吉村範明(のりあき)さんは、石川県小松市那谷町出身。現在、小松市議会議員の3期目を務めています。
議員になる前から「地元の那谷町を守りたい」という思いが強く、多くの地域活動に参加してきました。しかし、決められた枠内での活動しかできないことに、もどかしさも感じていました。
さらに、母校の小学校が2学年でひとクラスになったことがきっかけで、政治の世界に歩み始めます。
どのような思いで政治への道を志たのか、これまで議員として実現してきたこと、そして今後の展望などについて、吉村さんにお話を伺いました。
選挙ドットコム編集部(以下、編集部):
政治家を目指したきっかけについて、教えてください。
吉村のりあき氏(以下、吉村氏):
私は幼少期からこの街で過ごし、政治家になる前から「この町のために何かしたい」という思いで、消防団やPTAなど数々の活動を行っていました。
町の青年団の団長や、壮年会の会長も務めてきたなかで感じたことは、「この地域の人たちは若い人も年配の人もみんなが熱く、意欲的だ」ということです。しかし、地域活動では「決められた枠の中」でしか活動できず、もどかしさを感じることが多々ありました。
さらに、私にとって衝撃的だったのが、母校である那谷小学校が複式学級になってしまったことです。
複式学級とは、1学年8人以下の場合に、学年をまたいで1クラスにまとめること。例えば、1-2年生の複式学級だと50分授業の場合、1年生は実質25分間、2年生も25分間しか授業は受けられない
その時は、県の教育委員会から講師が1人派遣され、主要科目は指導してもらえるとのことでした。
ところが、この後も児童数が減り続ければ、いずれは先生と講師の計4人で6学年を見なければならない「完全複式」となり、先生に指導してもらえる時間が半分になってしまう子どもが出てくるのです。質の良い教育を受けられなければ、若い世代はこの地域を離れ、さらに過疎化が進んでしまいます。
長年PTAに所属し、小松市PTA連合会の役員もしていた身としては、「このままでは母校がなくなってしまう」と危機感を覚えました。そして「子どもたちに不自由なく勉強に向き合ってもらいたい」という思いから、議員に立候補することに決めたのです。
編集部:
それで立候補されたんですね!
吉村氏:
ありがたいことに当選させていただいたので、さっそく市議会議員として複式学級の問題に取り組みました。
最初の議会で「市の単独予算で複式学級に講師を補いましょう!」と提案したところ、当時の教育長から「いいでしょう」と確約をいただきました。これが初めて、私が「枠そのもの」を変えることができた瞬間です。
私が市議会で意見を提出していなければ、市内の4校は完全複式となり、子どもたちは充実した教育を受けられなかった可能性もあります。「これで子どもたちが安心して勉強できる」という喜びを感じました。
編集部:
すごい活躍ですね!議員になられてからこれまでも、たくさんの変化を生み出されてきたのですか?
吉村氏:
これまで12年間のキャリアがありますので、実績は数多くあります。ただ、順風満帆ではありません。実はそのすぐあとに、すごく悔しい出来事を経験しています。
議会での複式学級のやりとりを、新聞やケーブルテレビ経由で知った市民の方々から、様々な反響がありました。議員一年目とはしては珍しいぐらい、たくさんのご相談をいただくようになったんです。
その中のある一件について、市の福祉課に「こういうことできないですかね?」と提案しに行きました。すると、その時の福祉課長さんに「それはもう既にやってます。そんなことも知らないんですか?議員」と一蹴。これは本当に苦い経験でしたね。
私が全てのデータに裏付けをとるようになったのはそれからです。この一件のおかげで、徹底的に裏取りをして前例がないところだけを提案していくスタイルを確立することができました。
例えば妊婦健診。
通常14回まで公費で助成していますが、14回以降も健診が必要になる場合があります。その場合、15回目以降は一回あたり6,000円程度の出費が発生します。そこで私は、市内の産婦人科に電話で実際の状況をお伺いしました。
すると、「そういう場合も少なくありません」との回答を多数の産婦人科からいただいたので、この裏付けをもって妊婦健診の制度の再設計を市と一緒に行いました。
議員になったからこそ、この「枠組み」から変更できますし、裏付けがあったからこそスムーズに再設計に動けたのだと思います。今、小松市では独自の助成金を設定しており、15回目以降の健診でも3回までは無料です。
振り返れば、「そんなことも知らないんですか?議員」と言ってくれた職員には感謝しています。
市の職員は行政のプロですが、全てを把握しているわけではありません。市民の声を聞き、裏取りをして、制度を設計して、市民にお返しする。それが、私たち市議会議員の役割だと思っています。
編集部:
他にも議員としてどんなことをされてこられたのですか?
