
選挙で当選・落選にかかわる「最後の議席」をめぐる得票数が同じだった場合はどうなるのでしょうか。
2015年に行われた統一地方選挙では、熊本市(南区)や北海道の神恵内(かもえない)村、大樹町(たいきちょう)、遠別町(えんべつちょう)の議会議員選挙で最後の議席に同数の候補者が並ぶ事態が起こりました。
特に有権者の少ない自治体の議会議員選挙では、得票数が同じになるケースも多いようです。
それでは、どのように当選と落選を決めるのでしょうか
公職選挙法では「当選人を定めるに当り得票数が同じであるときは、選挙会において、選挙長がくじで定める。」とあります。
つまり「くじ引き」で当落を決めるのです!
ここで、「選挙会」とは、選挙を管轄する総務省のウェブサイトによれば「各選挙では、開票の結果を開票管理者からの報告によって確認するなどしたうえで当選人を決定する選挙会が置かれます。」とあります。
「選挙長」とは、同じく「この選挙会に関する事務を行うのが選挙長です。選挙長は、立候補の届出の受理なども行います。また、選挙長は、その選挙の有権者の中から、その選挙を管理する選挙管理委員会によって選任されます。」とあります。
この選挙会でくじ引きが行われるのです。くじ引きの具体的方法は各選挙管理委員会で決めますが、棒の先に数字が書いてある「棒くじ」が使われ、数字が小さい棒くじを引いた候補者を当選者とする自治体が多いようです。
では、くじを引く順番はどのように決めるのでしょうか。多くは予備抽選として同じように棒くじを引き、小さい数字を引いた候補者から順番で本番の抽選を行います。
それでは、2015年の熊本市議選のケースを見てみましょう。4月12日が投開票の選挙には、定数8の南区に現職と新人の合計11人が立候補しました。
開票の結果、最後の8人目の議席に現職候補2人が4515票の同数得票で並びました。有権者数の少ない地方の選挙ならともかく、政令指定都市で4千票を超える得票が同数となるのは珍しいケースです。
4月14日に区役所の会議室で開催された選挙会で、候補者2人によるくじ引きが行われました。使用される棒くじには1から10までの数字が書かれ、小さい数を引いた候補者を当選とする方式です。
まず、予備抽選でくじ引きの順番を決めてから本番の抽選が行われました。最初の候補者が引いたのは「3」。残り9本から3より小さい数を引かねばなりません。確率は9分の2。率にすると2割2分2厘です。
二人目が引いた数字は「10」。くじを引いた本人は思わず苦笑。
最初にくじを引いた候補者がめでたく当選となりました。
くじで落選した候補者はもちろん、当選となった候補者も、安堵の心と落選者に対する複雑な思いが胸中をよぎったそうです。
天国と地獄、明暗を分けるドラマチックな「くじ引き」が、あなたの身近な選挙で起こるかもしれません。
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