が誤算の一つです。

二つ目の誤算は、円安がすごく進んでいることです。現在は1ドル163円台まで進み、長期金利も上がっています。

林記者:財政悪化への懸念が強まっています。

MC水内記者:今日(7月29日)行われた自民党の総務会でも消費減税の方針について議論があったようですが、3人ほど反対意見が出たそうです。その中では「市場がどう反応するか」という懸念が唱えられたと聞きます。これで財政に心配が出て、市場がさらに円安・長期金利の上昇が進むと物価が上がってしまうと、減税したところで国民の生活が全体として潤うのか。

林記者:目に見える負担軽減になるのかということですね。

MC水内記者:この議論の半分に現実的な話がある一方で、高市政権がなぜ誕生したかを考えると、こうした改革に対する期待が非常に大きかったわけですよね。

林記者:タブーなく突っ込んでいってくれるんじゃないか、良く言えば「新しい政治」への期待ですね。

MC水内記者:「絶対に手をつけられない」とされてきた消費税に風穴を開け、財務省のコントロールから脱却して主導権を握るべきだという支持層が一定数います。高市さんの支持層を分析すると、一番やってほしいことは「経済対策」です。

その経済対策も従来の自民党の財政健全化派が主導してきたやり方からガラッと変えてほしいという期待があってここまで押し上げられてきたので、高市さん本人もそれをよく理解しています。周辺を取材すると「衆院選の公約には食料品消費減税について「実現に向けた検討を加速」とだけでやるとは書いていないのだけれど、政権公約に掲げて戦ったのだから守らなければ自分たちは立っていられない」という感じで、プレッシャーを感じて実行しようとしているように見えます。

林記者:誤算という話においては、私は政策決定の進め方が、高市政権としてまだ慣れていなかったのかなと感じます。2月8日の選挙で勝利し、「社会保障国民会議」に野党まで入れて超党派にしながら全員有無を言わさず型にはめて消費減税を決め、夏までに中間取りまとめを行って、秋の国会に法案を提出する。「野党も賛成しているのだから来年4月に実施できる」というシナリオを描いて設置しました。しかし、野党を入れてしまった超党派の社会保障国民会議実務者会議が仇になっていますよね

MC水内記者:結局みんな意見が違ったんだ、という感じで終わってしまいました。

林記者:(国民民主党の)古川元久さん(私の中で非常にチャーミングなワーディングの方だと思っているのですが)は、「まとまらないことにまとまった」と表現していましたが、まさにその通りだと思います。要するに、まとまらないことにまとまるような仕組みを最初に作ってしまったのが大きな誤算です。国会が空転したことで実務者会議もできなくなり、結局、国会の与野党対立を持ち込むことになってしまった。

本来は「決めるための枠組み」「法律にするための枠組み」「国会を通すための枠組み」を分けるべきだったのに、最初からすべてごっちゃにしてしまい、国民会議の実務者会議を与野党協議の場にしてしまいました。

MC水内記者:今から思うと、何のためにこの形にしたのか、という感じになってしまいましたよね。

林記者:高市さんとしては選挙に勝ったから勢いで全部型にはめて進めようとしたのは分からない話ではありませんが、特別国会から臨時国会は長い期間の中で、コントロールできない野党を(「決めるための枠組み」の)中に入れしまうと大きなリスクになります。本来であれば国会で評議すべきような会議体を政府が主催してしまったいびつさが仇になりました。政策決定プロセスを考え直すべき時期に来ています

MC水内記者:会議に参加していない参政党なども怒っていますよね。神谷(宗幣代表)さんなどがSNS上で高市さん批判を展開しており、インフルエンサー的な発信力がネット上の世論に影響を与えています。選挙ドットコムのYouTube調査のポジネガ分析でも、以前は高市さんに対してポジティブな意見が圧倒的だったのが逆転しています。神谷さんや玉木(雄一郎・国民民主党代表)さんの発信もある程度影響してきています。高市さんにとってはすべてが逆張りとなって、マイナスに働いていると思います。

林記者:これから考えられる最大のリスクは「マーケット」です。「骨太ショック」と言われたように長期金利が跳ねて円安が進みましたが、8月上旬に政府方針を閣議決定する予定ですよね。

