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日本第一党から初の地方議員誕生/ヘイトスピーチはあってはならない

2020/3/6

崎山 勝功

崎山 勝功

政治団体「日本第一党」公認候補の原田陽子氏(45)が、茨城県那珂市議選で初当選し、同団体初の地方議員が誕生―。全国各地でヘイトスピーチ解消などの外国人差別問題解決に取り組む市民たちに衝撃が走った。

原田氏が公認を受けた日本第一党は、綱領に「日本第一主義」を掲げる政治団体で2016年8月に設立。代表は桜井誠党首(48)が務める。桜井氏は右派系市民団体「在日特権を許さない市民の会」(在特会)を06年に創設し、14年まで会長を務めた。16年の東京都知事選に立候補し、約11万4000票を獲得。今年6月18日告示、7月5日投開票予定の都知事選に再度立候補する予定だ。

在特会は、警察庁や公安調査庁の監視・情報収集対象団体として認知されている。日本第一党と在特会に関しては「ネットと愛国 在特会の『闇』を追いかけて」(安田浩一著)など各種著書に詳述されているので、筆者は茨城県内での事案を中心に紹介する。

 

◆手薄な地方に活路

つくば駅前での2度目のヘイト街宣に対し抗議する市民たち=2017年12月17日、茨城県つくば市吾妻(撮影・崎山勝功)

17年11月12日、在特会茨城支部が主催するヘイト街宣活動が茨城県つくば市吾妻のつくば駅前で行われた。捜査関係者によると、在特会がつくば市内で街宣活動をするのは初めてで、茨城県警は50人近くの警官を動員。カウンター行動の市民たちも加わった。

街宣活動を在特会と共催した政治団体「新社会運動」の桜田修成代表=当時(55)=は取材に応じ「つくばは研究都市で、これから伸び行く都市に日本人の愛国心を発露できるようにするため。東京や大阪では愛国心を発露しづらい状況にある」と、つくば開催の狙いを明かした。

17年当時の桜田氏の発言からは、ヘイトスピーチ解消法が16年6月に施行されたが、実際の運用は自治体任せのため、在特会がヘイトスピーチ規制が手薄な地方都市を標的に街宣行動を行うことで、支持者拡大の布石を打ったことが伺える。

神奈川新聞の石橋学記者を講師に招いて開かれた、ヘイトスピーチ問題に関する勉強会=2018年3月10日、茨城県つくば市吾妻(撮影・崎山勝功)

「週刊金曜日」17年11月24日号(筆者執筆)で「つくばヘイト街宣」が報道されたのを受けて、同年12月6日のつくば市議会一般質問で、五十嵐立青市長は「ヘイトスピーチはあってはならない」と述べ、川崎市の事例を念頭に「大阪や川崎などの(ヘイトスピーチ規制ガイドライン作成)事例があるので参考にしながら、憲法に保証された(言論の)自由を留意をする必要があるが、ヘイトスピーチを抑止する取り組みについては進めていきたい」と、ヘイトスピーチ抑止対策に前向きな考えを示した。

五十嵐市長は7日の市議会でも「ヘイトスピーチ対策法第4条第2項の規定に基づき、地域の実情に応じた対策を講じていく。ヘイトスピーチを抑止する対策を進めていきたい」と改めて表明。

その後、同年12月17日にもヘイト街宣が行われたが、市民有志がヘイトスピーチ学習会を市内で開いて、ヘイトスピーチを許さない環境作りに取り組み、在特会の茨城県内での活動は沈静化したかに見えた。

 

◆地方議会進出にシフト

首相官邸前でマスク姿で演説する、日本第一党の桜井誠党首=2020年2月29日、東京都千代田区永田町(撮影・崎山勝功)

在特会に代わり、日本第一党が県庁所在地の水戸市など県央地域をターゲットに定め、水戸市に隣接する那珂市に茨城県内での活動拠点を開設。18年11月24日には、同団体の茨城・群馬・栃木3県の地方本部主催の街頭宣伝活動がJR水戸駅南口で催され、県警やカウンター行動参加者らの厳戒態勢の中で同団体の原田陽子・茨城県本部長(当時)ら会員10人前後が演説。

