「女性議員が増えることで、本当に、暮らしやまちは良くなるのか?」(小川晶群馬県議会議員へのインタビュー・聞き手:池田麻里)
2019/02/01
【連載:公選法のプロが解説】今回のテーマは、先日行われた衆議院小選挙区北海道5区補欠選挙の立候補者池田まき氏に関連して行われた「池田まきでんわ勝手連」の電話掛けについてです。
本題に行く前に、この選挙について、簡単に説明しておきましょう。
自民党の和田義明氏は、三菱商事を退社後、町村信孝事務所に入所。町村氏は和田候補にとって義理の父親で、この選4月24日、世間の大きな関心を集めた衆議院小選挙区北海道5区補欠選挙が行われました。(同時に、衆議院小選挙区京都3区でも補欠選挙が執行されました)選挙事由は町村信孝前衆議院議員の死去による補欠選挙(改選1名)。立候補者はともに新人で、自民党公認の和田義明候補と、無所属の池田まき候補との一騎打ちでした。
いわば「弔い合戦」。和田氏は、公明党、日本のこころを大切にする党の推薦を受け、選挙選に挑みました。一方の池田まき候補は、民進党、共産党、社民党、生活の党と山本太郎となかまたちの推薦を受けての初出馬。この選挙は、この7月の参院選の前哨戦という位置づけもあり、北海道だけでなく全国から注目を集めました。当初、北海道5区に地盤のある和田氏が圧勝と予想されていましたが、池田氏の猛追を受け大激戦となり、勝敗の予測は投開票日当日まで入り乱れていましたが、結果は1万票あまりの差で和田義明候補の勝利に終わりました。
(イケマキ電話大作戦 Facebookページより)
ここで、池田まき氏の善戦を支えた要因のひとつともみられるのが「池田まきでんわ勝手連」です。池田まき候補は、野党各党ほか市民団体等から支援を受けており、その市民団体等が主導して、Facebookページ「イケマキ30000本 池田まきでんわ勝手連 イケマキ電話作戦、3万本!」と名乗り、Facebook上で日本全国から電話をかけてくれる人を募り、電話帳リストを使って池田まき候補への投票を呼びかけました。
The Vote.JPの記事によれば、このFacebookページへの参加者は、5月24日早朝現在で594名の「参加表明者」があったとのことです。「池田まきでんわ勝手連」の報告によれば、ボランティア数は594人、総電話数は50917件にのぼったとのことでした。
(イケマキ電話大作戦 Facebookページより)
では、選挙における電話による選挙運動について、ここから公職選挙法に照らして、見ていきましょう。
皆さんも、選挙前になると「〇〇さんを、よろしくお願いいたします」という電話を一度や二度は受けたことがあるでしょう。再三かかってきて、迷惑を受けた読者もいらっしゃるかもしれませんね。この電話作戦という行為が公職選挙法違反にあたるのかあたらないのかですが、電話作戦の期間が告示日から投開票日前日までであれば、電話掛け自体は直ちに公選法違反にはなりません。
なぜなら、電話による投票依頼では相手と直接面談することがありませんので、基本的に金銭の授受、及び授受の可能性が極めて低い、もしくは電話では直接に金銭授受ができないからです。一方で、家を1軒ごとに訪問して投票を依頼したり、演説会や候補者の名前の宣伝をする「戸別訪問」は、公職選挙法の第138条第1項、第2項において、禁止されています。なぜなら、「戸別訪問」では、相手と面談し、その場で金銭授受をしたり、その約束をしたりすることが密室で行われる可能性があるからです。
しかしながら、もしも電話作戦に参加した者に対して選挙事務所からその報酬が支払われれば、それは選挙運動をしたことに対する報酬ということになりますので、これは運動員「買収」にあたり、公職選挙法違反になります。
それでは「でんわ勝手連」の何が問題なのでしょうか。それは、この電話作戦を呼びかけた者の中に現時点では選挙運動が禁じられる満年齢20歳未満の者がいたのではないかという点にあります。
前出のThe Vote.JPの記事では、この電話作戦が「選挙運動にあたる場合」に該当するとした前提で、自身のFB上で西穂波さんが電話作戦への参加呼びかけをした行為を取り上げ、この時点で、西さんは、まだ未成年者だったのではないかとの疑問を呈しています。また、実際に電話作戦に参加した人達の中にも未成年者がいたのではないかという疑問もあります。
(西穂波さんのFacebookより)
ご承知のように、選挙権年齢を18歳以上に引き下げる改正公職選挙法の施行は、間もなくの6月19日からであり、施行前の同月18日以前の未成年者の選挙運動については、当然、改正前の公職選挙法第137条の2に違反することになります。
それでは、西穂波さんが記事どおりに仮に未成年だった場合には、どうなるのでしょうか。まず第三者が、西さんの行動が公職選挙法に規定する選挙運動になるのか否かについて取り締まり当局が捜査したうえで事実認定をし、第137条の2第1項または第2項に違反するのかを判断し、容疑が固まれば立件という流れになるでしょう。
(イケマキ電話大作戦 Facebookページより)
もうひとつ問題なのは、「池田まきでんわ勝手連」が、池田まき候補の陣営と意思を通じていたのか、それとも全く関係なく電話作戦を行っている団体なのか、つまり勝手なのか勝手じゃないのかによって、事情が変わってくるのです。どのように変わってくるかというと、仮に「池田まきでんわ勝手連」が池田まき候補や、総括主宰者、出納責任者など選挙運動の重要な地位を占める人たちと意思を通じて電話作戦を行ったとすれば、それに要した電話代金は、選挙運動費用に算入しなければなりませんので、池田まき選挙事務所の出納責任者に明細を添えて申し出る義務が生じてきます(第186条)。
記事内では、さらに「池田まきでんわ勝手連」が作成したとされる電話での応答マニュアルなるものも掲載されていました。しかし、電話でのやり取りというのは、相手の出方次第のところがあるので、マニュアルどおりに話せない状況も出てくるでしょう。その場合、電話掛けをした者自身の判断によるところが大きくなります。マニュアルどおりであっても機械的労務ではなく選挙運動であると解されますし、そのような場合はなおのこと選挙運動をしたということになるでしょう。
「18歳選挙権」が施行され、若い人が積極的に選挙に関心を持ち、参加することは素晴らしいことと思います。彼らにとって、最も身近なツールの一つといえる携帯電話やSNSを使用した選挙活動が、今後、さらに増え続けていくことは想像に難くありません。
しかし、初めて選挙に関わる彼らに対して、私たち大人が公職選挙法の規制を知らないで指示してしまったり、あやふやな知識で答えてしまったらどうなるでしょう。若い者たちを心ならずも公職選挙法違反者として傷つけてしまったらと思うと胸が痛みます。
さらに、若者同士が公職選挙法の知識もなく選挙活動をしてしまった場合、これも懸念されます。初めて選挙に参加する18歳の若者たちに対して、公職選挙法に則った、選挙に関わる事項に対しての「判断力」「判別力」を養っていく教育が、今後一層、必要になります。これは、知識として学んでいかなくては会得できないものなのです。
なぜなら、公職選挙法では買収罪などは自然犯(殺人・窃盗・放火など、いわば刑事犯)ですが、その多くが行政犯(行政上の取締法規に違反する行為で罪となるもの、いわば刑式犯)だからです。
こうした選挙のルールに関わる教育に関して、受け皿となる機関を構築していくことは、今後の大きな課題となるでしょう。
この記事をシェアする
選挙ドットコムの最新記事をお届けします