全国に1,700以上ある市区町村のうち最も人口が多いのは先日市長選が行われた神奈川県横浜市(373.3万人、2017年5月1日推測人口)ですが、最も人口が少ない市町村をご存知ですか?
正解は東京都青ヶ島村。今回は8月29日に告示された青ヶ島村長選挙・村議会議員選挙にあわせて、青ヶ島村の特徴と、過去に行われた青ヶ島村長選挙の記録を振り返ってみましょう。なお、村長選挙・村議会議員選挙はともに立候補の届出者数が定数を超えなかったため、無投票となりました。
東京都に属しているものの、伊豆諸島で最も南にある有人島で、東京都庁から青ヶ島村役場までの直線距離は約360kmと、京都までの距離とだいたい同じほどです。
都心からの移動手段は週4~5便の船または9人乗りのヘリコプターであり、なかなか気軽にはいけない場所にあります。
江戸時代には噴火の被害により、八丈島に全島民が避難(のちに帰還)する火山島で、現在では火山による地熱を活用した「ふれあいサウナ」や、食塩「ひんぎゃの塩」が名物となっています。
そんな青ヶ島村の人口は175人(推計人口、2017年5月1日)。公職選挙法で定められる選挙のうち、最も小規模な選挙となっています。
過去の村長選挙のデータをチェックすると無投票の場合も多いものの、ひとたび選挙戦となると非常に僅差での競り合いとなっているようです。
1989年
佐々木一郎 73歳 現職 62票 落
佐々木 宏 45歳 新人 70票 当←8票差で新人が勝利!
1993年
佐々木 宏 49歳 現職 無投票当選
1997年
佐々木 宏 53歳 現職 無投票当選
2001年
佐々木 宏 57歳 現職 53票 落
菊池 利光 48歳 新人 68票 当←15票差で新人が勝利!
2005年
菊池 利光 52歳 現職 無投票当選
2009年
菊池 利光 56歳 現職 無投票当選
2013年
菊池 利光 60歳 現職 64票 当←26票差で現職が勝利!
山田英三郎 54歳 新人 38票 落
2017年
菊池 利光 64歳 現職 無投票当選
村長選挙の得票数は2ケタ、票差は30票以内と、小規模な村を二分する激しい選挙になっている様子が結果からもお分かりいただけるかと思います。
このうち2001年の読売新聞によると、役場で働く島外出身職員や、2年ごとに異動する小中学校の教員といった地縁・血縁の影響を受けない新住民が有権者の3分の1を占め、彼らの支持固めに両陣営がしのぎをけずった、と記録されています。
昨年、61年ぶりに行われた大分県の離島、姫島村の村長選で9期目の当選をはたした藤本昭夫氏は当選後のインタビューで「選挙というのは良くないですね。村民が疑心暗鬼になりますからね」とコメントしたことは記憶に新しいのではないでしょうか。
これに対して民主主義の根幹をなす選挙を否定するなんて、といったコメントが多く寄せられましたが、島民を分断してわだかまりを産んでしまう危険をはらんだ選挙のあり方には一考が必要なのかもしれません。
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また、青ヶ島の新住民のように、その地域に長くとどまる予定のない人々が人口の割合の多くを占めている例に、北海道長万部町があります。同町には東京理科大学基礎工学部の1年生が学ぶ全寮制の長万部キャンパスがあり、約300人が在籍しています。選挙権年齢が18歳に引き下げられてから、有権者数5,000人足らずのこの町の約6%を大学生が占めることになってしまっているのです。町長・町議の1期4年を1年で町を去る大学生が選ぶことについて、様々な議論を呼び起こしています。
他方、先日ニュースになった、高知県大川村の議会廃止と総会の設置の検討という選択肢は人口減少社会における地方自治体のあり方として、今後他の町村にも議論が波及する可能性もあります。
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8月29日に告示された青ヶ島村長選挙と村議会議員選挙はともに無投票となりましたが、少子高齢化が進み、「消滅可能性都市」が話題になるこれからの社会で、人口の少ない地方自治体における議会のあり方についての議論はますます重要度があがるものと考えられます。引き続き、注目の地方選挙については紹介してゆきます。
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