原田氏は那珂市議補選(18年12月9日投開票)に同団体の推薦候補として選挙に臨んだが6人中5位で落選。失敗と思われたが、4位当選者との差は僅差だった。

「日本第一党」のデモ隊に対しプラカードを掲げて抗議するカウンター行動の市民たち。=2020年2月29日、JR東京駅八重洲口周辺(撮影・崎山勝功)

選挙通の間では「マニアックな候補者は、定員枠の少ない市議補選では受かりにくいが、定員枠の多い市議選の本選では受かりやすい」という。特に、大都市近郊の「ベッドタウン」地域は住民自治への関心が低く、市議選の投票率が50%以下、一部では30%台と低いことから「トップ当選にこだわらなければ、1000票前後で市議になれる」とも言われている。

原田氏は再度臨んだ那珂市議選で658票、定数18中16位で当選。過去最低の投票率47.47%という「市民の無関心」が、原田氏の当選に大きく寄与した。原田氏には月額39万5000円の議員報酬と、年2回の期末手当などが支給される。

同団体では、今年11月頃予定の茨城県つくば市議選に、同団体公認候補を立てる動きも出てきている。

 

◆ヘイトは市民社会を破壊する「犯罪」

首相官邸前での日本第一党の集会を動画撮影およびインターネット中継する支持者たち(右)=2020年2月29日、東京都千代田区永田町(撮影・崎山勝功)

茨城県内では農業をはじめ、食品製造などの製造業、運輸・物流、小売、外食などのサービス産業分野で、多くの外国人労働者が働く。「茨城県の経済は外国人労働者抜きでは成り立たない」と言っても過言ではない。同団体が訴える排外主義は「経済の現場を見ない非現実的な空想論」でしかない。

筆者も実際にベトナム人研修生や日系ブラジル人たちと一緒に、日本人が敬遠する肉体労働現場で働いた。彼らは日本人正社員が出す日本語の指示を理解し、日本人以上に勤勉に働くので、現場での評価は高い。

外国人が目立つのは日系ブラジル人が多く住む常総市などの県西地域だけでなく、世界各国から研究者が集まるつくば市をはじめ、牛久市、龍ケ崎市などのJR常磐線沿線の県南地域、メロンやイチゴなど農業が盛んな鹿行(ろっこう)地域など、県内各地で外国人の姿が見られ、日常生活に溶け込んでいる。茨城県出身の有名人には、大相撲力士の高安や声優の中島愛さんなど、外国にルーツを持つ人も少なくない。

一方で「政治に関心のある」若年層、特に「政治に関心を持ち始めた」中高生男子の間では、動画投稿サイトなどで流される同団体や、同団体の支援者の主張を吟味せず、鵜呑みにしてしまう傾向がみられる。「ヘイトスピーチ」は「娯楽コンテンツの一種」ではなく「社会を破壊する犯罪」であることを教育することが必要だ。

龍ケ崎市が今年3月からアニメ「妖怪人間ベム」とコラボした街おこしキャンペーンポスターのキャッチコピーには「オイラたちにも、やさしい龍ケ崎」とある。日本人、外国人、妖怪人間も受け入れる「多様性の社会」か、ヘイトスピーチと外国人差別、いじめが蔓延する「不寛容と暴力の社会」か。選挙権を持つ私たち有権者の意識が問われる。

 

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崎山 勝功

崎山 勝功

崎山勝功・元「常陽新聞」記者 【筆者略歴】1976年岩手県宮古市生まれ。岩手県立宮古高校、流通経済大学卒業。無料情報誌編集部員などを経て、2007年常陽新聞新社(当時)に契約社員として入社。08年報道部記者として同社正社員登用。労働問題・市民運動・警察・裁判・選挙・災害・スポーツなど多分野の取材で活躍。現在は「利根新報」で活躍の傍ら「週刊金曜日」「NEWSつくば」などに寄稿。

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