ついに都議会議員選挙が告示され、来週末2日の投票日に向けて熾烈な選挙戦に突入しました。立候補の受け付けが告示日の午後5時に締め切られ、42選挙区127名の定員に対して259人が立候補しました。「こんなにたくさん立候補者がいたのか!」と驚いた人もいるのではないでしょうか。でも実はこの「立候補」、タダではできないんです。
実は立候補するに当たって「供託金」という制度があります。
供託金とは、立候補者に法律で決められた金額を、一時的に法務局に預けるお金です。一定の得票数を満たすことができれば返却され、規定の得票数に達しなかった場合や、途中で立候補をとりやめた場合などは没収されます。
当選を争う意志のない人、売名などを目的とした無責任な立候補を防ごうという制度で、 選挙の種類別にその額が決められています。こうした出馬を減らし、有権者が選びやすい環境を整えようというのが供託金の目的です。
気になる都議選の供託金は60万円。しかし国政選挙(小選挙区)や都道府県知事選挙になるとその5倍の300万円!ノリで出馬するには、なかなか厳しいハードルですね…
そしてもう1つの厳しいハードルは「没収ライン」。比例代表選挙以外でのキーワードは10%です。国政選挙も地方自治体選挙でも基本的に有効投票総数の10%を下回ると没収されてしまいます。
10%と言っても侮るなかれ。例えば小池百合子氏が当選した昨年の都知事選では、なんと21人の候補者のうち18人も供託金が没収されてしまいました!
有効投票総数が654万6362票だったので、供託金の没収ラインの65万4636票を上回った立候補者は小池氏(291万2628票)、増田氏(179万3453票)、鳥越氏(134万6103票)のみ。没収された供託金は300万円×18人=5,400万円でした。
余談ですが、町村議会選挙の供託金はナント無料! おカネがなくてもどうしても政治家になりたいのなら、意外と町村議会が穴場かも・・・!?
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今回の都議選では259人が立候補したということで、1億5,540万円の供託金が納入されたことになります。
では、没収された供託金は誰のサイフに入るのでしょうか。実は没収された供託金はその国や自治体の管理になり、運用されるようになります。
国や地方自治体が選挙を行うと、ポスターの立て看板設置や選挙公報の配布、投票用紙の発送、さらに投票所の設置や職員への手当など、膨大な費用がかかります。没収された供託金でそのすべてをカバーすることはできませんが、その一部をまかなう費用として有効活用されるなど、税金と同じように扱われます。
結論を言うと、日本の供託金は海外と比べて比較的高価になっています。
日本以外においてもイギリス、カナダ、韓国、シンガポールなどにおいて供託金制度がありますが、いずれも日本と比べると高価ではありません。また、供託金没収ラインもイギリスが投票数の5%であるなど、日本よりもユルいところも散見されます。逆にインドやシンガポール、マレーシアと言った他のアジア諸国は日本よりラインが高く設定されています。
一方でアメリカ、フランス、ドイツ、イタリアなどには選挙の供託金制度がなく、フランスに至っては上院200フラン(当時のレートで約4千円)、下院1,000フラン(同2万円)の供託金すら批判の対象となり、1995年に廃止されています。
供託金の目的は「立候補者が乱立して、有権者が混乱しないようにするため」でしたが、では、供託金がない国では逆にそういう問題が起こっているのでしょうか?
答えは「乱立はしているが、混乱は起きていない」。つまりは半分〇、半分×です。
例えば2016年のアメリカ大統領選挙では、連邦選挙委員会に登録された大統領立候補者の数はなんと1,300人以上!中には自称魔法使いや猫(もはや人間ではない)なども含まれ、さすが自由の国と言えるカオスさです。
しかしそれによって有権者が混乱しているかと言えば…、現実は全くそうではないですよね。トランプ大統領の奇抜さはさておき、ほとんどの国民はネタ候補には見向きもしないため、選挙は特に問題なく行われています。
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