25日、読売新聞の朝刊に「同日選挙見送り」との見出しが踊った為に、永田町は奇妙な雰囲気に包まれた。ある民進党の代議士は、「読売の記事だとにわかに信じがたい。官邸が意図的に流しているのではないか」と電話をして来た。一方で自民党清和会の秘書は「代議士が派閥の総会から部屋に帰って来て、選挙はやっぱりあるわよ」と言われたと教えてくれた。
むろん本音はなければいいのに、ないのかもしれないという安堵感を一様に感じていることも確かで、それでも選挙事務所やポスターの準備を進めているところが少なくない。私の経験からは、中曽根内閣時代の死んだふり解散の時によく似ているが、実のところ安倍総理の胸先三寸でどちらにも転ぶ可能性があるとしか言いようのない状態にある。それだけに、にわかに読売の記事を信じれるほど単純な情況ではないというのが報道を受けての共通した認識だった。
この間、30人くらいの代議士、秘書、政党職員、記者、役人たちと情報交換をしたのだが、意見は二つに別れた。ただもうないと思うと言いながらも、あるいは、万が一という警戒心を高めており、「もしこれで解散があったら、安倍総理によるたぬき解散ですね」と、後輩の秘書が笑いながら言っていた。
嬉々としてサミットに臨む総理の姿は、解散の「か」の字も考えたことがないと何度も言明しながらも、あらゆる可能性を練りに練っているにも関わらず、ある意味ではそれ自体がウソの言葉だけに、なかなかのものだと何故かみんな得心していたのが不思議だった。
そんな中で、官邸に近いある事情通の友人が、読売の記事を根拠づける面白いストーリーをまことしやかに語ってくれた。真実かどうかは全く定かではないが、なかなか頷ける話しではある。というのは、24日に自公党首会談が開かれたことはご案内の通りで、ここのところ安部総理が消費増税の先延ばしを決めたのではないかとの憶測か飛んでいたので、軽減税率の導入を主張して来た公明党にとっては穏やかな話しではなかった。
官房長官が財務省の次期事務次官候補に、「前回のような増税への根回しをして延期に反対するようなら次官にはさせない」と言ったと聞いたが、サミットでの安倍総理のリーマンショック以来の経済危機発言は、まさに増税先延ばしを示唆したものであり、先の自公会談でも山口代表にその思いを伝え、同意を得たものだと推測できる。
しかし、その時に山口代表はおそらく「増税先延ばしに反対しない代わりに同日選挙だけは避けて欲しい」と要請し、よく検討する、もしくはならば早いうちの解散で合意したのではないかと説明するのだ。ではいつ解散なのかと聞くと、ロシアのプーチンと会談をした直後、北方領土で何らかの成果を得て、解散総選挙に踏み切ると言うのである。私はそんなに簡単に北方領土での進展を得られるなんて信じられないと反論したのだが、事情通の彼は自信ありげに言い切っていた。
衆議院の解散は、参議院とともにやるからこそ野党共闘を分断し、準備不足の民進党を翻弄させることが出来るのであって、すでに衆参ダブルでは憲法改正に必要な3分の2の勢力を確保しているのに、9月頃に単独でやる意味があるのかと私は尋ねたが、すっきりとした答えは返ってこなかった。むしろ安倍総理と山口代表は一世一代の猿芝居をしているのではないかと勘繰りたくなるのだが、公明党がダブル選挙に反対する理由もよくわかるのだ。
とはいえ、国政選挙をわずか数ヶ月で二回も出来るのだろうか? 増税先延ばしについて信を問うなら参議院選挙でも充分だ。安部総理が宿願の東京オリンピックを現職のまま迎えようとするならば、今年中に衆議院を解散するべきであり、だとしたら最大の好機はダブル選挙しかないと思うのだが、ほんとうにそのチャンスを放棄するのだろうか。
最後はみんな疑心暗鬼。でも27日になってみると、だいぶ同日選挙への警戒心が低くなっているのを痛感した。少数政党の代議士が「もう同日選挙はないですね。ホットしました」と笑みを浮かべながら言っていた。熊本のことを考えると解散はおかしいと。永田町の空気は一日で代わっていくものなのだとあらためて実感した。
でも、それだけにサプライズ同日選挙の効果は最大限に膨らみつつあるようにも思うのだ。1986年、当時の中曽根総理は5月27日に閣議を開き、6月2日の国会招集を決めて、冒頭死んだふり解散を行い選挙で大勝した。今回でも6月1日に国会を一度閉じて、数日後に閣議を開き国会招集を不意討ちすれば同じことはできる。増税先延ばしはそれくらいの価値がある決断なのだ。歴史の教訓に習えば、その誘惑にかられたとしても決しておかしくない。
安倍総理は独り歴史のただ中に立って決断する重い立場にあることを今ほどがっしりと実感していることはないだろう。サミット、広島訪問、閣議、不信任決議案、否決、そしてその後にサプライズがあるのかどうか、私はまだまだ揺れ動く気持ちを押さえられないでいる。
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