党内手続きに入ったところですが、ここについても私から見ると切ないです。本来的には「社会保障国民会議」を通じて野党と責任を分担するはずだったのが分担できなくなり、失敗すればすべて「高市総理個人の責任」になる構造になってしまいました。そのため今、自民党(与党)全体と責任を分担させようとしている動きのように見えています。国民会議の中間取りまとめは小野寺(五典)氏が議長を務めていますが、総理自ら時間をかけて麻生太郎さんや鈴木俊一さんらへ説明に入っています。与党として責任を分担しないと、高市政権だけで決めきれないというところまで政治的エネルギーが摩耗しているように見えます。そうした意味で、切なさを感じます。一番怖いのはマーケットです。

エコノミストの間では8月に「消費税ショック」が起きて、163円からさらに164円、165円まで円安が進むのではないかという声も出ています。長期金利も分かりません。さらに8月末には概算要求があります。「強い経済枠」などの青天井の特別枠を設け、複数年度予算を組む初めての試みをやろうとしていますが、すごいことになるかもしれません。中央省庁の人は「あそこが狙い目だよね」と言っていませんか。

MC水内記者:前はできなかったことが色々できるんだと、言っていますよね。

林記者:霞が関のマインドとしてはそこに色々と予算付けしようという考えがありますよね。すごく予算規模が膨らみ、消費減税ショックの後に概算要求ショックが重なれば、財政悪化懸念がマーケットのゲームの材料になってしまいます。円安が止まらなければ、消費減税しても「意味がなかった」ということになりかねません。どこかで修正する施策を打っていかないと厳しくなる気がしています。

MC水内記者:「骨太ショック」には高市さんも敏感になって、文言を修正したりしていますが、減税を打ち出す以上、市場からは警戒されますよね。財源も昔に比べれば税収が増えるようになっているとはいえ、目に見える形ではまだ示されていません。

林記者:租特を見直して財源を捻出すると言っておきながら具体策が出てきていません。片山さつき財務大臣なども怒っていましたよね。

MC水内記者:もう一つの懸念は「2年後に本当に税率を元に戻せるのか」という点です。今回の措置は「2年間のつなぎ」であり、その後に給付付き税額控除を導入するまでの暫定措置だと説明されています。しかし、給付付き税額控除も年収五百何十万以上の世帯には給付がない制度設計になる見込みです。そうなると、その所得層にとっては2年後に単なる増税だけになり、痛税感にもなります。さらに、2年後に再増税するタイミングの半年後には「参議院選挙」が控えています。自民党内で議論が出ているのも、2年後に税率を絶対に戻すのを条件にするという話も出ています。そこが本当にやり切れるのか。

林記者:過去の安倍政権ですら、1回で消費税率を7%引き上げられませんでした。1回スキップしたほど、消費税をどう上げるかを考え抜いていました。高市さんのおっしゃるように、消費税含めた税がその時の景気に応じてスライドできるというのは理想だと思いますが、選挙を基盤とする民主主義国家においては下げたものを上げることは相当大変です。理想は良いのですが、理想を裏打ちした制度にはなっていないという気はします。

MC水内記者:7%分下がったからといって、本当に食料品の価格が7%分安くなるのかも疑問です。そもそも小規模事業者は消費税をとっていませんので、消費者に目に見える形で値下げにはならない可能性を指摘する声もあります。ましてや物価高が続く中で、考えていたほど暮らしの中でのお金のかかり方が変わらないとなった時に、「これだけ政治的エネルギーを使ったのに効果が薄い」となれば、(政権にとって)しんどくなりそうです。

林記者:消費減税はある意味、財政ポピュリズムと言われますよね。思ったほど受けなかったというオチになった時に辛くなり、人気取りで今回施策を打つ初めてのケースになるかもしれない。

MC水内記者:衆院選の公約を守るのが責務だという意識もあるのかもしれませんが、自民党内を取材していても「消費減税は反対だ」と盛り上がっている訳ではなく、下を向きながらボソボソと「やめたほうがいいんじゃないか」と言っている人が多い感じがします

林記者:全く同感です。みんな「選挙公約にしてしまったから言いづらいけど」という感じで、オフレコベースでは「反対」という人も結構います。「表で言わないんですか?」と聞くと、「選挙で公約にしてしまったからなぁ……」という声は多いですよね。おそらく党内手続き自体はそのまま通ってしまうと思います。

MC水内記者:来年4月に実際に制度が変わった時、あるいはその決定時にマーケットがどう反応するか。

林記者:消費減税ショックを起こさないためにも、財源をどれだけ提示できるかですよね。

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