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インターネット投票はいつ始まるの?世界のインターネット投票事情(原口和徳)

2026/2/11

原口和徳

原口和徳

1月27日公示・2月8日投票の衆議院議員総選挙(以下、衆院選)が終わりました。解散から投票までの期間が戦後最短という有権者にとっては厳しい選挙になり、豪雪地帯に住まわれている方や受験生にとっては、投票所まで足を運ぶことがとても難しいことになっていることも報じられていました。

そのようななかで注目されるのが、インターネット投票(以下、ネット投票)です。日本ではネット投票を行うことができませんが、ほかの国ではどのような状況になっているのでしょうか。

すべての有権者がネット投票をできるのは2か国

民主主義・選挙支援国際研究所(International IDEA)は、各国での選挙における投票方法の電子化状況を調査しています。(出所:Use of E-Voting Around the World)そこでは、なんらかの形でのネット投票が可能な国として14か国が報告されています。

資料1_インターネット投票の実施状況(2023年2月時点)

※筆者注:現在、ネット投票の実施が確認できない国も含まれています。

14か国のうち、すべての有権者がネット投票をすることができるのはエストニアとアラブ首長国連邦(以下、UAE)です。

ネット投票の仕組み

エストニアでは、有権者は期日前投票の期間だけ、ネット投票を行うことができます。また、期日前投票の期間中であれば、有権者は何度でも投票をし、投票先を変更することができます。加えて、ネット投票を行っていた人が、投票日に投票所でも投票を行った場合は、ネット投票で投じた票は無効となり、投票所で投じた票が有効な票としてカウントされます。直近の国政選挙では、ネット投票のうち0.4%が投票所での投票によって置き換えられています。(出所:Statistics about Internet voting in Estonia

UAEでは、有権者は期日前投票の期間に加えて投票日にもネット投票を行うことができます。また、エストニアと同様に、有権者は何度でもネット投票を行い、投票先を変更することができます。(出所:التصويت عن بُعد ※webブラウザの翻訳機能を使用して閲覧

UAEでは、投票所での投票も電子投票機を用いたものとなっており、すべての投票が電子化されています。そのため、開票作業の効率化や迅速化も進んでいます。なお、エストニアでは、投票所での投票は紙の投票用紙によって行われています。

ネット投票の効果

投票結果などがネット上で公開されているエストニアを対象に、ネット投票の効果についてみてみましょう。

資料2_エストニア国政選挙における投票率とインターネット投票の利用状況(筆者作成)

資料2は、ネット投票が導入されてからのエストニアにおける国政選挙の投票率とネット投票の利用率(投票に占めるネット投票の割合)の推移を示しています。投票率は概ね60%強で安定している一方で、ネット投票の利用率は選挙のたびに上昇しています。直近の国政選挙では投票の約半分がネット投票によって行われるようになったこともわかります。

このような状況は、エストニアでどのように受け止められているのでしょうか。資料3は、2019年に衆議院憲法調査会が海外調査でエストニアを訪れた際のエストニアの国会議員の発言を抜粋したものです。

資料3_インターネット投票に関するエストニア国会議員の受け止め(筆者作成)
  • 数字的には投票率は変わっていない。しかし、インターネット投票により、海外に移住している方などは投票できる機会が与えられたと思う。
  • 年齢層に関係なく、インターネット投票をする人たちの割合は増えている。やはり、一回インターネット投票をすると、怠けがちになって、次は、もう投票所まで出向きたくないということになるのではないか。楽ですからね。

(祖国党 キースレル議員)

ネット投票は投票率を向上するのではなく、投票することを楽にする効果(投票の利便性向上)をもたらしていることがわかります。

参考:世界で唯一すべての国民がインターネットで投票できるエストニアの投票環境とは?(原口和徳)

ネット投票と在外投票

投票の利便性向上で注目したいのが、国外在住の有権者の投票環境です。在外投票については、投票のために長距離移動を強いられることがあることや、郵便事情によってそもそも投票期間内に投票すらできないことがあることなどの問題が生じています。(出所:海外有権者ネットワークNY

民主主義・選挙支援国際研究所の報告でも、国外在住の有権者に限ってネット投票を導入している国が最も多かったように、在外投票とネット投票は親和性が高い取組です。日本でネット投票の導入を検討する際に、まずは在外投票から始めていくことも考えられます。

他国の事例を参考にネット投票を検討する際の留意点

複数の国での導入事例を参考にすることで、日本ではスムーズにネット投票を実現することができると判断することはできるでしょうか。

一般論として取組の規模が大きくなるほど、トラブルの発生確率や必要な費用が高まります。有権者数を比較してみると、日本は1億人ほどですが、エストニアは約100万人、UAEは約40万人と、規模が大きく異なっています。これだけ規模が異なってくると、日本のすべての有権者を対象としてネット投票を実現しようとする場合には、新たなトラブル等の発生に備える必要がありそうです。ネット投票のトラブルは、場合によっては選挙結果が無効となる事態を招くことがあります。オーストラリアのニューサウスウェールズ州では、ネット投票システムのトラブルが原因となって3つの議会選挙が無効となっています。

参考:ネット投票で投票率は上がらない?!実は知られていない3つの理由(原口和徳)

ネット投票の導入の是非を決めるのは誰?

さて、ここまでみてきたネット投票について、導入の是非や、仮に導入する場合に誰を(例:国外に在住の有権者の人だけ/投票所に行くことができない特別な理由のある有権者だけ/すべての有権者など)対象にするのかを議論し、決めることができるのは、私たちが選挙で選ぶ国会議員だけです。

今後、日本でネット投票は実現されるようになるのでしょうか。

あなたがお住まいの選挙区の候補者はネット投票にどのような考えを持っていますか。よかったら投票の前に調べてみてくださいね。


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原口和徳

原口和徳

けんみん会議/埼玉ローカル・マニフェスト推進ネットワーク 1982年埼玉県熊谷市出身。中央大学大学院公共政策研究科修了。早稲田大学マニフェスト研究所 議会改革調査部会スタッフとして、全国の議会改革の動向調査などを経験したのち、現所属にて市民の立場からのマニフェストの活用、主権者教育などの活動を行っている。

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