和田135.824 池田123.517
横一線とマスコミが報じて来た割には12.307票の差が開いて注目された補欠選挙は終わった。
私は戦いの過程でいくつかのポイントをこれまで指摘してきた。それは
①単純に前回の町村氏と、民主候補+共産候補の合計票の差は5000票しかなく、接戦になってしかるべき選挙区だったということ。
②野党候補が討論会の際にカンペを見ながらの主張が目立ったこと。
③さらに、個別の体験を主として演説し、そのことが後半は飽きられて来たこと。
④市民運動が選挙運動というより政治活動になりすぎていること。
そして何よりも、
⑤熊本地震によって空気が変わったこと。後半戦において好意的だった地元紙でさえ、野党陣営に手詰まり感と報じていた。
対する与党陣営は、
⑥弔い合戦を全面に出しつつ、
⑦経済政策と災害対策を主張して、手堅い戦いを進めて行った。
特に、当初は
⑧新党大地が自民党支持を打ち出し、そのことへのマイナスイメージを批判する意見が多く聞かれたが、結果的には新党大地の支援を取り付けたことが勝因の一つにもなったのである。
鈴木親子は転進の理由として、共産党とは一緒にやれないということを強調し、与党の応援団は繰り返し、
⑨民進党と共産党の協調は欺瞞だと、その野合を批判した。
勝手連的な市民運動とともに保守的な有権者の警戒感を煽ったことは否めない現実だった。
選挙は総合力の戦いであり、ぎりぎりのところでは、それぞれの陣営と候補者本人の気迫と情熱に帰するところが大きいが、
⑩野党の派遣された秘書たちは陣営の気の緩みを強く気にしていたし、与党の秘書たちは厳しい戦いだと危機感でいっぱいだった。
私はだから前回の与野党5,000票の差を基準にして、それ以内で収まれば野党候補の善戦だと認識し、前半戦ではどれくらいその差が縮まるかとばかり見ていたが、地震以降の後半戦は意外に1、2万票差に広がるのではないか、どれくらい前回より差がつくのかと見るように変わって行った。
細かいことだが、最終段階で野党陣営は
⑪小沢一郎氏の応援を断ったと聞いて、ここが限界だと感じた。
僅差だと読んでいたならどうして、もっと社民党も含めて野党連合の統一感を出さないのだろうかと率直に思ったものだった。ああ選挙に強い民主の若手エースの徹底した選挙戦術もここまでかと思った。
ともに国会議員と秘書が300人近く全国から押し寄せ、久しぶりに緊迫感のある選挙になったと私は日々の戦いに関心を持ったが、しかしこれだけ全国から注目されながらも結果的には前回よりも投票率を減らしたのである。
⑫野党候補が反原発を全面に出したので、連合の北海道電力労組などは動かなかったとか、
⑬千歳で与党候補が差をつけたのも、民進党の元首相がゲートに立ったことや、反安保の主張が自衛隊票を失ったとかの指摘もあるが、一昨年の衆議院選挙がそうであったように、
⑭実は原発、安保、憲法、TPPなどの国策が思った以上に主たる選挙の争点にはならなかったということなのだ。
⑮期日前投票では10ポイントも与党が勝っていたことから、やはり宗教団体の底力をあらためて再認識させられたとともに、
結果的には⑯北海道5区の有権者の無関心が、安倍政権を支え、与党を勝利に導いたということである。
投票率を前回より減らしながら、与党候補が7,000票増やして競り勝ったことは、
⑰まだまだ安倍政権を批判するものの、政権を委ねるに値する「未来への責任」を納得させる代案が定かでないことを反省しなくてはならないと思うのだ。
世間やマスコミの見方と違って、猛追して善戦したので戦略的には間違っていなかったと民進党の幹部は語っていたが、全く甘い。そんな認識では参議院選挙でかなりの議席を減らし、その分共産党が躍進することが必至で、自民党は逆に危機感を増して、最低でも現状を維持することになるのではないかと見ている。
しかし、安倍総理は強運だ。先にも述べたように、選挙は総合力の戦いだ。とはいえ不謹慎なことだが、地震に大きく支えられたことは否めない事実である。それだけにあらためて熊本地震対策に万全を期して欲しいものだと強く念願するものである。
この記事をシェアする
選挙ドットコムの最新記事をお届けします