
2月19日公開の「選挙ドットコムちゃんねる」では、憲法審査会長や議長人事の裏側と、解散総選挙によって困難とみられる新年度予算の年度内成立に向けた動きを、今野忍氏と毎日新聞の田中裕之氏の政治記者2人が解説します。
毎日新聞 田中裕之記者(以下、田中記者):今野さん、憲法審査会長の人事予想が当たったって聞きましたけど
政治記者 今野忍記者(以下、今野記者):いや、だから当たってないんだよ。正確に言うと、17日に古屋(圭司)さんの名前が挙がったじゃないですか。その前に大阪のテレビ番組の打ち合わせで「憲法審査会長は今野さん、誰になると思いますか?」って聞かれたから「高市さんにとっての最適任者は古屋圭司さんだと思いますと。ただ、古屋さんは今、党四役でSPもつく選挙対策委員長っていう、党の役員会に出られる重職にいるわけだから、まさかそこを外して(憲法審査会長に)ってことはないだろうから、まあないですよね。誰になるか注目ですね」ぐらいの解説をしたんですわ。そしたら翌朝、古屋さんって出たから。俺、本当、高市さんに関しては、自分のこれまでの永田町の常識で行くと予想を外しまくるなと改めて思った。要はさ、だってないじゃん。党四役を3ヶ月で更迭みたいなこと。
田中記者:更迭みたいには見えますよね。
今野記者:ただ、更迭というよりは、もう二人で一致してるんだよね。「兄貴、お願いしますよ」と。高市さんから見た先輩であって側近でもある古屋さんだから、「あなたしか頼れません」と言って、古屋さんも「望むところ」なわけで。もう選挙終わったのに選挙対策って言っても、2年半選挙がないわけだから。よく考えたらそれよりは憲法審査会長になって、悲願の憲法改正。古屋さんといえば、安倍(晋三)さんの盟友でもあり、当選回数も安倍さんよりも上で、実はそれくらい重鎮なんだよ。あんまり役職とかで(表に)出てないけど、安倍内閣の時に拉致担当大臣とかされたり、日本会議関係の議連でも会長とかされてるじゃないですか。かなり高市さん的な、保守とか右派の人たちの色彩が強い方だから。高市さん的には憲法改正を任せる適任なんだけど、まさか党四役を外すとは思いませんでしたが、どう思いますか?
田中記者:いや、思わなかったですね。古屋さん、議長になりたい説もありましたし、憲法審査会長は考えなかったですね。議長になった森英介さんがずっと憲法審査会長だったじゃないですか。森さんもすごい憲法に意欲のある方なんで、このままいってもいいんじゃないかなって思ってました。
今野記者:そうだね。だから、より今回、憲法審査会長っていうのは、基本的には「行司役」だからね。衆院の審査会は憲法改正の原案とか作る。小さい政党は入れないけど、各党が集まって、与党と野党がフェアに審査する。で、基本は「全会一致」なんだよね。

田中記者:あ、そうです。
今野記者:全会一致だからなかなか進まないんだよね。これまではその慣習を守るのが普通だけど、古屋さんになった一番の意味は、高市さんにとって森英介さんから古屋さんに変わった最大の違いって、高市さんがいつでも電話一本で気軽に相談・指示できる。
田中記者:あ、そうだ。ごめんなさい、自民党としての憲法審査会長は、少数与党になる前は森さんだったけど、立憲が取って
今野記者:しかも、枝野(幸男)さんだった
田中記者:そりゃ進まないよって話だった。だから、枝野さんから自民の森英介さんになって(委員長ポストを)取り戻した訳で、だから前任の森さんが就くのはおかしくはないけれども、より高市さんに近い古屋さんが就いた。
今野記者:しかも四役をお役御免で外してまで、憲法改正を進める。だから一言でいうと、憲法改正に本気だってことが分かる人事ってことだよね。
今野記者:うん。そして人事でもう一つ、議長と議運(議院運営)委員長か。これすごいね。麻生(太郎)さんに(議長を)打診したっていう話は本当なんですか?
田中記者:そう、これ本当ですね。うちの同僚の取材ですけど、麻生さんに打診があったっていうのがあって。

