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北朝鮮のXデーをめぐる攻防~北朝鮮の崩壊は米中を巻き込んだ紛争に発展しうる

2016/10/11

児玉 克哉

児玉 克哉

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北朝鮮崩壊の可能性はこれまでにも多くの人が指摘してきた。経済制裁を加えられ、幾つかの災害に見舞われ、核開発やミサイル開発などの軍事増強にお金を使うのだから、まともな国の運営はできていない。しかしそれでも北朝鮮は崩壊していない。ただ、いつXデーがやってきてもおかしくない状態はできている。問題はその有事に日本を含め周辺諸国は備えているか、ということだ。粛清が大規模で行われ、脱北者も相次いでいる。優秀な人材が粛清されたり、脱北したりすると、北朝鮮のような国の成長は望めない。国際的視野のある人材は限られている。金正恩最高指導者の独裁は明らかに北朝鮮を袋小路に追い込んでいる。逃げ道がなくなれば、やがては崩壊することは十分に考えられる。

問題は、どのようなシナリオで崩壊し、その後、どのようになるか、だ。韓国の朴大統領は、北朝鮮の崩壊はすなわち韓国による南北統一と考えているようだ。最近の北朝鮮の脅迫に対して厳しく当たり、北朝鮮を崩壊させて南北統一を実現することをほのめかしている。これは経済的、社会的に韓国にはかなりの負担であり、それに備えよう、というのだ。日本でも多くの人は、北朝鮮崩壊は韓国による朝鮮半島の統一と考えているようだ。しかし、今の状況であれば、北朝鮮の崩壊は中国による北朝鮮支配に変わる可能性が圧倒的に高い。これまでの北朝鮮と中国との交流の親密度と北朝鮮と韓国の交流の親密度を比較すれば明白だ。金正恩体制のほとんどの政治家、軍人は中国幹部とのルートはあっても、韓国の政治家や軍人との交流はほとんどない。たとえクーデターがあっても、彼らはまずは中国に支援を求めるだろう。中国も北朝鮮は彼らのテリトリーだと考えている。だからこそこれまでも支援をしてきたのだ。やすやすと、背後にアメリカのいる韓国に統一されるのを容認するわけがない。朝鮮半島が韓国に統一されるなら、中国は、北朝鮮の核兵器を得た拡大韓国と国境を接することになる。アメリカと日本が背後にいる拡大韓国は、中国にとって脅威だ。絶対に許さない。戦争をも辞さないくらいの抵抗をするだろう。

このように考えた上で、北朝鮮崩壊のシナリオを考えてみよう。

まず、第一に周辺諸国は北朝鮮の崩壊を望んでいないということを確認したい。韓国にも中国にもアメリカにもあまりに不確定要素が多すぎて、何も特別なことが起こらず、このまま北朝鮮が独立して存在することを望んでいる。日本もそうだ。問題は、北朝鮮が核開発やミサイル開発をして、状況を変えようとしていることだ。こうした動きは国際情勢を不安定化させる。特に経済的な問題を抱える北朝鮮は、内部からのクーデターなどの可能性も秘める。その可能性が高まれば、自らが仕掛け人となって崩壊させようという動きが中国からもアメリカからもありえる。金正恩氏の威嚇は、状況を悪化させることにつながるのだ。

A)内部からのクーデター

完全に内部からのクーデターの可能性はある。ちょっとした動きも察知され、粛清の対象になるリスクがある。ただ反発する側もこうしたシステムを学んでいる。いかに気づかれることなく、一気にクーデターを行うか。クーデターが起きても劇的な変化はないかもしれない。トップが変わり、そのトップの力量と見識によって北朝鮮の方向が決まる。おそらく金正恩体制よりもより中国寄りを明確にした政権に変わるのではないか。

B)中国主導のクーデター(暗殺)

中国が金正恩最高指導者を見切る可能性がある。中国が主導してクーデターを起こし、完全な中国傀儡政権を作る方向だ。よほどの北朝鮮の抵抗がなければ、傀儡政権樹立という形だろう。抵抗があり、混乱するようになれば、強制的な併合もシナリオの中にあるかも知れない。

C)アメリカ主導のクーデター(暗殺)

中国とアメリカが金正恩氏の暗殺競争をしているとさえ言われる。アメリカ主導で北朝鮮を崩壊さえ、その後の展開をコントロールしたいということだ。このまま北朝鮮が行き詰まれば、中国は北朝鮮への支配権をさらに強化すると考えられる。ならば一気にアメリカ関与のもとでクーデターを起こし、アメリアの同盟国としての統一韓国を作る戦略だ。

どのシナリオもリスクが大きい。どのような展開になるか、わからない部分が大きすぎる。アメリカと中国の軍事大国がアジアの戦略的重要拠点の覇権を争う形になる。

中国は北朝鮮を完全に支配下に入れるなら、次は韓国だ。「歴史的に中国に属し」、「現在は暫定的に帝国主義の配下にある」朝鮮半島を中国に取り戻す活動に移る可能性がある。アメリカと同盟関係を持っている韓国は軍事戦略上も目障りだ。中国にとって、サムスンや現代を持つ韓国は経済的にも魅力がある。しかし、アメリカにとっては米韓日の同盟関係はアジアの軍事戦略の基本といえる。それが崩れることは大きなマイナスだ。

日本にとっても北朝鮮の行方は大きな影響を受ける。現在のところ、中国、韓国、アメリカ、日本、ロシアのすべてが金正恩氏に静かにしてもらって現状維持の状態を望んでいる。しかし金正恩氏が静かにしなかったらどうなるか。北朝鮮崩壊後に平和裏に南北朝鮮が統一されるというシナリオはほとんどないだろう。北朝鮮の暴走は、アメリカと中国を巻き込んだ次の争いに発展しかねない。本当の脅威はその展開だ。

※本記事は「行動する研究者 児玉克哉の希望ストラテジー」の10月9日の記事の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。

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児玉 克哉

児玉 克哉

三重大学副学長・人文学部教授を経て現職。トルコ・サカリヤ大学客員教授、愛知大学国際問題研究所客員研究員。専門は地域社会学、市民社会論、国際社会論、マーケティング調査など。公開討論会を勧めるリンカーン・フォーラム事務局長を務め、開かれた政治文化の形成に努力している。「ヒロシマ・ナガサキプロセス」や「志産志消」などを提案し、行動する研究者として活動をしている。2012年にインドの非暴力国際平和協会より非暴力国際平和賞を受賞。連絡先:kodama2015@hi3.enjoy.ne.jp

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