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【おさらい】アメリカのケリー国務長官の広島訪問って何がすごかったの?謝罪するしないとかって?

2016/5/2

選挙ドットコム編集部

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米国務長官広島訪問って何がすごいの?

G7の各国外相、広島の平和記念公園、原爆慰霊碑に献花

4月11日、広島市で開かれたG7(主要7カ国)外相会合に合わせて、各国の外相が広島市の平和記念公園を訪れたことがニュースになりました。
このニュースを見た人の中には、「G7の会合が日本で開かれたのか。初めて知った。」とか「平和記念公園行ったのか。へぇ」くらいに思っている人がいるかもしれません。でも待ってください。実はこれ、とっっっってもすごいニュースなのです。

記事にはこう書いてあります。
「第2次世界大戦で原爆を投下した米国の現職閣僚による同公園の訪問は初めて。」
そう、戦後71年目にして実はアメリカの首脳による平和記念公園訪問は初めてなのです。
もちろん、平和記念公園はただの公園ではありません。第二次世界大戦中に広島に落とされた原爆の被害者の慰霊碑を持ち、世界平和を訴える特殊な施設です。
なぜ、この施設を訪問することが特別な意味を持つのでしょうか。今回はこのテーマについて解説したいと思います。

 

「正義の国家」という考え方

かつて第二次世界大戦で日米は直接戦っていました。日本にとって第二次世界大戦が「軍部の暴走」として反省的に語られることが多いのに対し、アメリカからすれば第二次大戦は「ファシズム(独裁)を破った正義の戦争」です。戦争を戦った軍人は英雄としてアメリカ社会で賞賛されました。特に軍人として大戦で活躍したアイゼンハワーやケネディは、国民からの人気を集め、大統領にまで昇りつめました。このように「正義の国家」像は戦後アメリカに根強く残ることになったのです。

では、実は第二次世界大戦が「正義の戦争」でなかったらどうなるのでしょうか。「正義の国家」という前提は崩れ、戦争で戦った軍人の名誉は失墜してしまうのです。そもそも、なんのために自国の兵士を戦場に派兵して死なせてしまったのか。アメリカにとって原爆投下の是非をめぐる問題は、「正義の国家」の前提である「正義の戦争」イメージを壊しかねない重大な問題なのです。

 

原爆投下の是非論

原爆投下は多数の犠牲者を生み、生存者にも大きな後遺症を残しました。確かに真珠湾攻撃によってアメリカとの戦争を始めたのは日本であり、アメリカ側としても自国の犠牲者を減らす必要性があったとはいえ、果たして本当に原爆投下は必要だったのでしょうか。原爆投下の是非をめぐる問題はここにあります。

日本は主に原爆投下の残虐性、不必要性から原爆投下を批判しました。しかし、アメリカでは「正義の国家」という問題が絡み、この問題はタブーとなってしまいました。「原爆投下への謝罪」というのは世論の強力な反対にあってきたのです。

 

国民の世代交代とオバマ大統領の登場

しかし、アメリカ国民も原爆投下を正当化し続けているわけではありません。1945年の調査では原爆投下を支持する割合が85%を超えていましたが、2015年の調査で「正当化される」としたのは55%余りでしかありません。18歳ー29歳の若者に限れば、支持するのは47%に止まります。アメリカでも世代交代は進んでいるのです。

また、オバマ大統領の存在も忘れてはならなりません。実は、オバマ大統領は2009年チェコの首都プラハにおける演説で核兵器の廃絶を訴え(いわゆる、「プラハ演説」)、同年のノーベル平和賞を受賞しました。オバマ大統領にとって核兵器の廃絶は個人的なテーマなのです。
しかし、原爆を投下し、今なお核兵器を所有するアメリカの大統領が核兵器の廃絶を訴えても示しがつきません。最低限、原爆による被害の大きさを認めるメッセージは出したかったのでしょう。とはいえ、原爆投下を謝罪することは世論の反発を招く危険がありました。

しかし、2016年、ついにオバマ大統領の残りの任期が1年を切りました。不人気な政策を行うことで議会との関係悪化を恐れる必要がなくなったのです。そこで、オバマ大統領は、大統領8年の成果として、核兵器廃絶とまでは行かなくでも、原爆の被害の大きさを認める公式メッセージを出すことを選びました。その最初の一歩が、「広島平和記念公園にケリー国務長官を派遣する」ということだったのです。

 

謝罪した訳ではない。今後は一体どうなるの?

ここで注意しなければならないのはケリー長官は原爆投下の誤りを認めた訳でも謝罪した訳でではありません。しかも、声明を出したのは大統領ではなく国務長官(日本における外務大臣)です。その意味で原爆投下の正当性を主張する声にかなり配慮したことになります。

そうなると次の関心は「オバマ大統領が謝罪するのか」という点に移ります。朝日新聞はアメリカ政府高官の話として「核兵器を唯一使った国として、米国は世界の核軍縮に向けて努力をする責任がある」というコメントを紹介しています。
アメリカの保守系、リベラル系の各新聞も5月のオバマ大統領の日本訪問時に広島を訪問する可能性について言及しています。ここに来て一気に和解の機運が高まってきているのです。

原爆問題が日米のわだかまりの一つであったことは間違いありません。そのわだかまりが今回解けるのかもしれないのです。また、次の大統領に核廃絶の夢というバトンを渡すかもしれません。これだけ大きなことが今回起きていたという訳です。

<参考>

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS10H1J_R10C16A4MM0000/
http://www.pewresearch.org/fact-tank/2015/08/04/70-years-after-hiroshima-opinions-have-shifted-on-use-of-atomic-bomb/
http://www.asahi.com/articles/ASJ4B5K8HJ4BUTFK005.html

 

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