和歌山県御坊市の市長選が22日に行われ、現職市長が全国最多となる7回目の当選を決めました。注目されたのは市長の「多選」ではなく、敗れた候補者。御坊市出身で、安倍政権で権勢をふるう二階俊博自民党総務会長の身内が大差で敗れたのです。
御坊市長選は無所属で6期目の現職、柏木征夫氏(75)と無所属新人で自民、公明推薦の二階俊樹氏(50)による一騎打ち。結果は柏木氏が9375票を集め、5886票だった二階氏を突き放しました。投票率は78・10%で、前回を約20ポイント上回りました。
元々、県職員だった柏木氏を擁立したのは二階総務会長。ところが、今回は地元で長く秘書を務める長男を擁立し、自民、公明の推薦も取り付けたために保守分裂選挙となりました。二階氏系の一部の地方議員は柏木氏支持に回り、地元政界を二分する血みどろの戦いとなったのです。
御坊市は「二階大国」と言われる和歌山3区の中でも、二階氏の出身地である「地元中の地元」。二階氏は当初、情勢を楽観していたようですが、苦戦が伝えられると国会そっちのけで地元に張り付き、慣れない街頭演説を繰り返しました。
中央からは自民党の稲田朋美政調会長や小泉進次郎氏、公明党の漆原良夫元国会対策委員長らが続々と選挙応援に入り、無名の若手議員にも党幹部より動員がかけられました。自民党の「影の幹事長」とも称される二階氏の影響力の大きさがうかがい知れます。
建設族の代表格である二階氏は地元建設会社の応援も受けましたが、ふたを開ければ大差の敗北。選挙結果を受け、永田町でも衝撃が広がりました。ある自民党関係者は「父親の威を借る俊樹氏の評判が悪かったとはいえ、まさか負けるとは」と話しています。
マスコミでは「二階氏の権勢に陰り」などとも報じられていますが、果たして本当でしょうか。二階氏は新進党所属だった1996年以降、7回連続で選挙区当選。自民党への逆風が吹き荒れた2009年も民主党候補に競り勝つなど抜群の選挙の強さを誇ります。
2014年の前回選挙では民主党など主要野党が候補の擁立すらできず、共産党候補に圧勝。地元・御坊市では有効投票総数1万800票のうち、8600票余りを獲得しています。今回、長男が市長選で敗れたからと言って、次回の衆院選で当選が危ういとは思えません。
むしろ、今回の御坊市長選では「地方」にまで影響力を行使しようとする「中央」への反発が広がった可能性があります。自民党の大物政治家として、地元と中央の懸け橋にはなってほしい。しかし、だからといって親族を首長に送り込んで地元行政まで牛耳るのはやめてほしい。こんな思いが地元政界や有権者の本音なのかもしれません。
二階氏がこれまでと変わらず大量票を獲得すれば、「中央は中央、地方は地方」という有権者のメッセージにほかなりません。最近流行りの中央から応援弁士を連れてくればいい、という地方選のあり方も再考の余地がありそうです。
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