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次の衆院選はいつ? 今、改めて考える8つのシナリオ

2020/7/29

大濱崎卓真

大濱崎卓真

今年3月に「次の衆院選は一体いつ? 7つのシナリオで予測する オリンピック延期と選挙のタイミング」というタイトルで、次期衆院選の時期についてシナリオ別に予測する記事を寄稿させていただきました。

本来開催されているはずだった東京五輪のない夏を迎え、新型コロナの状況や永田町の空気も3月からだいぶ変わってきましたので、改めて衆院解散総選挙の時期についていくつかのシナリオで分けて考えていきます。

シナリオ1:9月末解散、10月総選挙

今年6月から7月にかけて広く言われていたシナリオであり、筆者もこの時期には9月末解散、10月総選挙を強く意識していました。具体的には投開票日が大安となり、前回衆院選とも日程がほぼ一致する10月13日公示、10月25日投開票というシナリオです。

筆者は、官邸は6月の時点で「10月13日公示、10月25日投開票」をほぼ決意していたと考えています。6月に安倍首相と麻生財務大臣は複数回の1対1での面会を含む計8回もの面会を行い、6月29日には麻生財務大臣が公明党の斉藤幹事長に対して衆院解散・総選挙の意見を交わしたと報道されました。党内に留まらず「友党」である公明党に実質的な解散意向の伝達が行われ、7月3日の公明党中央幹事会では次期衆院選の2次公認が早々と決定されたことをみれば、この時点では今秋の解散総選挙が確実視されていたことは間違いないでしょう。

ただ、6月の時点では本命視されていたこのシナリオは7月後半にかけて急速にしぼみつつあります。というのも、6月上旬の時点では第一波とも呼ばれていた新型コロナの国内感染が一息ついた状態であり、このまま終息に向かっていくのではないかという観測がありました。

しかし7月に入り第二波とも呼ばれる感染拡大が進み、4〜5月に緊急事態宣言が発令されていた時期よりも感染者数が増加している現状から、解散総選挙を行える環境ではないという認識が永田町では広まりつつあります。新型コロナ無症状感染者や軽症者の多いうちはまだ解散総選挙の選択肢は残るかもしれませんが、ここ数週間の感染の拡がりからは、9月末の解散は非現実的だと思われます。

わずかな可能性として残るのは、内閣改造によって求心力を上げた直後に、あいまいだと批判を浴びている新型コロナ対応について「経済優先」を前面に掲げ、消費税の減税や納税免除などを含む一時的な消費税制度の停止など思い切った政策に舵を切るための解散ぐらいでしょうか。

 
シナリオ2:11月末解散、12月総選挙

2014年の第47回衆議院議員総選挙のような日程を組むシナリオです。シナリオ1で言われていた9月末解散、10月総選挙という観測の根拠には、「11月には東京五輪の再延期もしくは中止が発表される」というまことしやかな噂がありました。実際、11月後半には東京五輪への準備が順調に進んでいるかどうかを確認するプロジェクトレビューがIOC/IPCに行われる予定であり、このタイミングで国際的な感染状況などを鑑みて判断されるという見方です。

一方、「延期」の決断をした3月後半の状況と異なり、日本を含む各国で感染に歯止めがかかっておらず、仮にワクチン提供が今年中に広まったとしても各国にワクチンがいきわたるまでには時間がかかることを考えると、地球規模での新型コロナとの戦いが長期戦になることはほぼ確実となっています。国民の東京五輪に対する希望も既に失われていることは否めませんから、仮に東京五輪の延期や中止が決定したところで、観光業を中心とした経済的な打撃は大きいとしても、政権に与える影響自体はそこまで大きくないのではないのでしょうか。それであれば、無理に早期の解散を図らず、11月解散12月総選挙でも問題はないでしょう。

ただ、新型コロナが世界で初めて確認されたのは12月ということもあり、冬という季節に新型コロナが再度脅威になるだろうという見方は強いままです。外出を伴わざるを得ない解散総選挙を冬に行わなければならない必然的な出来事でもない限り、このシナリオ2はシナリオ1の延長線上であることだけの意味しかなく、現実的には難しいでしょう。

 

シナリオ3:通常国会冒頭解散総選挙

通常国会冒頭での解散もシナリオとしては入ってきます。来年度予算は新型コロナの影響から従来とは大きく異なる構成になることは明らかであり、財務省がこれまで訴えてきた財政健全化を守り抜くのかどうか、という問題が顕在化してきます。加えて新型コロナの感染拡大が進み経済的な影響が更に深刻化すれば、現実問題として大減税を行う可能性もあります。この場合、政府四演説を経て、消費税などの大減税と財政健全化の先送りを焦点とした解散総選挙が考えられます。

ただし、シナリオ2と同じで、1月の解散総選挙は感染拡大リスクも多く、負担が大きいとも思われます。仮に経済情勢が深刻化している場合には、むしろ大減税も含めた政策コンセンサスが与野党で早期に一致する可能性もあるため、選挙焦点にはならず選挙戦としての大義名分を失うことも十分に考えられます。

シナリオ4:予算成立後の解散総選挙

憲政史上、衆議院議員が任期満了まで務めた例はたった1度しかありません。そのほかはすべて衆議院解散によって任期満了を迎えることなくバッジを外しています。この衆議院議員総選挙は、任期満了に近づけば近づくほど「苦しまぎれ」「追い詰められ」「余裕がなく」などと評されることになり、与党にとっては戦いにくい選挙になると言われています。そのため、恐らく解散総選挙としてのリミットは予算成立直後である来年3月が最後になるでしょう。

