選挙ドットコムではこれまでの記事を通して、社会を変える・政策を実現するためには、一有権者として選挙を通じて意思表明をすることや、はたまた投票したい政治家がいない場合は「自分が立候補する」という選択肢を提示してきました。政策の実現と聞くと、「デモ」を思い付く人も多いでしょう。
しかし実は、他にも選択肢があるのです。まだまだ知られていませんが、もしかするとその効果はデモや投票よりも高いかもしれません!
『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(明智カイト/光文社/2015年12月/780円+税)は、デモ・選挙・立候補ではない新しい選択肢「ロビイング」について解説した本です。
ロビイングとは、国会議員や官僚に対して、直接政策の実現を訴えかける行為です。
政治家に直接会い、「◯◯という問題に困っているので、△△のように変えて欲しい」と伝えることを中心にしながら、「世論」を作るためにテレビやメディアに取り上げてもらうようにキャンペーンを行うなど、その活動は多岐にわたります。
政治家に対しても、一方的に問題を伝え、批判するのではなく、具体的な政策の提案までも行います。さらには、「そもそも、それって本当に問題なの?」「重要な問題なの?」「どのくらい困っている人がいるの?」と、問題提起のために調査を行うことも。
調査→政策提案→議員へのプレゼンテーション→マスコミへのPR
などなどと、時には調査会社、政策シンクタンクのような役割から広告代理店のような役割まで、様々な役割を担っていきます。海外では「ロビー活動」や「ロビイング」は一般的ですが、日本ではまだまだその言葉自体、聞き慣れない言葉でしょう。
ちなみに、アメリカにはタバコ業界のロビイングを題材にした「Thank You for Smoking」という映画があります。主人公は、タバコ業界から報酬をもらいながら、国会議員たちがタバコを規制するような法律を作らないよう働きかけていきます。政治の裏側がコミカルなタッチで描かれている面白い映画です。
日本でも、ロビイングやロビー活動というと、医師会や農協、経団連などのお金と票を持っている利益団体が、政治家に対して圧力をかけていくというイメージが強いかもしれません。しかしながら本書「ロビイング入門」では、フローレンス代表理事の駒崎弘樹氏による「待機児童問題」解決に向けたロビイングや、シノドス編集長の荻上チキ氏による「いじめ問題」の解決、性的マイノリティの問題などなど。これまでお金と票を持っていないと思われてきた社会的弱者や課題を解決するための手法として、ロビイングが使われています。
課題を解決するための方法として、社会的起業や寄付文化が徐々に広まりを見せている日本において、次は「ロビイング」が根付いていくのかもしれませんね。
政治家になるというのは、勤めている会社を辞めなければならなかったり、お金もかかったりと、とてもリスクが伴います。当選後も政党に所属すると、自分が取り組みたい政策を提案できないかもしれません。しかし、ロビイングは1つの課題のみに焦点を当て、政党を超えて取り組むことができます。その意味では、特定の政策を実現させるためには政治家になるよりも有効な手段かもしれません。
また、デモのような一方的な否定ではないため、時には政治家に感謝されることもあるそうです。一見、大規模なお祭りのようなデモの方が楽しそうですし、地道に活動していくロビイングは地味に見えるかもしれませんが、政策を実現させるためには効率の良い「少数精鋭の突破法」かもしれません。
学生時代から政治教育や投票の呼びかけを行い、近年では政治家を志望している僕の中には「ロビイング」という選択肢はこれまでありませんでした。その意味でもとても面白い1冊です!
それにしても、「ロビイスト」をされている著者の明智カイトさんはどんな人なのでしょうか。ロビイングを始めたきっかけも気になります。
ということで、続く記事では明智カイトさんインタビューを行いました。
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