文部科学省は新しい学習指導要領の骨格案で、2022年をめどに高校の必修科目として「公共」を導入することを明らかにしました。18歳選挙権の導入とセットとなり、高校生のうちから投票の意味を理解し、政治参画に必要な力をつけることを目的とした授業で、社会保障や契約、家族制度などを週2時間ほど扱います。
投票年齢が引き下げられたからといって若者の政治意識が自然に上がるかと言われれば、そうではありません。学校での教育をはじめ、主体的な判断が行えるだけの土台作りがとても大切になります。その意味で「公共」授業はとても大切な役割を持っていると言えるでしょう。
「公共」の授業は一言で表すと、「主権者教育」を目指す授業です。
暗記が中心だった今までの「公民」や「現代社会」などの授業とは異なり、社会で起こっている問題に対して自分なりの意見を持つための科目です。
例えば、定数は◯◯人、◯◯年に何が起こった、などの暗記が中心ではなく、「このテーマについてどう考えるか」という自分なりの意見が問われる内容となっており、討論やディベート、模擬選挙などの手法を用いて、社会保障・政治参加・防災・雇用などの今日的な話題を題材に授業が行われます。
海外では日本より先駆けて主権者教育が必修科目として導入されています。
今回はその一例をご紹介します。
◯イギリス
1990年代から若者の政治離れが深刻になったことを理由に小中学校で、主権者教育が導入されました。導入に際してまとめられた「クイック・レポート」には、主権者教育は「市民の自治と参加による権利と責任という理念の下、投票行動を含め主権者として政治や社会に参画していく意識と知識、責任感などを体得するための新しい学校教育の考え方」と提唱されています。
実際の授業では模擬投票などを通じて、時事問題や社会課題に関する知識だけではなく、意見の対立を解決する方法を学びます。
◯アメリカ
1990年代頃から主権者教育が導入されました。
授業では、教師が時事問題を提示し、生徒たちは賛成反対それぞれの立場から、その場で情報収集を行い判断します。
小学校の段階で情報源の必要性を徹底的に教え、自分の意見を決める判断力を養うことで、投票の意味や、投票の罠について学びます。
主権者教育導入後の2004年の大統領選では、約150万人の子供が11万カ所の投票所で模擬投票所をおこなったと言われています。
イギリスやアメリカが約30年前から主権者教育を導入していたことを考えると、大統領選挙の前の盛り上がりなど、とても納得感を感じます。
日本でも2022年から導入される予定の「公共」。これが、日本人の政治感にどのような影響を与えるのか、教育現場の手腕が問われます。
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