ただ、この場合は大義名分(選挙焦点)をどうするのかという課題があります。筆者は、大義名分というものは、現状ではあるかどうかが重要なのではなくどう作るかが重要になってしまっていると考えています。ですから、相応の大義名分は用意することとなるとは思うのですが、現時点では予算成立後に解散総選挙をする理由が見当たりません。

 

シナリオ5:東京五輪前の解散総選挙

仮に 東京五輪が2021年に予定通り行われるとしたらどうでしょうか。東京五輪の直前には東京都議会議員選挙が予定されています。「コロナ前」に戻ることはもはやないと言われている中では難しいにしろ、仮に限りなく「コロナ前」に近い状況に戻れるという希望的観測を前提にすると、新型コロナを克服したサクセスストーリーとして、衆院選と都議選を同日日程にして東京五輪前の国民の高揚を利用した総選挙を実施すれば、与党にとっては追い風ムードでの選挙戦となることは間違いないでしょう。しかしながら、前述の様に新型コロナとの戦いが長期戦になるであろうことを考えると、このシナリオも成立しなさそうです。また、東京都議選に自民党本部が大きなこだわりを持っているとも思えません。

 

シナリオ6:任期満了直前での解散総選挙

残るシナリオは2つ、「任期満了直前での解散総選挙」と「任期満了での総選挙」です。この二つにあまり違いがあると思われないかもしれませんが、実は違いがあります。「任期満了」という憲政史上一度しかない事態を避けるためや、自民党総裁選などの日程を考慮して少しでも与党に有利なスケジュールを組むために任期満了直前でも解散を行うという可能性はあると思います 。

仮に2021年後半にも新型コロナの感染が収まっていない場合、日本経済は深刻という言葉では足りない程度の致命的なダメージを受けている可能性があります。アベノミクスに代表される経済施策によってこれまで支えられてきた内閣支持や与党支持が厳しい局面になることも十分想定されるため、総裁選で「ポスト安倍」を決定して新しいリーダーの元に総選挙を行うという点においては、解散総選挙によって総裁選直後の首相禅譲的な総選挙からの首班指名という流れは考えられるでしょう。

 

シナリオ7:任期満了での総選挙

最後に、衆議院議員の任期満了による総選挙です。衆議院任期満了直前になっても国内の感染状況が依然として深刻なままだった場合は、憲政史上二度目だとして 「解散権を行使できないほど苦しかった」などという評価まではされないでしょう。(しかしながら、そのような状況であれば、与党の政権運営に対する国民の評価は厳しいものになっているでしょうから、与党にとっては厳しい選挙戦になるかもしれません。)また、仮に任期満了での総選挙となった場合には、1年も経たずして参議院議員通常選挙が行われることになりますから、結果によっては一気に政界再編となる可能性も捨てきれません。

 

シナリオ8:ほぼあり得ないが諸外国では見受けられる「任期延長」

新型コロナの影響で、諸外国では選挙そのものを延期した例もいくつかあります。例えば、今年5月7日に予定されていたイギリスのロンドン市長選挙は1年の延期が決まっています。また、比例代表で2回投票制のフランス統一地方選の2回目の投票も、今年3月から6月に延期されました。香港では、新型コロナの影響ということで、立法会選挙の1年から1年半程度の延期が検討されていると報道されています(もっとも、この立法会選挙の延期は、民主派の勢いを削ぐことが本来の狙いでしょう)。

日本でも、東日本大震災の際には、「平成23年東北地方太平洋沖地震に伴う地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律」により、県・市区町村の首長、議会議員選挙が延期されたケースがあります。この場合、本来の任期満了日を超えて従前の首長・議員が引き続き首長・議員を務めることとなりました。

では、このような特別法(措置法)を成立させれば、衆議院議員総選挙も延期できるのでしょうか。答えはそう簡単ではなさそうです。というのも、前述の東日本大震災のケースで挙げられた地方議会議員の任期は、地方自治法93条に定められているのに対し、衆議院議員の任期は日本国憲法45条に規定されており、憲法の最高法規を定める憲法98条によって、この憲法45条に反する法律は効力を有しないとされているからです。憲法改正をするには結果的に国民投票が必要となりますから本末転倒となり、現行法制下においては衆議院議員の任期満了を延ばすことは不可能でしょう。今後の課題とも言えます。

 

以上、ここまでいくつかのシナリオをみてきました。どのシナリオを現政権が採るかは、その時点における新型コロナの感染者数や重症者数、医療需給の状態に加え、経済的指標、内閣支持率、政党支持率にも左右されるでしょう。アメリカ大統領選挙のように、感染拡大に対する対策が不評で支持率が下がったケースなどもあり、事態の経過によって今後も状況は大きく変わると考えられます。

また、新型インフル特措法に基づく緊急事態宣言の発出にあたっては、国会へ事前に報告することとなっています。衆議院解散中にあっても参議院がありますから、法学上は国会への事前報告そのものは成立するとみられますが、衆議院解散中の「事前報告」の有効性に多少の疑義が残ることも考えられることから、例えば向こう1ヶ月の間に緊急事態宣言を発出する可能性がある間は解散しにくい、ということが考えられます。

新型コロナ対策の出口戦略がないと批判を受けることもある安倍政権ですが、「新型コロナ出口戦略=解散総選挙戦略」とも言える状況においては、まず新型コロナ対策をどうするのか、きちんとした説明が求められるでしょう。

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大濱崎卓真

大濱崎卓真

1988年生まれ。青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。衆参国政選挙や首長選挙をはじめ、日本全国の選挙に与野党問わず関わるほか、「選挙を科学する」をテーマとした選挙に関する研究も行う。

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