今野記者:すごいよね、三権の長である総理大臣経験者の麻生閣下に。高市さんから見て麻生さんが邪魔だから「早く上がってください」っていう意味かなと思ったんですよ。ただ、その後色々自分でも取材して聞いてると、どうもそれもあると思うけど、麻生さんは唯一残ってる派閥のボスで、新人もリクルーティングされて党内での権力が肥大化していくシステムじゃない。政敵だった菅(義偉)さんも引退されて怖いものなしになった麻生さんを祭り上げたかったっていうのも考えられるし。もう一つは、やっぱり憲法と皇室を進めたいから、議長を力のある人にしたかったと、高市さんをかばっている人もいたけどね。
田中記者:高市さんとしてはそういう気持ちがあったかもしれない。ただ、麻生さん側からしたら、派閥のボスを務めながら議長っていうのはやりにくいじゃないですか。
今野記者:そう。麻生さんはまず(派閥から)足抜けしなきゃいけないしね。
田中記者:それに、総理大臣(と議長)をやった例は過去に一例だけ、幣原喜重郎がいるんですけど。
今野記者:三権の長の二つをやった人って一例あるんだ!それ知らなかったわ。でも、麻生さんは断りましたと。結構、麻生派の人は怒ってるでしょ?
田中記者:周りはね。それで議長は麻生派の森さん。
今野記者:そうだね。麻生さんではないけど、麻生さんの側近の一人の森英介さんになりました。この方は憲法審査会長もやってたから、古屋さんが(後任に)就く。
で、議運委員長っていう、議長・副議長に次ぐナンバー3。本会議の日程を決めたり、どの法案をどの委員会に出すかを決める、運営を仕切る権限というか権威はありますね。
田中記者:そうですね、この方も麻生派の山口(俊一)さん。
今野記者:これすごい、その前は無派閥の浜田靖一さんがやってたわけじゃないですか。高市さんは他の委員長をあえて変えてないのに、ここだけ変えてるんですよ。この意味は何なのかというと、やっぱり選択的夫婦別姓議連会長の……
田中記者:浜田さんのやろうとしてる政策と高市さんはどこかで合わない。
今野記者:あと、年度内の予算成立も浜田さんはかなり反対だったよね。普通は衆参で2ヶ月かけるものを半分なんてふざけるなっていうのがおそらく浜田さんの内心じゃん。
田中記者:そうですね、やっぱり浜田さんは「国対族」ですから。自民党の中で国会対策委員会・委員長を務めてきた人たちは国会の慣習を重んじる。野党の質問時間もきちんと確保してあげるという慣習を重んじる人たちからすると、年度内の成立ができないんですよね。
今野記者:そう。国対族、つまり国会の慣習を重んじて今まで国会の中で法案の回し方を差配してきた人たちの一派からしてみれば、自分らの権限にも関わることだし、熟議が大事だっていう大義名分もあるから。ただ、俺聞いたけど、高市さん、「なんで年度内じゃダメなの?」って本気で言ってるらしいね。だから、良くも悪くもアウトサイダーなんですよね。
田中記者:アウトサイダーですね。元々は高市さん自身が、解散して年度内成立が難しくなってるところを「選挙に勝ったんだから、その慣習もやめていきましょう」っていう。
今野記者:これを要は世論がどう受け取るかだよね。僕ね、一定の理解があるんじゃないかと思ってる。
田中記者:いや、僕もそう思います。
今野記者:古い慣習を重んじる人やオールドメディアの人は「熟議が大事だ、けしからん」って言うと思うんだけど。でも、今の若い世代とかさ、「なんで国会だけこんな、80時間もやるの?」って。去年も一昨年もずっと衆議院で80時間、参議院で70時間で合計150時間。(参議院で)ちょっと減らす、その理屈もよくわからないし。もっと言ってしまえば、衆で通った予算はそのまま、「みなし否決」で参院はしてもしなくても一緒だけどやるし。僕も自分で説明してて、今の合理主義的な若い人たちを説得できる自信がないもん。

田中記者:そうですよね。国会の慣習って合理的ではないんですね。
今野記者:「なんでですか?」って聞かれたら「ずっとそうだったからです、前例がそうです」と。だから高市さんのなんで予算を年度内成立できないのっていうのは、一見無知なことを言ってるようで、今の世の中には(理解されると思う)。で、これまで2ヶ月かけてきたのを今回1カ月でできる例を作ったら良くないっていう人がいるけど、今回は特別なわけでしょ。解散があったから。だから「熟議だから」っていう批判をしてると、僕はこの時代ではもう無理だと思うな。
田中記者:うん、そうですよね。
今野記者:僕が野党の党首だったらこうやって批判するよ。「今回は、国民の生活に関わる予算で軽油引取税の暫定税率の廃止や給食費無償化とか(新年度から始めるために)年度内に予算を通したい気持ちは分かるから、今回は特例として通すけど、こういう奇襲解散ができないように憲法改正をしましょうとか、本来はそっちに持っていけば良いじゃん。それだったら国民も理解できる。
ただ、今回僕たちは急な解散でひどい目にあったと。奇襲のせいだけじゃないけど、中道が生煮え状態で突入したことにはそれも一つの要素になった。時の政権や権力者が都合良く解散できるのは良くないから憲法7条改正か法律で縛る対案を示すとかさ。あと、前例にはしない、来年以降も1カ月と言わないことを約束して、今回はこの特例の予算を呑みますが奇襲解散を抑制することはあっても良い。やっぱり時の政権に有利すぎるから。
田中記者:そうですね。今、今野さんが言った通り「前例としない」ということをあえて強調して合意することってありますよね。前例としないことで合意できるなら前例は意味ねえじゃん」みたいなね。
今野記者:僕がザッピングしたリベラル系のメディアとか新聞・テレビの論調は、やっぱり「熟議」とか「過去何ヶ月やったからやらなきゃいけない」という感じで批判してるから、「いや、そっちじゃないのにな」と思って読んでるんだけど。
田中記者:世論は合理的な方に来てますよね。国会の議論は大事なんだけれども、そこで条件交渉するっていうのは野党側としてはありだけど、そこまで行ってないですよね。
今野記者:そう、そう。そうやってやっぱ世論とちゃんと向き合ってやってかないと、野党やリベラル側が置いてかれちゃうと思うんだよね。
田中記者:古いって見られちゃいますよね。
今野記者:そう。 で、高市さんがやろうとしてることはさ、やっぱ前例踏襲主義の否定だったりするからさ。ある意味 、アウトサイダーなんだけど、これだけ色んなものがスピードで決まる時代に年度内にできないのっていうのは合理的に特に50代、60 代以下ぐらいには説得できないと思うんだよね。
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