選挙ドットコム

投票権がないからこそ話せる「投票権の美しさ」(選挙ドットコム副編集長:徐東輝)

2016/7/9

徐 東輝

徐 東輝

選挙ドットコム副編集長の徐東輝です。
TEDxWakayamaUniversityでお話しさせていただいたスピーチがオンラインで公開されました。これまで活動してきた理由、いま参院選を前に何を考えているのか。自分なりの民主主義への思いを語らせていただきました。
(スピーチは英語だったため、本記事では日本語でスピーチ内容を記載させていただきます。)

投票権を説明する形容詞は「美しい」

13466336_899395750187749_2698613218547869050_n

まもなく、私達は大きなお祭を迎えます。ワールドカップの話でもなければ、オリンピックの話でもありません。選挙のことです。あ、そういえば確かにオリンピックもありますね。でも今日は選挙のお話をさせてください。今日私がお話するのは、皆さんがこれまで聞いてきた、退屈な「投票に行きましょう」話とは少し違います。私がここでお伝えするのは、投票権の持つ意味、そしてその「美しさ」です。

私は日本で韓国人として生まれました。いわゆる「在日韓国人」です。多くの方がご存知の通り、私たち在日韓国人というのは日本に投票権がありません。そして、実はあまり知られていないことですが、つい最近まで韓国にも投票する仕組みがなかったのです。
それが何を意味するか。私は、どこの国の未来を決めていいのかわからなかったんです。私には、票を投じる国がなく、自分の信じる未来を作るための声を上げることができなかった。つまり、政治的に帰属する国がなかったのです。

震災後に投票率が下がる国

日本人であれば、18歳になったときに選挙権が与えられます。しかし、若い有権者たちの70%は投票に行かず、選挙権を捨ててしまいます。日本で観測史上最大の地震であった3.11、その後に行われた国政選挙で、20代の投票率はわずか32%と過去最低となりました。僕はこのあまりにも低すぎる投票率に衝撃を受けてしまいました。若者は、日本を立て直すということに、自分たちの声が反映されなくてもいいのかと。

そして大学院生になった僕は、友人とともにある学生組織を作りました。目的は、同世代の投票率を向上させること。これまでの2年間で直接アプローチした人数は1万人を超え、彼らと民主主義とは何か、何を意味するのかを議論してきました。また政治家の方々と若者たちが、日本に未来を再考するために集うワークショップも作りました。中学、高校と連携し、民主主義と主権者意識を醸成する授業も始まっています。これまでの2年間を踏まえて、これからも政治と同世代がもっと強い絆で結ばれるよう、役割を果たしていこうと思っています。

未来を考えて投票ができる有り難さ、美しさ

ひょっとすると、どうしてそんなに熱心に政治や投票率の向上に関わろうとするのか疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。ひょっとすると、僕が外国人参政権を実現するために動いていると非難する方もいらっしゃるかもしれません。もちろんそんなことはありません。僕が前に出て話す理由は、「投票権」というものが本当に貴重で、力強く、そして何より美しいからです。

数年前のある選挙の日の話をしましょう。その日、あるおばあちゃんが、杖をついて、ゆっくり一歩一歩投票所に向かう景色を目にすることがありました。決して楽ではない道のりを一歩一歩。
これは僕にとってとても象徴的な出来事でした。少し考えてみれば、この街を、社会を今僕たちが不自由なく生きていけるように作ってくれたのは、父や母、祖父や祖母の代で、彼らが僕らの生きる未来を考えながら、投票所に足を運んで投じてくれていたんだと改めて気付かされます。めちゃくちゃ美しくないですか?子どもたちの生きる未来を考えて、大きな大きな政治という壁に立ち向かっていく。

国や社会の理想的な未来を考えることができるというのは、そしてそのために投票することができるというのは、僕にとって本当に魅力的で美しく感じられます。そしてそれは決して僕には与えられないものです。

日本は成功した社会主義国家?

