小池知事、自民党、自民党東京都連、それぞれの思惑と戦略~衆院東京10区補選で自民は若狭氏を公認か

2016/09/15

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コラム

児玉 克哉

東京都知事選から約1ヶ月半が経とうとしている。まだ1ヶ月半しか経っていないのか、という感もある。自民党東京都連の選挙の責任問題、内田都議などの利権疑惑報道、リオ・オリンピック、東京オリンピック準備体制の見直し、築地市場の豊洲移転問題、小池知事報酬半減提案、衆院東京10区自民党候補擁立など、東京都をめぐる報道が相次いでいる。普通は選挙が終わると、選挙疲れもあり、ちょっと一服となるのだが、東京都政は目まぐるしく動いている。

特に築地市場の豊洲移転問題はかなり大きな問題に発展しそうだ。豊洲市場の土壌汚染問題は計画時から重要課題であった。市場が食料品を扱うだけに、安全性の確保は最優先されるものだ。豊洲新市場は東京ガスの工場跡地であり、地下水や土壌から発がん性のあるベンゼンなどが検出された。東京都の説明は敷地を2メートル掘り下げ、その上に4.5メートルの盛り土をしたというものだった。4.5メートルの盛り土となればまず安全だ、という感覚があった。それが実際には水産や青果など主要な5棟で盛り土をしておらず、地下の部分に空洞があるという。しかもそこに地下水とみられる水が溜まっているというのだ。これでは前提が崩されることになる。ベンゼンは気化しやすいこともあり、空洞に染み出た地下水から有害物質がでてこないかと心配される。これまで地下水検査は行われ、問題ないことが報告されていることや35~45センチのコンクリートがあり、安全は確保されていると言われている。しかし、前提が崩れた今、もう一度確認作業は必要だ。もし有害物質の問題や危険性が指摘される事態になれば、簡単には収まらなくなる。しかも豊洲市場の主要3施設の建設工事の再入札の平均落札率が99.9%だったことが報道されている(産経デジタル9月14日)。こうなると「利権」問題も絡む話になり、かなりの騒動になりそうだ。

これから東京オリンピック開催にむけて大公共事業が目白押しになる。巨額のお金が動く構造だ。当然、「利権」も絡む。これから「落としどころ」も探りながらの激しい戦いが始まる。

小池百合子氏の東京都知事転出に伴う衆院東京10区補選に関して、自民党本部は、若狭勝衆院議員を公認する方針を固めたことが朝日新聞デジタル(9月14日)で報道されている。自民党本部は小池知事と手打ちをして、円滑に都政を運営できる環境づくりを目指す方向だ。ただ、自民党都連は都知事選の禍根もあるし、今後の主導権争いにも影響するので、簡単にはその路線に乗ることはできない。「利権」疑惑が中心メンバーにも向けられる可能性もある。

小池知事、自民党本部、自民党東京都連の三者の視点から今後の展開を考察してみよう。

小池知事は現在のところ、様々な戦略がありえる。むしろ自民党本部、自民党都連の出方次第というところだろう。今は都民、世論は味方についているが、これらは一気に変わることもある。どのような地雷が埋め込まれるかわからない状態だ。猪瀬元知事も舛添前知事も選挙では大勝をし、支持も高かったのが、一気に都庁から放り出された。都民や世論の声は、徹底的に「利権」構造を洗い出し、クリーンな都政を展開してほしいというものだが、あまりに問題が大きくなれば都政はデットロックに陥ってしまう。東京オリンピックの日程をずらすわけにはいかないのだから、スケジュールに遅れが出る可能性も生じかねない。自民党本部と交戦状態になれば、オリンピック準備も難しくなる。小池新党を作って、日本維新の会と連携して戦うというオプションはあるにしても、それは自民党との連携を難しくさせることに繋がる。自民党本部とは良好な関係を持ちつつ、あくまでも戦う相手は都連の中核メンバーとする戦略が望ましい。小池新党も都議会選挙で極めて限定的に立ち上げるという状態になるのではないか。むしろ都連のかなりの部分を小池派にしてしまう、という展開も模索するだろう。その意味で、若狭氏が自民党公認候補として衆院東京10区に立候補できれば、いい展開ということだろう。

自民党本部も、小池知事とは関係を良好に持つことにメリットがある。オリンピックだけでも政権政党の自民党と小池知事が対立関係になることは問題を生じさせる。本格的に小池新党が動き、日本維新の会と連携すると、政局も動く可能性がある。自民党の枠の中で小池知事や若狭議員が動いてくれる方がずっとやりやすい。そうなれば「落としどころ」を見つけることができやすくなる。二階幹事長の手腕が問われる。「本当は都知事選で小池氏を公認しておけばよかった」というのが本音だ。

(都庁HPより)

最も難しいポジションが自民都連だ。現在の世論は明らかに逆風だ。築地市場の豊洲移転で浮かび上がっているようにこれから問題が出てくる事に、都議会の責任、特に自民都連の責任は追求される。「利権」疑惑もでてくると防戦一方になる。全面戦争となれば、来年の都議選では小池新党の候補者に議席を奪われる議員も少なくないだろう。特に前回の都議会選挙では自民党は大勝ちしたわけで、何もなくても現状維持は難しい状況だった。小池知事とバトルをしながらの選挙戦となると大幅に議員を減らすかもしれない。しかし、小池知事に全面降伏することは感情的にもできないだろうし、その後の展開も読めない。主戦論路線と和解路線とが入り乱れるかも知れない。

結局は小池知事、自民党本部、自民党都連は「和解路線」に落ち着くしかないのではないかと思われる。この場合には、築地市場の豊洲移転問題などで、都庁の職員とともに都連の側に責任を取らなければならない議員がでるだろう。この儀式を行ってから、東京都政は前向きな回転を始めることになりそうだ。おそらく来年の都議選までは、いくつかの問題の整理と責任追及に追われるのではないか。その後から本格的な小池都政が展開されるのではないかと思われる。オリンピックを控えた重要な時期ではあるが、1年弱の都政の停滞は「仕切り直し」には必要なのかもしれない。

※本記事は「児玉克哉氏のYahoo!ニュース」の9月14日の記事の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。

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児玉 克哉

三重大学副学長・人文学部教授を経て現職。トルコ・サカリヤ大学客員教授、愛知大学国際問題研究所客員研究員。専門は地域社会学、市民社会論、国際社会論、マーケティング調査など。公開討論会を勧めるリンカーン・フォーラム事務局長を務め、開かれた政治文化の形成に努力している。「ヒロシマ・ナガサキプロセス」や「志産志消」などを提案し、行動する研究者として活動をしている。2012年にインドの非暴力国際平和協会より非暴力国際平和賞を受賞。連絡先:kodama2015@hi3.enjoy.ne.jp

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