アメリカと中国が気候変動パリ協定に批准した。アメリカと中国は二酸化炭素排出量の世界のトップ2。2国だけで世界の総排出量の計38%を占める。この2国の参加がなければパリ協定は発効するのはほぼ不可能な状況であるし、この2国なしの温暖化対策は意味があまりないいくらいだ。この2国の批准により、パリ協定の年内の発効がほぼ確実になった。これで多くの他の国も批准に向かうだろう。日本においてもパリ協定への反対意見は少ない。本当は米中の前に批准をすべき立場の国ではあったろう。TPPなど他の課題を優先したためにパリ協定批准の案件は後回しにされた感がある。
アメリカはオバマ大統領の最後の業績になる。オバマ大統領の任期切れまであとわずかだ。パリ協定に関してはアメリカ国内では反対意見も強かったが、環境・平和・人権のオバマ政権は反対を押し切って議会を通し、パリ協定への批准にたどり着いた。問題は次期大統領だ。クリントン氏が大統領になれば、基本的にオバマ路線の踏襲となるだろうが、トランプ氏が就任するとそれまでのオバマ路線をすべてひっくり返しかねない。大統領就任までにパリ協定が発効していなければ、トランプ氏はアメリカの批准を撤回することも考えられる。発効してしまっていれば批准国はすぐに抜けることができない。オバマ大統領が批准を急いだ理由の一つといわれる。
中国にとっては、環境汚染大国の汚名返上をする必要がある。中国の環境汚染の改善は中国政府にとっても優先順位の高い課題だ。取り組まざるを得ないもので、パリ協定への批准を拒む必要はない。またアメリカとともに批准することでオバマ大統領へ友好の塩を送ったことになる。米中間は南シナ海問題などから緊迫している。しかしどちらもこの問題では妥協の姿勢をみせていない。パリ協定の批准は米中の緊張緩和に役立つかも知れない数少ない案件だ。
このパリ協定は、これまでの地球温暖化対策の枠組みと違い、世界全体が参加する前例のない合意として「画期的」といわれた。議長国であったフランスのオランド大統領は最終合意案の説明でこの点を強調している。確かに地球温暖化を防ぐのに一部の国だけが努力しても効果は限定的だ。ただ、「全員参加」を重視するために「骨抜き」になっていることも認識する必要がある。「骨抜き」だからこそ、二酸化炭素2大排出国のアメリカと中国が批准することができたともいえる。
地球温暖化防止のためには、温室効果ガスの削減が必要だ。これには3つのポイントがある。まずは削減目標の決定、その目標を守る義務化、できない場合の罰則である。まずは削減目標の決定は各国に任された。つまり低く設定することも高く設定することも可能なのだ。この目標値は公表されるので、あまりに低ければNGOなどが批判するだろうが、逆に言えばそれだけのことになる。またこれはあくまで「目標」であり、目標値を守る義務は課せられていない。ここでも目標を守らなければ批判がくるということだが、それ以上のものはない。なんの罰則もない。つまり「各々が努力目標をたてて頑張りましょう」というものだ。これをどのようにして意味のあるものにできるのか。国際社会は次の展開も求められる。例えば、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)などが各国に削減値を提示し、目標値設定においてかなりの強制力を持たせるなどである。また目標を大きく達成できなかった場合には実質的罰則が課される仕組みも作る必要がある。
パリ協定でもう一つ重要なのは、2020年以降、毎年1000億ドルを超える資金が先進国から途上国の温暖化対策事業などの支援に投じられることになっていることだ。ここでも実際にどのように割り当てられるのか難しい課題もある。先進国や新興国の経済状況は大きく動いている。資金を出す方も受ける方も明確なルール作りが求められる。
この負担が大きくなるのではないかということで、先進国からはパリ協定の批准に慎重な声があった。日本にとってもこれが負担になる可能性はある。ただ、ここは発想の転換も必要だ。これだけ大きな資金が動くということは環境産業への追い風になるということだ。世界トップレベルの環境技術を持っている日本は、環境産業への投資という視点も入れて、これからの展開に対応すべきだ。環境ODAが進められているが、さらにこれを推進すべきだろう。日本の環境産業にとってはチャンスでもある。
※本記事は転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。
この記事をシェアする
選挙ドットコムの最新記事をお届けします