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政治家は年賀状を出したら違反!?年末年始のクリーンな活動を伝授|選挙プランナーによる必勝講座【選挙ノウハウ】

2021/12/21

松田馨

松田馨

年の瀬も押し詰まり、今年お世話になった方への挨拶や年賀状の準備をされている方も多いのではないでしょうか。年末年始は忘年会や新年会などの行事も多く、皆さんも特に忙しい時期になるかと思います。

ただし、政治家の場合となると事情が違います。一般的には当たり前の慣習であっても現職政治家・候補者・立候補予定者(以下、政治家とする)には制限されている行為が数多くあり、実際に「公職選挙法違反」の疑いをかけられニュースに取り上げられる事例は後を絶ちません。

今回は、特に年末年始に関係のある公職選挙法の規定について紹介します。

お歳暮を贈るのはNG

政治家が自身の「選挙区内にある者」(*)に寄附をすることは、いかなる名義においても禁止(**)とされています(寄附の禁止)。「寄附」とは、財産上の利益を提供することを指し、金銭だけでなく物品なども含まれるため、政治家が「選挙区内にある者」にお歳暮を贈ることも禁止されています。

このことを新人の方が知らずに、例年通りお歳暮を贈ってしまうケースがありますので、十分注意してください。

図1:出典「フルカラー図解 地方選挙 必勝の手引」p.66

(*)「選挙区内にある者」とは、選挙区内に住所・居所を有する者や滞在する者の他、法人や各種団体なども含まれます。
(**) 政党その他の政治団体等や親族に対するもの及び政治集会・教育集会に関し必要やむを得ない実費の補償は除く。

忘年会でのおごりもNG

この時期は忘年会や新年会などが続きますが、政治家が「選挙区内にある者」に飲食代をおごったり、設定された会費以上に多く払ったりすることは、先ほどの寄附の禁止に抵触する恐れや、選挙の運動買収を疑われる可能性が高く、特に注意が必要です。

日頃お世話になっている方々や、支援者の方々をねぎらうために食事を振る舞いたいという気持ちは一般の世界では理解できますが、政治家は公職選挙法によって寄付が禁止されていることを忘れないでください。忘年会や新年会では会費以上の金額を支払わない、割り勘にするなどの注意が必要です。

図2:出典「フルカラー図解 地方選挙 必勝の手引」p.61

年賀状を送るのもNG

年始の挨拶に欠かせない年賀状ですが、政治家が自身の「選挙区内にある者」に、年賀状や寒中見舞状、クリスマスカードなどの「あいさつ状」を出すことは禁止されています(あいさつ状の禁止)

ただし、年賀状を受け取ることはでき、またその答礼としての返事を出すことは「自筆によるもの」に限り認められています。また、「喪中につき年賀のあいさつを失礼します」という欠礼のハガキも、年賀状に類するあいさつ状に該当するため、「選挙区内にある者」に出すことができません。

禁止されているもの、禁止されていないものの例は以下の図の通りです。なお、政治家の家族が出すあいさつ状についての制限はありません。

図3:出典「フルカラー図解 地方選挙 必勝の手引」p.64

このように、一般的な慣習まで厳しく制限されるという事に理不尽さを感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかしこうした制限がないと、例えば資金力のある政治家が選挙区内の全ての家に、無差別に年賀状を送る可能性もあるのです。

年賀の挨拶方法

政治家となり年賀状が出せなくなると、地元の支援者からは「なぜ今年はあの人から年賀状が来ないのか?」と思われてしまいます。そのため、政治家としての様々な制限について、有権者に理解していただく活動も時には必要です。

例えば、WEBサイトやSNSなどで年賀の挨拶文を投稿することは、その内容が選挙運動に当たらない範囲内であればできます。また、年賀の挨拶文を電子メールで有権者に送ることも可能です。これらの挨拶文に年賀状を出せない事情(公職選挙法の規定により…)を丁寧に添えるという方法もあります。

また、現職の方は市政報告を、立候補予定者の方は政治活動用ビラなどを発行し、そこに年賀の挨拶を短く添え、政策提言や活動報告を掲載する例もあります。ただし、公職選挙法で禁止されている「あいさつ状」に当たらないよう、掲載内容には細心の注意が必要です。

新人の立候補予定者の方は、政治活動用ビラの作成方法が分からないという方もいらっしゃると思いますが、詳細は「フルカラー図解『地方選挙 必勝の手引』」にて解説しております。より深く知りたい方はぜひご一読下さい。

年末年始の街頭活動

大晦日や正月三が日は神社やお寺に参拝客が集まるため、その周囲で街頭活動をする光景がよく見られます。

マイクで演説するよりも政治活動用ビラの配布をするなどして、参拝の邪魔にならないよう工夫が必要です。参拝場所の最寄り駅にも人が集まりますので、こちらでの駅立ちも有効です。

駅立ちの方法については前回のコラムにて詳しく説明していますので、こちらも合わせてご覧ください。

地方選挙の必勝講座 目次

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松田馨

松田馨

選挙プランナー。株式会社ダイアログ代表取締役。1980年生まれ。2006年以降、地方選挙から国政選挙まで200を超える選挙に携わる。新聞や週刊誌上において国政選挙(衆議院・参議院)の当落予想を担当するなど、選挙区分析には定評がある。ネット選挙運動の解禁や投票率向上の活動にも長年取り組んできた。著書に『残念な政治家を選ばない技術 「選挙リテラシー」入門』(光文社新書)「地方選挙 必勝の手引」(選挙の友出版)

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