吉村氏:
下記はほんの一例ですが、このようなことを行ってきました。
・妊婦健診の自費3回分の費用を市単独予算で助成
・高齢者の足の確保のため、地域路線バスの本数を増やした
・プロ野球のファンイベント「ベースボールクリスマス」をこまつドームで開催
・市立小中学校の空調計画がなかった学校への設置
・野球場の大規模改修(予定、令和7年供用開始)
・香害への周知(広報こまつへの告知掲載)
・学校給食について米飯対パン食の割合の変更
現職市長の宮橋さんと私は、市議会議員時代の同期でもあります。
私が立候補した2011年は議員年金が廃止された年で、多くの方が議員を辞め入れ替わりが激しい年でした。宮橋さんはその年に共に議員になって以来の仲間であり、戦友です。
宮橋さんは2017年にも市長選に挑みましたが、その時は惜しくも落選。2021年の市長選で晴れて当選しました。私もずっと彼を応援してきたので、自分のことのように嬉しかったです。
市長が実現したいこと、そして小松市の方が実現してほしいこと。このパイプ役を担いたいと考えています。
編集部:
あらためて、これから議員としてどんなことを成し遂げたいですか?
吉村氏:
これから日本全体では一極集中化が進んでいくことが予想されますが、それは地方も同様です。
例えば、小松市内のイオン周辺には全校生徒が1,000人近い小学校がある一方で、私の母校のように全校生徒が30人程度の学校もあります。同じ市内でも地域バランスが取れていないのが現状です。
万が一災害が起きたら、人口が集中している地域の被害がかなり大きくなってしまうでしょう。そうならないためにも、急傾斜地の改修や用水の氾濫防止などのインフラ整備を平準化し、被害の度合いを少なくする必要があります。
宮橋市長は世帯数20軒ほどの小さな町で生まれ育ち、現在も住み続けています。そんな彼だからこそ、地域バランスの調整も含め、地域課題と真摯に向き合ってくれるだろうと期待しています。
私たち議員が一番大事にしなければならないのは、「いかに市民の声を届けるか」ということ。特に少数の意見は重要で、その方々を助ける政策ができれば、波及して全体が良くなっていくはずだと確信しています。
2024年には、いよいよ北陸新幹線小松駅が開業します。「選ばれる小松市に!」を目標に、今後もよりよい町づくりを目指しています!
編集部:
ありがとうございます!ところで、プライベートについても少しだけ伺ってもよろしいですか?
吉村氏:
私は今、ウォータースポーツのSUPにハマっています。
実は私は水が怖くて泳げないのですが、だからこそチャレンジして克服できれば「これからも色んな事に勝てそうだな」と思ったのがSUPをはじめたきっかけです(笑)
SUP – Stand Up Paddleとは、湖などでボードの上に立って、パドルで漕いで水上を進むスポーツです。
53歳の時に初めて参加した体験会で水に落ちた時は、本当に死ぬかと思いました(笑)しかも2回も!
もう絶対に落ちたくないと真剣にSUPと向き合った結果、徐々に楽しくなってきました。今では、タイムを競うレースSUPにどんどんハマっていき、ついにはインストラクターの資格まで取ってしまいました。
スポーツに没頭していれば、自然に身体も健康になります。議員としてたくさんの方に応援してもらっているので、簡単に死ぬわけにいきませんからね。
ちなみに、そんな私を見て妻は「好きにすれば?」と、お互いの趣味の時間を認めています。最近あまり構ってもらえないのは、私のことを十分理解しているからなのかもしれません(笑)
だから色々と新しいことにチャレンジして、「健康であろう」と打ち込んでるのかもしれませんね(笑)
編集部:
最後に、何かメッセージはありますか?
吉村氏:
私の役割は、いただいた相談をもとに「枠組み」をより適切にすることだと考えています。これまでもたくさんの制度変更を行いましたが、どれもきっかけはいただいたご相談です。
ぜひこれからも、より良い小松市にするためにもたくさんのご相談をいただけたらと思います!
【吉村のりあき氏のプロフィールページはこちら】
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