13467679_899348430192481_629267539_o

もう一つ、日本における投票と民主主義について考えさせられた体験をお話します。ドイツにいたときに友人に言われた言葉です。
「日本って本当に成功した社会主義国家だよね」って。「だってそうじゃないか。社会保障や医療は充実しているし、教育水準も高く、戦争はない。そして、いつも投票する人たちは同じ層で、一つの政党が長く安定的に政治をしている。民主主義という形式をとっているから、誰も文句をいわないのさ。」

この言葉を聞いた時、僕は何も言い返せない自分が辛くなりました。皮肉で言われたことはわかっています。だけど、それを言い返す言葉が何も見つかりませんでした。
50年前、この国の20代の投票率は66.7%でした。50年で半分以上の人たちが投票に行かなくなりました。色んな人が色んな理由を述べています。何不自由なく過ごす生活で不満がないから。政治以外にも未来をつくる方法が出てきたから。誰を選んでも一緒だから。だけど、どの理由もただ投票率が下がった理由を説明するだけで、「投票しなくていい」理由はありません。

民主主義のために闘う香港からのメッセージ

投票するということの美しさを改めて確認するために、今日はあるショートムービーをもってきました。2年前、香港での民主主義デモを覚えていますか?友人と僕は、日本の友人らに民主主義の重要性を思い出してもらうために、そのデモのショートムービーを制作しました。(動画はこちら。なおこの動画は香港のデモの際に作成されたものであるため、時制等が現在とは異なる点をご了承ください。)

未来のために投票しよう
本当に強い言葉です。このビデオを見た後、僕は、ひょっとすると投票するという行為自体はそんなに重要でも美しくないのかもしれない、投票する前に理想的な社会を思い描くことこそが美しいのかもしれないと感じるようになりました。

4年に1度、皆さんは自分と子どもたちのために未来を創ることができる

日本では1900万人の人々に投票権がありません。なぜかって?18歳未満だからです。彼らの代わりに30年、50年というロングスパンの視野で理想的な未来のための投票ができるのはまさに僕たちだけです。それはまさに僕たち世代にしかできないことです。

一票で何も変わらないなんて言わないでください。一人の力で簡単に結論が左右されないために、人類は集合知を実現する民主主義を選んだはずです。ゆっくりゆっくり、集合の力で物事を動かすことが民主主義のはずです。
政治家は誰も信用出来ない、誰を選んでも一緒だなんて言わないでください。じゃ、いつそういう政治を終わらせるんですか。これからはそういう政治家が出てこないために、今から行動しましょうよ。

4年に一度、皆さんには国からハガキが届きます。そのハガキは、単なる入場券ではありません。そのハガキが届くということは、「あなたはこの国にいます。この国の未来を決めることができます」ということを証明してくれるのです。皆さんは、自分たちの住む街、国の未来を決めることができる。僕が、僕の子どもたちのためにできることは、こうやって皆さんにお願いすることまでです。ハガキがくる、国があなたの声を聞きたいという、その幸せを噛みしめてください。

清き一票はいりません。美しい一票を投じてきてください。「民主主義」という言葉をフィクションではなく、ノンフィクションにしましょう。

選挙ドットコム副編集長 徐東輝

この記事をシェアする

徐 東輝

徐 東輝

弁護士(法律事務所ZeLo/株式会社LegalForce)、NPO法人Mielka代表、JAPAN CHOICE運営者。京都大学法学研究科に在籍中、ivote関西を創設。「若者と政治」をテーマにした事業を展開し、2年間で1万人以上の学生らにアプローチする。2015年に世界経済フォーラム(ダボス会議)グローバルシェイパーに選出。同年、『在日韓国人京大生が教える、憲法の視点からの日韓問題』を出版。https://twitter.com/tonghwi17

選挙ドットコムの最新記事をお届けします

採用情報

記事ランキング

ホーム記事・コラム投票権がないからこそ話せる「投票権の美しさ」(選挙ドットコム副編集長:徐東輝)

icon_arrow_b_whiteicon_arrow_r_whiteicon_arrow_t_whiteicon_calender_grayicon_email_blueicon_fbicon_fb_whiteicon_googleicon_google_whiteicon_homeicon_homepageicon_lineicon_loginicon_login2icon_password_blueicon_posticon_rankingicon_searchicon_searchicon_searchicon_searchicon_staricon_twitter_whiteicon_youtubeicon_postcode