今夏の参院選は、自民党が27年ぶりの単独過半数を確保し、いわゆる「改憲勢力」が議席数の2/3を超え、野党惨敗の結果となりました。
安全保障関連の話題で支持率を落としていた与党に対し、野党がここまで惨敗に終わったのは何故だったのでしょう。メディアでは野党共闘ができなかったことや、有権者の多くが「景気・雇用」を重視して投票を行ったことに対し、「改憲勢力2/3阻止」のPR戦略が民意の関心を捉えていなかったことなど、他にも様々な観点からの分析があげられています。
しかし、もっと根本的な理由があるのではないでしょうか。国民全員が気付いていて、野党の政治家は気づいていない(向き合おうとしていない)事を書きます。
「これで投票率上がらないならもうダメだ」っていうくらい動いたけど、たぶん上がらない… >>
野党第一党である民進党は政権を担う力があるのか、いやそもそも、政権を担う気はあるのでしょうか。
今回の選挙を振り返ったとき、この疑いをもってしまう理由となる点がいくつかあります。
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“自民党の憲法改正草案。これまでの平和主義も基本的人権も、なんにも分かっていないんだ。自衛隊を軍隊にして、基本的人権を一時の権力で制約できる。彼らは口を開けば「対案(を出せ)」と言います。あんなにひどい案を出されたら、いまの憲法の方がずっといいじゃないですか。現行憲法こそが、我々の堂々たる対案であります。”
(長野県松本市の街頭演説にて)
「現行憲法こそが、対案」
確かにそうなのかもしれません。自民党の憲法改正草案は改善点が多い事は、安倍自民党総裁自身も認めています。しかし、現在の民進党にとっては、対案を出すこと自体に大きな意味があるのではないでしょうか。聞こえのいいレトリックで国民の心に語りかけるだけではなく、批判の対象になる覚悟を持って国民に自らの主張を示すべきです。そうして初めて国民は、民進党が政権を担った場合に、どのように日本の安全保障をはじめとした国づくりを行って行くつもりなのか、現実味を持って考えることができます。
民進党岡田代表が参院選時に掲げていたスローガンです。改憲勢力について岡田氏自身明確な定義を行っていませんが、これは自民党をはじめとする改憲4等と呼ばれる勢力が議席の3分の2を獲得する事を阻止しなければならない。改憲勢力が3分の2を占めた場合、改憲派の暴走を止められなくなる。このような意図を持ったスローガンでした。
このスローガンから伝わってくるメッセージは、「積極的に民進党を選ばなくてもいい、とりあえず改憲4党には投票しないでくれ」というものでした。
ここでも自らの政策を投票の誘因として提示しない、極めて消極的な姿勢を見せました。
他にも、アベノミクス失敗の主張ばかりがメディアに取り上げられ、野党はどのような経済政策が望ましいと考えているのかを有権者にほとんど提示できずに終わりました。
国民から、野党に対するメッセージはたった1つです。
「あなたたちが描く日本の未来を教えてください」
政権批判を繰り返す万年野党ではなく、いつでも政権交代が可能な「政権準備政党」としての野党を目指して下さい。
この複雑化する社会で、全てがうまくおさまる政策などないことを国民は知っています。だから、ひとつの政策があったときに批判する点があるのは当然です。国民は、その与党が出した政策のメリットとデメリットを踏まえた上で、比較できる他の選択肢が欲しいのです。野党に期待するからこそ、対案を出して欲しいと思います。
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